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2005年11月13日 (日)

箱根の福住楼

温泉に話を戻しましょう。30年くらい前のことでしょうか、塔之澤の福住楼に泊まったことがあります。結婚を祝ってくださった方のご招待で箱根に出かけました。当時の私には、箱根と言えば、日帰りで出かけるか、あるいは安い保養所に宿泊するのが精々でした。

箱根湯本から程なく、いつもは通り過ぎる塔之澤の千歳橋のたもとにその温泉旅館がありました。若かった私は、落ち着いた佇まいと威厳のある玄関に、足を踏み入れることに戸惑いを覚えました。場違いな感じがしたのです。後で知ったことですが、明治時代の創業で建物は国の文化財だそうです。

薄暗く長い廊下の先、通された二階の部屋は早川に面し、渓流の水音が聞こえます。障子を開けると清らかな流れが眼下に広がりました。手持ち無沙汰になった私達は、とりあえず風呂に入ることにしました。板張りの床に埋め込まれた円形をした木製の「大丸風呂」が印象的です。浴槽から望む木立の緑が鮮やか。そして迫力のある岩風呂にも福住楼の伝統を感じました。正直に言えば、宿全体の古さが印象に残りました。

この福住楼は、夏目漱石、幸田露伴、島崎藤村、吉川栄治、川端康成、などの著名な文人達に愛されたそうです。最近のテレビ番組でそのことを知りました。そして、この宿に招待してくれた方の想いを、30年経った今になって、ようやく理解できた気がします。

箱根へドライブする途中、当時のままの福住楼に通りかかるたび、宿泊したあの日のことを今も思い出します。そして、いつかは心静かに福住楼の逗留を楽しむ日が来ることを願っています。

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