自動車が変わる
昨年度の国内自動車販売台数が大幅に減少したことが報道されました。台数は20年以上前の水準に戻ったのだそうです。主な原因は人気が高い軽自動車へのシフトですが、使用年数が長くなり買い替え需要が減少したことも要因になったと報告されています。つまり三種の神器としてのステータスや嗜好品の対象から自動車が外れつつあるようです。
私の愛車は走行距離が10万kmに近づいていますが、エンジンと足回りをオーバーホールしたことで新車並の軽快さで走ってくれますから、買い換えるのはまだずっと先のことになると思います。それでもドライブが好きな私は自動車の動向について関心があります。大学の自動車部で運転技能とともに車体整備についても勉強して以来、若干の拘りを持っているのです。
そこで自動車を取り巻く環境を技術面から調べてみました。いろいろ面白いことが見つかりましたので紹介します。
1.燃料の多様化
ガソリンと軽油(ジーゼル燃料)に加えて、水素とバイオ燃料が注目を浴びています。これは地球温暖化と石油価格の高騰が背景にあります。自動車メーカーの主な開発事例を列記しましょう。
◇ターボ機能付きジーゼルエンジン: フォルクスワーゲン(VW)
◇水素燃料に対応する既存エンジン: マツダ(ロータリー)、BMW
◇おなじみのハイブリッド車: トヨタ、本田
◇バイオエタノール車: VW、フィアット、GM、フォード、ルノー他
◇燃料電池車: GM(Hy-wire)、トヨタ(FCHV)、ホンダ(FCX)
燃費が良くCO2排出量がガソリン車より20-30%少ないジーゼル車の人気が高い欧州(燃料の軽油が安いこともあり新車ではシェア50%以上)とハイブリッド車で先行する日本の違いが際立ってきました。ジーゼル車のNOx排出量もBLUETEC技術などでガソリン車と同程度にまで改善されており、ジーゼル車の排ガスが汚いとの考えは過去のものになりました。
アメリカでは国策的な意図もあって、バイオ燃料(エタノール)への注目が集まっています。国際石油戦略とともにブラジルと並ぶエタノール生産国であることが背景です。あの有名な米インディー・カーレースも今季から燃料をメタノールからエタノールに変更しました。
日本の自動車メーカーは出遅れたこれら二つの市場(環境対応のジーゼル車とエタノール車)での競争力を高める対応策を推進しています。すなわち、欧州市場向けにはジーゼル車、ブラジル市場ではエタノールとガソリンの混合燃料に対応するフレックス車を投入することでシェアアップを狙う戦略です。
国内でもエタノールを数パーセント混合した「バイオガソリン」が4月下旬から試験販売され始めました。2週間前に訪れた有馬温泉では天婦羅廃油を利用するバイオジーゼル車が運行されていました。ブラジル、カナダ、欧州で注目されている植物油燃料(バイオエタノールとは異なる)の一種と言えるでしょう。
水素を燃料とする燃料電池は究極のエコカーと呼ばれますが、車両コストと水素供給インフラの課題があり、一部の用途を除くと普及にはまだ時間が必要のようです。最近、ハイブリッド車に商用電源で充電する機能を付加したプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)がCO2をさらに削減する技術として注目されています。
2.制御機能の高度化
自動車は機械技術の塊ですが、実は多くのコンピューターを搭載したハイテク電子製品でもあります。エンジン、変速機などのパワートレイン、ブレーキ/スリップ防止、パワー・ウインドゥ/ミラー、エアバッグやシートベルトなどの安全機能を制御するECU(電子制御装置)が多数搭載されています。これらを効率的に統合するため、パソコンと同様に、OS(基本ソフト)が開発されています。
もうひとつの新しい技術開発はバイ・ワイヤ化です。上記したさまざまな機能を高度化し、相互に連携させるため、運転操作を電子化する技術です。軽量化が重要な航空機ではすでに採用されています。従来は油圧や機械構造で操作している、アクセル、ブレーキ、ハンドルなどの操作情報を一旦電気信号に変換して必要な制御のもとでエンジンや車輪に伝える技術です。将来は飛行機と同様に光ファイバが使われると考えられます。
3.情報・娯楽機能
その他には情報・娯楽機能の高度化と連携があります。ラジオ、ステレオ/MPプレーヤー、テレビ、カーナビ、携帯電話などをまとめて操作することができる機能です。コンソール型のディスプレイに車両の状態や入手した地域情報を表示するとともに、運転中は情報・娯楽機能を音声入力(認識)で制御することができます。例えば、ハンズフリーの携帯電話に着信があれば、ラジオやステレオの音量を自動的に絞ることもできます。音楽を楽しみ、地域情報を入手しながら、運転に集中するための安全装備で、人が自動車と会話しながら運転することが可能になりつつあると言えます。
自動車が好きな方は覚えていらっしゃるかも知れませんが、1980年代に放送されたアメリカの連続テレビドラマ「ナイトライダー」に登場したスーパーコンピュータを内蔵する「ナイト2000」に現実の自動車が一歩近づくことになりそうです。写真はKnight Riderのhpから引用しました。
雑記:「ETCは便利」
カーナビやETCなど自動車用ハイテク製品を使っていなかった私ですが、つい最近になってETCを車に取り付けました。料金所で待たされることはさほど気にしませんが、ETCの割引料金に少し心を動かされ、そしてETC専用のインターチェンジ(スマートインターチェンジ)が観光地の周辺に設置されはじめたことで踏切りがついたのです。
便利さについての詳しい説明は不要だと思います。最近のデータによれば、高速道路利用者の約66%、首都高速利用者では約75%がETCを使っているのだそうです。これからはETC専用ゲートに渋滞が発生することになるかも知れません。
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