紀尾井町の庭園
東京メトロ永田町駅を降りると、弁慶堀越しにグランドプリンスホテル赤坂(旧名称赤坂プリンスホテル)の新館が聳(そび)えていました。紀州徳川家の上屋敷跡に建築家丹下健三氏の設計で1983年に建てられた40階の建物です。弁慶堀に架る弁慶橋を渡ると紀州屋敷跡の石碑と案内板がありました。同じ敷地内にある旧館は、日韓併合で宮家となった旧李王家の邸宅であったものが戦後になって売却され、西武グループが1955年に赤坂プリンスホテルとして開業した建物です。
紀尾井町通りの反対側はホテルニューオータニです。東京オリンピックを控えて外国人客の受け入れ施設を作る必要があった政府からの依頼で当時大谷重工業社長の大谷米太郎氏が紀尾井町の伏見宮邸跡地に建設したホテルです。ホテル開業直後に経営不振に陥った大谷重工業は1977年に大阪製鋼と合併して合同製鐵となり、現在は新日本製鐵の関連会社となっています。故大谷米太郎氏は波乱万丈の人生を送った人です。本業の製鉄会社を手放すことにはなりましたが、日本を代表する高級ホテルとして直営ホテルと多数のグループホテルを国内外に有する企業として今も健在です。
伏見宮邸は、もとは加藤清正の下屋敷で後に彦根藩井伊家の中屋敷であった場所に、明治初期に建てられましたが、その庭園がホテルの庭として保存されています。傾斜地を巧みに利用した日本庭園を休憩時間に散策しました。同様に傾斜地を活かした殿ヶ谷戸庭園(国分寺市)や小石川後楽園(水戸家上屋敷跡)よりも起伏があります。
鴨や鯉を見ながら池を巡りました。朱に塗られた太鼓橋を渡ると茶屋風レストランの石心亭です。散策路は急な下り坂になりました。先はオフィスビルのガーデンコートへと続きますが、左手に折れるとこの庭のシンボルである大きな滝へと至ります。
滝越しに見える本館の最上階にある回転ラウンジがこのホテルのシンボルで、映画「人間の証明」の舞台になったことでも知られます。開業の10年後には40階建の別館ホテルニューオータニ・ガーデンタワー が開業し、さらに1991年には賃貸オフィスなどが入る30階建のホテルニューオータニ・ガーデンコートもオープンしました。同時に浮世絵のコレクションを展示するニューオータニ美術館がこのビルの6階に開館しました。
庭に咲く花々です。
紀尾井坂を挟んだ上智大学四谷キャンパスは尾張名古屋藩尾張徳川家の中屋敷の跡地で、東京の地名の記事で書いたように紀尾井町の地名の由来となりました。
<追記> グランドプリンスホテル赤坂旧館(2008年11月18日)
11月上旬、このホテルの新館を訪れる機会がありました。弁慶橋の袂に機動隊が出動していて物々しい雰囲気です。
所用のあとに別館の長い廊下を通って旧館に向かいました。諏訪坂を挟んで麹町中学校がある閑静な場所です。現在は結婚式場と仏料理レストラン「トリアノン」になっています。秋の叙勲が発表された直後で特別展示会が別館で開催されていました。勲章の伝達式もこのホテルで行われるようです。
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