奥の細道擬紀行(その9) 尾花沢と銀山温泉から岩木山へ
翌朝は、小雨が降る中を、前日には見つけられなかった念仏寺跡(城山公園)に辿りつきました。城山公園の名が観光地図に記載されておらず、翁塚の別称であることを天童公園の案内板で知りました。翁塚に「古池や蛙飛びこむ水の音」「行末は誰が肌ふれむ紅の花」の句碑があり、隣には県指定有形文化財の旧東村山郡役所があります。
天童公園(別称舞鶴公園)に上って有名な人間将棋会場と天童古城跡を散策しました。秀吉が伏見城で関白秀次を相手に小姓と腰元を将棋駒に見立てて野試合を楽しんだという故事に倣ったものであると説明されていました。
県道22号(山形天童線)、120号(東根尾花沢線)、36号(新庄次年子村上線)を北上しました。東根松並木跡に立ち寄ったあと、村上市の隼橋(左下の写真)と大石田町の大橋(右下の写真)で最上川を渡りました。大橋では右岸に塀蔵が再現されていました。大部分はブロック塀に絵を書いたものですが珍しい風景です。尾花沢市に入りました。
芭蕉は奥の細道で尾花沢と山寺の間(約30km)を往復しています。一関から平泉へ北上した時と同様にわざわざ訪れたのはよほど思い入れがあったのでしょう。尾花沢で芭蕉が7泊したと伝えられる養泉寺に立ち寄りました。その境内には芭蕉が詠んだ「涼しさを我やどにしてねまる也」と発句した「すゞしさを」歌仙の連句碑と涼し塚がありました。
芭蕉はさらに北上して新庄市本合海(もとあいかい)から清川まで最上川を舟で下っています。「五月雨を集めて早し最上川」の句は有名です。その500年前に都落ちをする義経も最上川を遡ったそうで、芭蕉が一旦上陸した仙人堂に義経も立ち寄った可能性があると伝えられています。歴史のロマンを感じさせます。
仙人堂を訪れたい気持を押さえて、奥の細道のルートを逆に辿る計画通りに、県道28号(尾花沢最上線)で北東の最上町へ向かうことにします。走り始めてからふと銀山温泉の名を思いつくと抗しがたく東南に進路を変えました。301号(鶴子尾花沢線)と29号(尾花沢関山線)、さらに188号(銀山温泉線)を終点まで走った山奥の温泉地です。川沿いに温泉旅館が立ち並んでいます。右手奥にあるのが老舗の能登屋旅館です。
さらに川を遡って歩くと銀山跡(白銀公園)ですが、気紛れで訪れた場所ですから、坑道の一部(疎水抗)を覘(のぞい)いただけで引き返しました。
温泉街の手前に戻って日帰り温泉「しろがね湯」(入浴料500円)で入浴することにしました。崖際に建てられた狭小な建物で中がどうなっているかに興味がありました。この日は男湯が2階です。小さな脱衣場の先にほぼ三角形をした浴場の尖った部分に浴槽があります。泉質は含硫黄‐ナトリウム‐塩化物・硫酸塩温泉、源泉の泉温は61.4度です。掛け流しですが源泉が高温のため加水している旨が説明されていました。午前中ですから他に入浴客がなくて快適でした。
県道188号、29号、国道347号を経由して県道28号に入って最上町へ向かいました。山刀伐(なたぎり)峠近く、旧道との分岐点にある駐車場に奥の細道の大きな標柱が立っています。その脇に奥の細道遊歩道の入り口がありました。山刀伐峠の名の由来は急峻な地形によるようです。
最上町の赤倉温泉から国道47号で中山峠越えをすれば宮城県です。小深沢でも奥の細道遊歩道の入口を見つけました。尿前(しとまえ)関跡入口を過ぎると2年前に仙台周辺を旅行した時に訪れた大崎市鳴子地区(当時は鳴子町)です。尿前とは変わった名前ですが義経伝説とともに山裾を意味するアイヌ語とする説があります。このまま国道47号(羽後街道)を走るのも詰まりませんから脇道にそれました。並行するように「奥の細道ゆけむりライン」(JR陸羽東線の愛称)が走っています。
川渡温泉駅近くで国道47号に戻ったところにあるドライブインで昼食です。名物の「ぶっかけうどん」を注文しました。伊奈庭うどんのように細いうどんにタレをかけると冷やし中華の感触があって私好みでした。
「あ・ら・伊達の道の駅」を過ぎると同市岩出山地区です。その北はつい最近の地震で甚大な被害が出た栗原市と栗駒岳があります。大崎市は平成18年に鳴子町、岩出山町、古川市などが合併して誕生した新しい市です。町の中央を江合川(えあいがわ)が流れて昔から米と馬の産地だったそうです。「ささにしき」の産地としても知られます。
県道226号に入って江合川を渡ると岩出山(いわでやま)の町並みです。(続く)
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