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2008年10月 9日 (木)

バホフォンドのサウンドに酔う

同居者に誘われて105日の日曜日に東京ミッドダウンへ出かけました。大江戸線六本木駅を降りてエスカレータを何度も乗り換えたガーデンテラス4階にある「ビルボードライブ東京」(Billboard Live Tokyo)が目的地です。

   

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同じガーデンテラスにあるサントリー美術館ではピカソ展が開催されていました。

 

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ビルボードライブ東京のフロアは三層構造で、3階・4階に位置するテーブル席とソファ席、5階にはカジュアルな椅子席がある立体的な構造ですが、約300と少な目の席のいずれからもステージが楽しめます。開演前はステージ後方のカーテンが開けられておりガラス越しに夕景を見ることもできました。

   

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いよいよ開演です。ステージに登場したグループはアルゼンチン・タンゴの「バホフォンド」(BAJOFONDO)、bajo(低い)とfondo(底)を組み合わせた名称はアングラをイメージさせますが、2002年のデビュー作でラテングラミーを受賞したグループです。さらに全世界でトリプル・プラチナ・アルバムを達成したそうです。やや年配のリーダーと7人の若い男女で構成されています。リーダーのグスターボ・サンタオラヤ氏は2005年と2006年にアカデミー賞作曲賞を2年連続で受賞したラテン音楽界の巨匠です。ちなみに2006年の受賞は日本でも注目された映画「バベル」の音楽によるものです。

2008_10050014_2 アルゼンチン・タンゴには必須楽器のバンドネオンと時代を感じさせるラッパ付きのコルネットバイオリン、キーボード、電気バイオリン、電気およびエレキギター、ドラムス、ベース(コントラバス)、それぞれがリード役となる演奏は背後のスクリーンに映し出される古い映像と絶妙に融合してアンダーグラウンドの世界へと誘いました。他にDJ用ターンテーブル(レコードプレーヤー)も登場しました。歯切れの良いリズムが延々と続きます。これまでに聴いたアルゼンチン・タンゴの枠を超えるハウスやエレクトロなどの電子音楽を融合した新しいサウンドでした。

この日は日本のタンゴ界をリードするバンドネオン奏者の小松亮太(りょうた)氏がバホフォンドと競演し、両者の卓越したテクニックがタンゴ音楽にさらなる輝きを与えました。バンドネオンはソロ楽器ですが小編成楽団のアンサンブルのような音の厚みと、物悲しい音色とともに、独特な音の世界が広がります。しかし小松亮太氏の演奏は1曲のみ、しかもバホフォンドの大音量に飲み込まれそうで、ちょっと期待外れの内容です。103日と4日の2日間に小松亮太氏がギターデュオのGONTITIや歌手の大貫妙子さんと競演したステージの方が良かったかもしれないと思ってしまいました。

コルネットバイオリン、バンドネオン、電気バイオリンがソロをとった数曲を別にすれば、1時間半の公演中はタンゴのリズムを強烈なロックサウンドで延々と刻むうちに全身が音の衝撃で揺さぶられていました。演奏が終了した時は酔いが体中に回ってきたのは開演前の軽い食事に合わせて飲んだワインのせいだけではなさそうです。パンチドランカーのボクサーになったようです。

なおバホフォンドの演奏はYouTubeでも聴くことができます。品川プリンス「ステラボール」での公演PV(宣伝用ビデオ)のVol.1Vol.2です。クリックするとYouTubeにリンクします。

<同行者のコメント> 期待通りの楽しさです。大きな音に驚きましたが旦那さまが説明してくれたコルネットバイオリンの不思議な形と音が印象的でした。最後は若い女性のお客がたくさんステージに上がって踊ったのにもびっくりしました。旦那さまは音楽を聴きながらしきりにメモをとっています。何を書いているのでしょうか。

 

 
   

付記: ステージの実況中継

演奏中は写真撮影が禁止されたためバホフォンドの演奏風景を実況中継するつもりでメモをとりました。コンサート会場でメモをとるなどは無粋でしたが興味のある方はお読みください。

2008_10050019 暗いステージでスポットライトを浴びたコルネットバイオリンの独奏で開演です。響胴のないバイオリンにラッパ状の拡声器が付いた楽器は古い蓄音機でSPレコードを聴くような掠(かす)れた音に趣があります。弦の振動をラッパに伝える仕組みが蓄音機と同じだからでしょう。開演前にフラッシュなしでズームアップして撮影したため手振れ写真になってしまいました。綺麗な写真はこちらをご覧下さい。ちなみに先に紹介したすぎもとまさと氏の歌「吾亦紅」でもこのコルネットバイオリンが伴奏に使われていますからその記事のキーワードをクリックするだけで音色を聴くことができます。

次いで電子音が低く響き始め、色とりどりの照明がリズムに合わせて点滅し始めました。照明が明るくなってステージにメンバー8名の登場です。電気バイオリン、バンドネオン、エレキギターが2丁、キーボード、ベース、ドラムス、電子楽器で編成されて、伝統的なタンゴ楽団の編成(オルケスタ・ティピカ)とは少し異なります。激しいリズムはタンゴと言うよりもロックそのものです。電子楽器奏者が制御用でしょうかMacPCを使っているのが見えます。バンドネオンにも両側にマイクが付けられているようです。

3曲目は電気バイオリンが主役です。ハードなリズムに合わせて照明が様々な色で点滅し、背後のスクリーンにはモノクロの古い映像が映し出されました。曲が終わる頃にはシンボルの網タイツの足がフラッシュのように写りました。

2008_10050016 次の曲ではバンドネオンが前面に出てタンゴの雰囲気が少しだけ加わりました。ステージが薄暗くなるとスクリーン上に五線譜と夜景が不思議な組み合わせで映し出されます。そしてリーダー(グスターボ・サンタオラヤ氏)が短尺のエレキギターを弾きながらステージを走り回り、相変わらずの強烈なリズムが続いて曲が終りました。

リーダーのシャウトで始まった曲は、スクリーンがセピア色からフルカラーに変わるとともに、タンゴのトーンが強くなりましたがリズムは相変わらず強烈です。電気バイオリンの物悲しい音色が一際目立ちます。電子楽器がボンゴやコンガのような打楽器のリズムを刻み、電気バイオリンとバンドネオンの掛け合いが始まりました。バンドネオンが大きく左右に広がるアクロバチックな演奏でエンディングです。

キーボードとバンドネオンがタンゴのメロディを奏で始めました。スクリーンはアニメ風の映像に変わりました。そのスクリーンにトラックとラウドスピーカ(拡声器)が写さしだされたかと思うと曲調がまた変わりました。重奏低音と電子音がミックスしてテクノ・ミュージック調になると、バンドネオンが演奏を始め、さらに電気バイオリンがそれに続き、何か不穏な雰囲気が音楽に漂います。一転してタンゴの伝統的なサウンドに変化したかと思うと電子音に戻って曲が終わりました。

次いでスローなテンポで始まった曲は正にタンゴです。バイオリンの音色が悲鳴を上げ、続くバンドネオンは憂いを含んだメロディを奏で、キーボード奏者がラップを歌い始めました。リーダーもボーカルとして掛け合います。それまで後方に控えていた9人目が踊りながらステージに登場して歌に参加しました。リーダーが絶叫する歌声のあと低音の唸(うな)り声に移行して曲が終わりました。

ここでショートブレイクが入りました。リーダーが英語で挨拶します。「今夜はこの会場に出演できて嬉しい、今回が始めての来日である、来場を感謝する」と型通りの挨拶を顔から汗を流しながら話します。

演奏が再開されました。バンドネオンのソロは微妙なリズムの連続から、ハーモニーが加わり、低音伴奏で音の厚みが増すプロセスを巧みなテクニックで披露する。まさに小さなオーケストラであるバンドネオンの魅力を短い演奏で表現しました。

2008_10050015 2丁のエレキギター、電気バイオリン、バンドネオン、ベースの編成に、リーダーがマンドリンに似た楽器(クワトロか?)を使い繊細な音色の演奏を行うと、バンドネオンが静かに音を奏でる伴奏役に回り、先ほどまでとは打って変わりアコースティックなサウンドが拡がります。

フルメンバーに戻りました。2人のギタリストが主役となり、さらにエレキギターが2人、ベース、ドラムス、そして新たにターンテープルが加わりました。ターンテーブルの生演奏を見るのは始めてです。リーダーが控えめにエレキギターを伴奏、スクリーンには漂う煙と椅子に座る男性の姿が映しだされました。

再び強烈なリズムに戻り、照明も一層カラフルに変わりました。スクリーンには逆マンジを付けた機関車と網タイツの足、ダンス会場の風景が何の脈絡もなく続きます。そしてタイムマシンのようなカラフルなトンネルも現れました。

エレキギターとキーボードがリードして次の曲が始まりました。リーダーが歌い、スクリーンに紅葉が映し出されるなか、強烈なリズムがさらに続きます。

1時間10分を過ぎた頃にリーダーが小松亮太氏を紹介しました。思ったよりも小柄な人物が演奏に加わりました。重奏低音が一層強烈になるなか、バンドネオンの二重奏が電気バイオリンとともに曲をリードします。しかし僅か1曲で小松亮太氏は退場してしまいました。

牛の集荷場、網タイツの足、古いダンス風景がスクリーンに次々と流れます。アコーディオンとバンドネオンが響きます。サイケ調の映像が続き、強烈なリズムと電気バイオリンの音、リーダーの歌声がミックスしてステージは最高潮に達しました。客席の観客も立ち上がり手拍子とリズムに合わせて軽くステップしたり、まるでロックコンサート会場のようです。

ハイになった観客が次々とステージに上がりました。バブル時代のディスコやクラブのお立ち台を彷彿(ほうふつ)させます。一段とボリュームがアップして全身に大音響が響きます。そして1時間半に亘(わた)るバホフォンドの演奏が終わりました。アンコールの長い声援にはメンバー全員が再登場しましたがリーダーが短い挨拶で応えただけだったことは残念です。異次元の世界から空蝉(うつせみ)に戻りました。

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