富士山登山: ここはネフド砂漠!?
河口湖口(富士吉田口)下山道に入る時に山中湖がくっきりと望めました。
八合目までは須走口登下山道とほぼ共用されていますから登山者と擦れ違うこともあります。「決して走らない」と呟(つぶや)きながら下山道をゆっくり歩きます。
八合目の須走口江戸屋で小休止したあと、河口湖口下山道(河口湖五合目と富士スバルライン五合目の表記が混在して紛らわしい)に入りました。大きな砂利が混じったざら場では登山時に聞いた「逆ハの字」を下りでも試してみました。これが大きな失敗で親指が痛くなってきました。下山道では膝(ひざ)を持ち上げないで振り子のように足を前に振り出して踵(かかと)から下ろす歩き方に徹するべきでした。
下山道の山側の石が少ない場所を選んで歩きますが、いつもの癖(くせ)が出て、つい膝を持ち上げる歩き方になってしまいます。九合目から頂上までの岩場で無理をしたのが徐々に響いてきたようで足が重くなってきました。多めに休憩回数を取りながら短時間休憩を心掛けて気が遠くなるほど長い葛折(つづらおり)を無事に通過しました。
六合目に向う落石対策シェルター内の大きな階段が脚に堪えて長めの休憩を取ることになってしまいました。3時間前に頂上で震えていたのが嘘のように強い日差しが暑くて思ったよりも水を多く消費したため底をついてしまいました。八合目を過ぎた辺りから自動販売機や売店を探しながら歩いたのですが何処にもありません。八合目の須走口山小屋江戸屋で購入すべきでした。
飲み水がなくなると急に気力が萎(な)えそうになります。期待した六合目にも売店はありません。あとは着実な足取りでゴールの五合目を目指すだけと心に決めました。残り1.2kmほどの吉田口へ向う道との分岐点辺りで湧き水「泉ヶ滝」に目が行きましたが「飲み水」の表示はありませんから空のペットボトルに水を注ぐことは断念しました。
昨年と同様、前方に馬車が待っていました。別の登山グループを引率するガイドさんが馬車に向って「何名か乗りたい人がいるよ」と叫んでいます。「ここにも一人居るんだけれど・・・」と心の中で呟きました。昨年は膝を痛めても何とか歩き切りましたから今回も妥協はできませんが、本当は1分でも1秒でも早く水が飲みたかったのです。喉だけではなく口の中全体がカラカラになったようです。何故か映画「アラビアのローレンス」のシーンが頭に浮かびました。井戸の水を盗み飲んだベドウィンの男を別のベドウィンの族長(オマー・シャリフ)が射殺したシーンと夜の行軍で迷子になったベドウィンの若者をローレンス(ピーター・オトゥール)が灼熱の砂漠に戻って連れ帰ったシーンです。
そんな衝撃的・感動的なシーンを思い浮かべながら昨年と同様になだらかな上り坂を黙々と歩いて、4時間半を少し越えましたが、無事にゴールインできました。8合目までを駆け下りた昨年はリタイヤー寸前になりながら4時間で下り切ったことに比べれば30分余りも遅いのですがまずまずの結果です。やはり兎は亀に負けないのです。(エコ登山を無視した苦しい理屈ですが・・)
下山途中に気が付いた反省点は、9合目から頂上までの岩場を急ぎすぎて足に疲労が溜まったことと、下り坂を歩く歩幅を小さくすることだけに気を奪われて膝に負担の大きい(悪い)歩き方をしたことの2点でした。そして変な歩き方を試して親指を痛めた(血豆を作る原因になった)ことも五合目の休憩所で見つけました。これは言い訳ですが、今回は5本指が分かれた薄手のソックスを同居者が準備してくれたことが事態を悪くしたようです。へ理屈は兎も角、まず平地での歩き方を改善することから取り組みたいと思います。そして今回は人が酸素と水で生きていることを実感した富士登山でした。
3時間ほどたっぷりと休憩を取ったあと軽く昼食を摂って12時40分にグループの集合にトップでサインアップしました。脱落者は無かったようです。次はお楽しみの日帰り温泉です。昨年と同じコースに変更しましたから温泉も同じではないかと心配しているとバスは河口湖大橋に向っています。このまま進むと御坂トンネルを経て甲府だが・・・と思っていると河口湖大橋を渡ったところを左折しました。到着したのは河口湖北岸に近い日帰り温泉「野天風呂天水」でした。
門構えはなかなか立派です。渇きからは回復していますから、あとは汗にまみれた身体をさっぱりさせることです。
脱衣所の先にある内湯は思ったよりも小振りです。それにカランの数が10個足らずと少なくグループの半数は待たされる始末です。真っ先に浴室へ飛び込んだ私は大浴場と寝湯を楽しんだあとに露天エリアに移りました。こちらは岩風呂(2つに仕切られて片方が泡風呂)、歩行浴風呂、うたせ湯の3つです。いずれも湯の温度が温めで長湯には向いています。一番奥にあるサウナも小振りですが疲れた身体にはちょっと暑すぎました。泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性、アルカリ性、高温泉)、泉温は45.2度でした。
〆として休憩所の座敷で生ビールを飲むことにしました。キンキンに冷えたジョッキーに注がれたビールが胃の中に入ってゆくのが分かります。もう一杯と言いたいところですが帰路はトイレ休憩がないそうですからお代わりを断念すると途端に汗が噴出しました。気が付くと休憩所には冷房がなく、開けられた窓から入る風もなく、かなりの暑さ。ここもエコでした。河口湖ICから入った中央自動車道は小仏トンネルを先頭に約11kmの渋滞が発生していました。この日からお盆の高速料金割引き(1000円均一)が始まったからでしょう。この渋滞にも係わらず5時半過ぎには西新宿に帰着できました。
<同居者のコメント> 本当にお疲れさまでした。今年も足を痛めたようですからもう富士山はコリゴリでしょう。来年もなんて言わないでくださいね。
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