沖 仁 スプリング・ツアー2011 ~Con Palmas~
お彼岸に一日遅れで両親の墓参りができました。今朝になってやっと車に給油を受けることができたからです。わずか20リットルですがこれで一息。そして底をつきかけていた米や食料品も関西や近くに住む身内から提供してもらったことで、わが家の巣ごもり生活も何とか正常に戻りつつあります。
そんな日々の中、昨夜は東日本大震災が発生して以来はじめて都心へ出かけました。節電のためすべてのエスカレータが止まり、切符券売機も一部が休止している東京メトロの表参道駅を出て人通りがほとんどない南青山のブランドショップ街を歩きました。いずれの店も閉店していて薄暗く、小雨が降るフロムファースト通り(みゆき通り、都道413号)は走る車も数えるほどです。
同行者はブランドショップが閉店していることを残念がっているようです。根津美術館のある交差点を右折して青山6丁目へ向かいます。実はチビスケくんとチビエちゃんの両親がブルーノート東京のチケットをプレゼントしてくれたのです。巣ごもり生活をする同居者と私を元気づけるための心遣いのようです。
ブルーノート東京はニューヨーク.の“Blue Note”を本店に持つジャズ・クラブです。他に大阪と名古屋にも店があります。ちなみにブルーノートあるいはブルー・ノート・スケールとはアメリカ黒人音楽の旋律にあらわれる音階的な特徴を指す言葉で、このジャズ・クラブの名前として使われました。
春分の日(彼岸の中日)の出演者はフラメンコ・ギタリストの沖 仁(おき じん)さん。昨年の7月にスペインのムルシアで行なわれた三大ギターコンクールのひとつである「第5回ムルシア “ニーニョ・リカルド” フラメンコギター国際コンクール」の国際部門で優勝。日本人として初の快挙です。
スプリング・ツアー2011の最終公演がこのブルーノート東京でした。”Con Palmas”とはフラメンコ特有の手拍子「パルマ」付きであることを意味します。つまりスプリング・ツアー2011で一緒に活動する歌(カンテ)の高岸 弘樹さんと踊(バイレ)の伊集院 史朗さんと共演することを指します。
午後8時に2ndショーが開場したホールは見るみる間に満席になります。サーブされたコース料理とワインを楽しみました。写真はキャビアをトッピングした魚介のパテ。メイン料理の和牛ステーキがサーブされた午後8時45分に開演となり、沖 仁さんがギターを抱えて登場。観客席に向かって来場を感謝、東日本大震災の被災者への想いを語ります。「楽しんで下さい」と観客に呼びかけて演奏を始めました。
高岸弘樹さんと伊集院史朗さんも登場して3名で最初の曲を演奏、ギターの爪弾き、歌声、そしてパルマで会場を徐々に盛り上げます。2曲目の「ボリビアの朝」はゆったりとした海を感じさせる曲です。「オーレ」の掛け声(ハレオ)に感謝、次いで「伊集院先生のパルマ教室」を開催する宣言すると、伊集院さんがパルマの打ち方を観客に指導。表打ち(ティエンポ)と裏打ち(コントラティエンポ)のそれぞれを実演しながら解説します。
3曲目はソロで新曲の「誇りと敬意」でした。パーカッションのホセ・コロンさんが飛び入りしたところで高岸弘樹さんが「昭和の歌謡ヒットメドレー」を物まねで歌いました。まず玉置浩二の「ワインレッドの心」、次いで森山良子の「さとうきび畑」、サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」、HOUND DOG 大友康平の「ff(フォルテシモ)」、吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」(一部が替え歌に)、そして同じく吉さんが歌うCMソング「Dream」の♪♪この街で一番 すてきで暮らしたい♪♪ も! すべての歌がフラメンコ風になっているだけではなく、コロッケさんの物まねよろしく、客席を笑わせました。
ここでアルゼンチンから帰国したばかりというギタリストの小林智詠(ちえい)さんがサイドギターとして参加。沖さんがスペインに居るときに作曲した「サンパブロ通りの天使達」は明るくリズミカルな曲で、ギター演奏をパルマとパーカッションが盛り上げます。次いで、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートにおける「ラデツキー行進曲」の手拍子風にパルマの実践編を指導、客席をぐいっと惹きつける演出があります。
ソロ演奏に移りました。「節電のため公演可否の考え方はあるが首都圏に居る人達が元気になればと思う」といって、一昨日横浜の赤レンガ倉庫にあるライブレストラン「モーション・ブルー・ヨコハマ」で開催した公演のことと、その夜に見た「スーパームーン」(月が地球に最接近した現象)をイメージした即興曲を演奏。透明感のある月光を連想させる静かな曲でした。「アルハンブラの思い出」風のトレモロが銀の砂が静かに落ちるように響きます。聴き入っていると、いつの間にか曲は「マイウェイ」に変わっていました。そしてまた即興曲に戻り、力強く激しいフラメンコ曲となりました。ギターの胴を叩く「ゴルペ奏法」と弦を叩く「タッピング奏法」を交えると会場全体が最高潮に達しました。
アンコールに応えて演奏した「べサメムーチョ」は官能的で魂に染み入るような音色です。高岸さんの歌が参加、桑田佳祐、和田アキ子、さだまさしの物まねをパルマとパーカッションが盛り上げます。小林さんのギターは硬く力強い響きで、沖さんの柔らかい音色と掛け合います。伊集院さんのタップダンスと高岸さんのファド風の歌が加わり、どこまでが即興なのか分からなくなります。明るい曲はパルマと掛け声で盛り上がり、高岸さんと伊集院さんが歌とダンスを入れ替えて会場の笑いを誘い、約1時間半のコンサートが終わりました。
沖仁さんのフラメンコギターは「素晴らしい」の一言です。伊集院史朗さんのダンスも同様で、ダンスが好きな同行者は熱心に見入っていました。私は高岸弘樹さんの魅力的な歌声に惹かれました。
曲名に私の聞き間違いがあるかも知れませんので、参考としてブルーノート東京のhpから引用した2ndショーのSET LIST(曲目表)を添付します。
1. EN LA CASA DEL MELCHOR
2. UNA MANANA EN BOLIVIA
3. RESPETO Y ORGULLO
4. THE HIT MEDLEY
5. C/SAN PABLO
6. ONCE
7. 即興
8. SOLEA
9. MARCHA DESPUES DE LA LLUVIA
沖仁さんの演奏をYouTubeで何曲か紹介します。お好きな曲名をクリックして下さい。
クラシック・メドレー 雨上がりのマーチ サンパブロ通りの天使達 べサメムーチョ Fantasma IV Buleria from RESPETO(今回のメンバー4人+α) メルチョ-ルの家
<同行者のコメント> 沖さんのコンサートはとても素敵でした。共演した伊集院さんのダンスもたっぷり楽しみながら、誰かに似ているなと思いました。そうそう、漫才コンビ「ピース」の又吉(またよし)直樹さんです。今日はお墓参りの帰り道に立ち寄った最初のスーパーで牛乳を、そして2軒目では卵を1パックだけ買えてホッとしました。
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