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2011年3月 1日 (火)

乙訓寺

長岡京の大内裏跡は西向日駅周辺の住宅地に囲まれていて、発掘された場所もまだほんの一部のようですから、平城京跡のようにその広さを実感することはできません。ちょっと物足りない気持ちで約1.4km南西の長岡京市今里三丁目にある乙訓寺(おとくにでら) も訪れることにしました。府道203号から府道67号と同205号を経て同209号(光明寺道)で小畑川を渡って長岡京市に入りました。

 

今里樋ノ尻(ひのじり)交差点にある道標には「左やなぎ谷(柳谷観音) 右 光明寺」と表示されています。光明寺道はここで右へ折れますがやなぎ谷(だに)と示される方向へ直進します。ちなみに柳谷観音とは眼病平癒(へいゆ)の御利益があるとされる長岡京市浄土谷の揚谷寺(ようこくじ)です。
 
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府道67号を南下、今里交差点を右折、約200m先で道標にしたがって右手の路地に入ります。
 
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路地の先に乙訓寺の表門がありました。
 
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乙訓寺は真言宗豊山派の寺で法皇寺とも呼ばれます。推古天皇の勅願により聖徳太子が約1380年前に創建したと伝えられた寺で、空海が別当を務めたことから真言宗となりました。光仁天皇の皇子(桓武天皇の弟)であった早良親王(さわらしんのう)の幽閉地として有名です。
 
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桓武天皇の側近であり長岡京造都の最高責任者であった藤原種継が暗殺される事件が起きました。逮捕者が春宮大夫(とうぐうだいぶ)であった大伴家持(おおとものやかもち)をはじめ皇太子関係者であったため、皇太子早良親王に嫌疑がかけられて乙訓寺に幽閉されました。早良親王は絶食して無実を訴えましたが、一切弁明が許されず、淡路に流される途中で衰弱死してしまいます。そして桓武天皇の周りでさまざまな不幸が続いたため、晩年に桓武は早良親王に崇道(すどう)天皇の名を贈りました。当ブログでは「藤原薬子」と「四国遍路香川県編(その3)」の記事で早良親王に触れています。

 

長い参道を歩くと住宅と学校に囲まれる境内が広がりました。牡丹の寺として知られます。行き当りに見える十三重の石塔近くに早良親王供養塔があったようですが迂闊(うかつ)にも気づきませんでした。「画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く」です。
 
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長岡京があった時代には大規模な伽藍(がらん)を擁(よう)する大寺であったそうですが現在の本堂(元大師堂)は織田信長に焼かれて江戸時代に再建されたようです。ちなみに本尊は八幡神と弘法大師を合体したと伝えられる合体大師像。
 
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本堂の前に乙訓寺の本堂・鎮守八幡社・鐘楼・表門・裏門が長岡市の指定文化財に指定されたことが説明されています。
 
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この寺を訪れた本当の目的は早良親王縁の寺としてではなく、継体(けいたい)天皇が乙訓郡に置いた弟国宮(おとくにのみや)がこの乙訓寺と北隣の小学校との境界周辺にあったと聞いたからです。ちなみに乙訓は弟国とも書かれ、葛野(かどの)郡が分郡した時に、葛野(京都市西部)の兄の国に対して、向日・長岡・大山崎の地域を弟の国といったのが語源だと言われます。継体天皇は河内国の樟葉宮(くずはのみや、大阪府枚方市樟葉の貴船神社付近)で即位し、5年後には筒城宮(つつきのみや、京田辺市同志社大キャンパス内)に、そのまた年後には乙訓に王宮を移したとされます。

 

乙訓寺の境内を奥に歩いて長岡第3小学校との境界近くまで行ってみました。
 
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この小学校の敷地ももとは乙訓寺の境内であったそうです。本堂の左手奥には何の説明もない石積みがあるだけで・・。
 
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辺(あた)りに弟国宮の遺構などは一切見当たらず、関連の石碑や案内板も見られなかったのは残念でした。(続く)

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