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2011年4月28日 (木)

松本清張の「球形の荒野」を読む(上)

夜来(やらい)の嵐が去って爽(さわ)やかな春の朝を迎えました。この有り難さをつくづく感じています。そして今日は大震災のために延期されていた新型iPadiPad2)が日本でも発売されるそうです。加えて東京ディズニーリゾートの全施設が今日から再オープン、東北新幹線も明日には全面復旧すると報じられて、徐々にですが元の生活が戻りつつあることを感じます。前置きはこれくらいにして、前半の記事が長くなった関西方面へのドライブ旅のインターミッション(中間の休憩時間)です。

2月に奈良京都へドライブ旅をして、そして最近玄昉(げんぼう)僧正を描いた時代小説「眩人」を読んだことから、同じ松本清張氏が50年前に「オール読物」に連載した長編ミステリー小説「球形の荒野」を読み返したくなりました。終戦後、10数年経った時代を背景に、登場人物たちが奈良と京都の古寺を巡るストーリーと見事な描写力を思い出したのです。ちなみに松本清張氏の作品を手当たり次第に乱読したのは40年近く前のことでした。当ブログでもそのことに触れています。

今回読んだのは昨年1月に文芸春秋文庫から発刊された改版本(上下2分冊)です。作家半藤一利(はんどうかずとし)氏がカバー表紙に書かれた簡潔な解説文を引用させていただきます。

2008_03110307 「芦村節子は旅で訪れた奈良・唐招提寺の芳名帳に、外交官だった叔父・野上顕一郎の筆跡を見た。大戦末期に某中立国で亡くなった野上は独特な筆跡の持ち主で、記された名前こそ違うものの、よもや・・・?という思いが節子の胸をよぎる。節子の身内は誰も取り合わないが、野上の娘の恋人・添田彰一は、ある疑念をいだくのだった。新聞記者・添田彰一は恋人・野上久美子の父の存在を確かめるため、ひそかに調査を始める。口を閉ざす当時の関係者、京都のホテルでの発泡騒ぎ・・・次々と起きる不可解な事件にはいったい何が隠されているのか? 停戦工作の裏事情と一外交官の肉親への絶ちがたい情愛が交錯する国際謀略ミステリーの傑作!」 

旧友と半世紀ぶりに再会するような気持ちで表紙をめくりました。それではあらすじを紹介しましょう。

2008_03110308 奈良の西ノ京で物語が始まる。芦村節子は夫亮一が京都へ出張する機会を利用して奈良の寺巡りをしているのだ。薬師寺から唐招提寺(とうしょうだいじ)へと巡る道は古寺巡りが好きだった元外交官の今は亡き叔父野上顕一郎の影響を受けて彼女が好きになった場所である。唐招提寺でふと目に留まった芳名帳(ほうめいちょう)に叔父と似た特徴のある筆跡で書かれた田中孝一の名前を発見する。

2008_03110118 このことが気になった節子は予定を変更、橿原(かしはら)駅を経由して自分の好きな橘寺(たちばなでら)と安居院(あんごいん、飛鳥寺の正式名称)を訪れる。そして安居院でも同じ筆跡で書かれた田中孝一の名を発見する。

帰京後、この話を聞いた従妹の野上久美子が恋人の新聞記者添田彰一(しょういち)に話すと添田はこれに興味を持つ。節子からも直接話を聞いた添田は一等書記官・野上顕一郎が駐在先の中立国で亡くなった時に一緒だった外務省の村尾芳生課長に当時の様子を尋ねるが、何故か素っ気ない対応が返ってくる。それに腹を立てた添田は当時の職員録からその公使館に駐在していた外交官を調べる。そして村尾課長以外では唯一存命していると見られる元公使館付武官伊東忠介(ただすけ)の存在を知る。

しかしその所在が不明のため行き詰まるが、同僚の助言で当時同国の特派員となっていた自社の先輩滝良精(りょうせい)に行き当たる。論説委員で新聞社を辞めたあとは世界文化交流連盟の常任理事となっている。面会を求めた後輩の添田に対して滝は素っ気なかった。添田には村尾課長と滝常任理事が申し合わせたように野上顕一郎の死に触れるのを嫌がっていると思えたことで、添田はさらに真相を追及する気になる。

2008_03110087 そんな折、世田谷区の人気のない草むらで絞殺死体が発見される。捜査により奈良県大和郡山市に住む雑貨商伊東忠介であることが判明。世田谷の現場や被害者が宿泊した品川駅前の旅館を訪ねて話を聞いたあと添田は奈良へ向かう。そして伊東の家族から彼が奈良の寺巡りの直後に人に会うためとだけ言い残して上京したことを知る。芳名帳の筆跡を確認したくなった添田は、節子から聞いた寺を訪れるが、いずれの寺でもそのページだけが切り取られていることに驚く。

そして久美子を絵のモデルにしたいとの申し出が野上家に舞い込む。一流画家の笹島恭三が知人である滝良精の口利きで伝えて来たのだ。乗り気な母親に押されて久美子はしぶしぶ引き受ける。懸念(けねん)とは裏腹(うらはら)に気さくな笹島にモデルの役目を楽しむ久美子だが、3日間と約束した最終日に笹島の死体が自宅で発見される。検視により睡眠薬の飲み過ぎによる自殺と断定された。

2010_05060187 数日経って紹介者の滝が旅先の長野・浅間温泉から笹島の死を気にしないようにとしたためた手紙を久美子宛てに送って寄越(よこ)す。久美子からこの話を聞いた添田は滝が勤め先に辞職願を郵送していたことを知って浅間温泉へ向かう。しかし前日旅館を訪れた客があったことで滝は宿を引き払っていた。駅や観光協会を調べて滝の行く先が蓼科(たてしな)の温泉と目星を付けた添田は蓼科の「滝の湯」で滝を見つけるが期待した収穫は得られない。(続く)

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