アナログ世界への回帰
吉祥寺と三鷹へ出掛けた以外は巣ごもり生活をしていたゴールデンウイーク中、同居者からの圧力に屈した形で、3年振りに自室の整理と棚卸(たなおろし)を行いました。先ず不用品の廃棄ですが、アメリカで購入したビデオデッキ(VCR)やビデオテープラックなど埃(ほこり)を被(かぶ)っていたモノを、事前に公的な粗大ゴミ回収に出しました。
そして迷いに迷った末(すえ)についに決断しました。アマチュア無線用短波帯SSBトランシーバ(送受信機)の処分です。ちょうど40年前に清水の舞台から飛び降りるような大決断で購入した高額商品(給料の数カ月分相当)であった初代FT-101(1970年に八重洲無線が発売)は知る人ぞ知る「往年の名機」です。アマチュア無線家(ハム)達が「ワンノーワン」と呼んだ、高周波出力増幅を除いてすべて半導体化(当時の呼称はソリッド・ステート)された最初の製品でした。
私は垂涎の的(すいえんのまと、欲しくてたまらないの意)であった米コリンズ社製の無線機と似た雰囲気(ふんいき)が好きでした。アメリカに住んでいた時にも現地で活躍してくれたことを今も思い出します。注釈;八重洲無線は合併によりバーテックススタンダード社に社名を変更(子会社に八重洲無線の名前を残す)
事前の廃棄作業はここまで順調に進みましたが、おにぎり(お結び)型の初代iMac G3(1999年製)などパソコン類は公的な家電回収の対象外でメーカーに廃棄を依頼しなければならないため(これは言い訳!)、今回は見送ることにしました。
初日は堆(うずたか)く積み上げられた紙ファイルなども大鉈(おおなた)を振って処分。不要になった本はもちろんBOOKOFFへ持ち込みました。そして室内のレイアウトも見直して、空間に余裕を持たせるプランを作成。3年前にも同じ廃棄(はいき)作業をしたのですが、気が付けば元の木阿弥(もとのもくあみ)になっていました。パソコンのハードディスク同様、ガラクタを目一杯(めいっぱい)まで詰め込んだ、デジタル世界(ゴミ置き場)に変貌(へんぼう)していたのです。時間を要する作業を黙々とこなしました。
そして大仕事にもチャレンジ、部屋全体に敷き込んだカーペットを剥(は)がして、同居者がご親切にも通販で買い求めてくれたピース敷(じき)のマットに交換しました。子供達が自立するまで使っていた部屋をそのまま利用(居抜き?)しましたから、カーペットにはコーラなどの染(し)みが地図のように残っていました。カッターナイフで少しずつ切り取りながら張り替えると、慣れ(学習効果)もあって、意外と簡単にできました。
防音とクッションを兼ねた下地材は汚れていませんからそのままとし、部屋の隅にめぐらされたカーペットを固定する釘(フェルトグリッパー工法)もそのまま利用しました。予期せぬ効用でしたが、不要となったカーペットはピースに小分け済みですから、ゴミとして出す時も楽でした。
気になったのは昨夏に発生したエアコン室内機の水漏れで濡れたレコードです。トラブルが発生した時にレコード・ジャケットを一枚ずつしっかり拭(ふ)いたはずでしたが、ジャケットの下部にシミが発生するとともに黒いカビが生えているものが数枚見つかりました。そのシミとカビを丁寧(ていねい)に拭き取りましたが、カビの生えた場所は少し傷(いた)んでいますので、補修材と接着剤で慎重に修復しました。さらにレコード本体も取り出して影響がないかを確認、もちろんジャケットの内側も清掃しました。
以上の作業に想定外(今年の流行語)の2日間を要したため、3日目になってやっと室内のレイアウト変更に着手しました。アンプやプレーヤーなどのオーディオ機器は操作しやすい場所に置き、音響を考慮してスピーカを当所の場所に戻します。
動作を確認するためアンプ(パイオニア製Audio/Visual Stereo Receiver VSX-5900S、海外仕様、1990年購入)の電源を数ヶ月ぶりに入れました。Dolby社の今は懐かしいPro Logic回路(5.1チャンネル・サラウンド機能)を搭載(とうさい)してホームシアターに対応しています。ついでにパソコンの音声出力とも接続しました。
SL-Q6(1983年に購入したテクニスクのレコードプレーヤー)のターンテーブルに前日点検したレコードを載(の)せてスタート・スイッチを押し、アームが持ち上がってレコードの盤面(ばんめん)に下りる瞬間を眺(なが)めます。スピーカから昔通りのクリヤーな音が流れてくると、すべてを忘れて自分一人の世界に入っていました。
ターンテーブルの上に載る小さな円盤(紙製)は昔懐(むかしなつ)かしい「ストロボ回転計」です。正(まさ)にアナログ技術そのもので、その縞模様(しまもよう)はアナログの世界を実感させます。
次のレコードに取り替えました。レコード針を盤面に下ろす前の習慣になっていますが、愛用するナガオカ製レコード・クリーナーで丹念(たんねん)にホコリを拭(ぬぐ)います。シリコンラバーで出来たローラーを盤面上で転(ころ)がすのです。2-3回使うとローラーに埃(ほこり)が付きますから、水洗いをする必要があります。
時にはレコード針の先端を専用の薬剤とブラシを使って清掃(せいそう)します。このプロセスは手間が掛かりますが楽しみでもあるのです。予備のレコード針も確保しています。アームに灯(とも)るインジケーター・ランプに仄(ほの)かに照らされたレコード盤の溝が美しいのを見ていると、まささに至福(しふく)の時が!
レコードの山の中から珍しいものを見つけました。「周波数基準レコード」(製作:東芝音楽工業制作、販売:東芝EMI)です。東芝音楽工業から東芝EMIに改名したのが1973年であり、パイオニア製の半自動レコード・プレーヤーPL-25Eを購入したのが1975年でしたから、その時に一緒に購入したのかもしれません。
レコード・プレーヤーの回転速度や回転ムラ・ピックアップの周波数特性や感度試験に使われたもので、ホノモータのSN比(雑音レベル)試験を行うことが出来ます。わが家のSL-Q6はダイレクトドライブ方式ですから回転速度や回転ムラをチェックする必要はないため、もう20年以上も再生したことはなかったレコードです。
そして久しぶりに「フルートとハープのための協奏曲」(モーツアルト作曲)を再生すると、中学の器楽部でフルートを一生懸命に練習した頃が懐かしく思い出されます。
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