上田市の北国街道を探訪する(前編)
所用があり長野新幹線を利用して長野県上田市へ出掛けました。前回の訪問からほぼ2年ぶりです。上田駅の改札口を出る右手前で真田三代戦国絵巻が来訪者を迎えてくれます。
駅前には寒風で煽られる池波正太郎真田太平記館の垂れ幕の前に雪の塊が残っていて長野県であることが実感できます。いずれも前回訪れた2年前と模様替えされています。
その先には案内標識に鉄道と上田市の関係が簡潔に説明されていました。
駅前のロータリーを抜けて新幹線に沿う道を東南方向へ歩きました。500mほど先の交差点角に笠原工業常田館(ときだかん)製糸場の案内看板があります。笠原工業は明治初期に同じ長野県の下諏訪で創業した製糸工場で、明治33年のこの地に常田館製糸場を設立した歴史ある会社です。
案内看板には明治・大正時代に蚕都(さんと)と呼ばれていた上田地域の製糸工場がほぼそのまま残っていることが説明されていました。道を挟んで明治41年(1908年)に建てられた製糸記念館常田館と表示された木造2階建ての建物があります。ここには古い時代の資料が展示されているそうで、事前に電話で見学を申し込みましたが、残念ながら3月20日までは冬季休館中とのことでした。
笠原工業の前を北東方向へ伸びる坂道を上がると右手の傾面に昭和天皇皇后行幸啓記念植樹と表記された木柱が立っているのを見つけました。
プチ薀蓄(うんちく)です。行幸(ぎょうこう、みゆき)は天皇陛下が外出されることを意味しますが、行幸啓(ぎょうこうけい)の方は天皇皇后両陛下が一緒に外出されることを指します。表記された昭和39年5月に上田市だけを訪問されたのかと思って確認すると、茅野市八子ヶ峰(ちのしやしがみね)で開催された全国植樹祭の折のようです。目的地が複数ある場合は巡幸(じゅんこう)あるいは巡幸啓と呼ばれるはずですが・・。
国道141号の常田2丁目交差点を過ぎて丁字路(ていじろ)に行き当たりました。左右に伸びる細い道が北国街道です。右手(南東方向)にある枡形の手前に神社らしきものが見えます。けやきの大木があることでも知られる上田城鎮守の科野(しなの)大宮社のようですが、スケジュールの都合で立ち寄ることは諦(あきら)めました。
時間が許せばその300mほど北にある藤本つむぎ工房へ立ち寄って本格的な手織り機を使って上田紬(つむぎ)の製作を体験しても面白いと思います。
左手方向へ北国街道(中常田通り)を歩きます。北国街道とは江戸時代における北陸道のことで、この上田市を通る北国街道は軽井沢の追分(中山道の追分宿)から直江津(新潟県)までの区間です。
街道筋に相応しい古い建物には簡単な袖卯建(そでうだつ)のようなものが左手に確認できます。
常田毘沙門(びしゃもん)堂跡が目に留まりました。佐久間象山先生勉学之地の石碑に惹かれて立ち寄ることにしました。佐久間象山(さくましょうざん)については志賀高原の記事で簡単に紹介しています。
境内で作業をしていた方が碑文は佐久間象山の自筆であることを教えて下さいました。大学入試の国語に漢文を選んだ私ですが、難し過ぎて一向に読めません。あとで調べるとこれは「活文禅師追福之碑」で、活文禅師(かつもんぜんじ)は象山の先生でした。ちなみに追福(ついふく)とは死者の冥福(めいふく)を祈ることを意味します。
北国街道はさらに真っ直ぐ伸びていました。前方に見える山は上田市の北西にある虚空蔵山(標高1077m)でしょう。その頂(いただき)には白く雪が残っています。
左手にある立派な蔵とイメージを合わせた様なモダンな建物が面白いと思いました。
右手に曹洞宗(そうとうしゅう)の天照山日輪寺がありました。この寺は天文14年(1545年)に真田氏の祖とされる海野幸義(うんのゆきよし)が開基(かいき、創立者)となり用山光受大和尚が開山したのが始まりと伝えられるそうです。正面に見えるのは普門閣(ふもんかく)と呼ばれる観音堂で、左手では建物の工事が行われています。
山門前に6体の地蔵が祀られています。六地蔵といえば、これまでも伊勢原市や弘明寺観音(解説付き)、そして京都・伏見の六地蔵宿などで六地蔵にお参りしたことがあります。
すぐ先にある真言宗の海堂山宗吽寺(そううんじ)は上田藩主松平氏の時代には祈願所であったそうです。
県道の向かい側に新しい六地像石幢(せきどう)があります。日輪寺で見た六地蔵と関係があるのかと早とちりしそうになりましたが、場所から考えて宗吽寺に実物があることに気付くべきでした。石幢とはインドで始まった石の表面に表した旗印で仏殿の前に建てたものでしたが、日本では地蔵信仰と結びついたそうです。(続く)
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