続・奥の細道疑紀行 清川から羽黒山へ(その3)
県道45号(手向バイパス)に出て先ほど立ち寄った「羽黒自然の小経」まで戻り、羽黒山有料道路(通行料400円)に入りました。芭蕉はこの道路に並行する月山登拝路を月山に向けて歩いたそうです。山頂の駐車場に車を停めました。昔ながらのデザインで描かれた出羽三山案内図の横に簡略化された案内看板がありました。
歴史博物館の前を通過した右手に末社が並んでいました。左から大雷神社、健角身神社、稲荷神社、大山祗神社、白山神社、思兼神社、八坂神社の順です。
社務所と参拝者の受け入れ施設を兼ねた「参集殿」の方向を見ると『世界平和之搭』と表示された丸い玉の上にカラスのようなものが止まっています。その先には鐘楼(しょうろう)も見えます。
鐘楼堂(しょうろうどう)は切妻造りの萱葺(かやぶ)きで、最上家信の寄進で元和4年再建された羽黒山では五重塔に次いで古い建物であり、建治元年の銘がある大鐘(国指定重要文化財)は東大寺・金剛峰寺に次いで古いそうです。ちなみに、鎌倉幕府が元寇の国難除去の祈願で寄進したものといわれます。
鐘楼堂の左手にある鏡池お前には神宮祭主北白川房子様の歌碑『阿か阿かと朱ぬりもはゆる 出羽のやしろ とはに栄えむ 御国の鎮と』がありました。北白川房子様は明治天皇の第7皇女です。ちなみに、神宮祭主は伊勢神宮の神職で戦後は女性の元皇族が就任されているようです。
鏡池越しに見える三神合祭殿(国指定重要文化財)は一棟の内に拝殿と御本殿とが造られた合祭殿造とも称される独特の社殿です。鏡池は年間を通しほとんど水位が変らない神秘な池として信仰をあつめ、羽黒信仰の中心でもあったそうです。
三神合祭殿の長押(なげし)には様々な装飾彫刻があり、左から湯殿山(ゆどのさん)神社、月山(がっさん)神社、出羽(いでは)神社の額が掛けられています。
出羽三山神社のHPには『この社殿は合祭殿造りと称すべき羽黒派古修験道独自のもので、高さ28m、桁行24.2m、梁間17mで主に杉材を使用し、内部は総朱塗りで、屋根の厚さ2.1m(7尺)に及ぶ萱葺きの豪壮な建物である』と説明されています。
上を見上げると長押(なげし)に二十四孝(にじゅうしこう、昔の中国で孝行が特に優れた24人)の彫刻が並んでいました。
三神合祭殿を過ぎた場所にある蜂子(はち)神社は出羽三山神社御開祖・蜂子皇子(はちのこのみこ)を祀っています。ちなみに、蜂子皇子は崇峻(すしゅん)天皇の第三皇子です。
さらに先へ進むと朱に塗られた鳥居がありました。参道の終点鳥居に違いないとその鳥居を潜(くぐ)り、一の坂から歩いて登った参拝者になりきって撮影しました。
三の坂を見下ろしました。頂上付近の参道には雪はまったく残っていませんから石段をもう少し下りてみたくなりましたが、何とか思い留(とど)まりました。
駐車場へ引き返す途中に芭蕉像と出羽三山の句碑がありました。『凉しさや ほの三日月の 羽黒山』、『加多羅礼努湯登廼仁奴良須當毛東迦那(語られぬ湯殿にぬらす袂かな、かたられぬゆどのにぬらすたもとかな)』、『雲の峯 いくつくつれて(幾つ崩て) 月の山』の3句が刻(きざ)まれています。
天宥(てんゆう)社は記事(その2)で紹介した羽黒山五十世執行別当天宥法印(ほういん、僧正に相当)を祀(まつ)っています。芭蕉は天宥の業績をしのんで追悼(ついとう)の句文を手向(たむけ)、『其玉や 羽黒にかへす 法の月』と詠(よ)んだそうです。其玉は天宥法印の魂(たましい)を、法の月は仏法による救済を、意味します。
駐車場に戻って下山する途中、第3駐車場に立ち寄りました。写真は展望台から見た月山(標高1984m)。月山の名前は農業の神「月読尊」(つくよみのみこと、素戔鳴尊の兄で月の神)を祭ったことに由来するそうです。月山の右手には五穀豊穣・家内安全の守り神が祀(まつ)られる湯殿山(標高1500m)が続きます。
その左手は火打岳(標高1033m)、虚空蔵岳(標高1090m)、追立山(標高992m)などでしょう。
県道45号と県道47号で鶴岡市の中心部へ向う途中で羽黒山大鳥居を通過しました。この先の交差点を左折すれば庄内映画村オープンセットへ行けますが、10km近くの距離がありますし、最終入場時間の午後3時半を30分も過ぎていますから、そのまま通過しました。(続く)
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