続・奥の細道疑紀行 新庄市の「そば庄司」と「本合海の乗船場跡」
県道305号から国道13号のバイパス(尾花沢新庄道路)に入って、さらに国道47号(新庄南バイパス)で新庄市の郊外へ向かいました。国道47号を下りた所に「手打ちそば 庄司」がありました。酪農から転職したご主人が牛舎(ぎゅうしゃ)を改装して店舗にした蕎麦(そば)屋さんです。右手の入口付近は増設された部分でしょう。
入口を入った左手の土間には石臼(いしうす)や餅(もち)つき用の臼(うす)と杵(きね)など子供の頃に見慣れた懐かしい道具類が置かれていました。
右手には蓑(みの)、ノコギリ、鍬(くわ)、竹細工製品などが並んでいます。私のような古い世代にはたまらない演出で、蕎麦の味にも期待が高まります。
12時になったばかりの店内は席が手前から半分ほど埋(う)まっていたため、空いている奥の席に座(すわ)りました。私は好きな鴨南蛮(かもなんばん)そば(1050円)やニシンそば(1000円)にしようか迷いましたが、やはりこの店の名物である鴨板の合い盛り(1100円)に、同行者は冷たいとろろそば(800円)を選びました。
付け出しは旬の自家野菜の漬物と蕎麦寒天です。見た目にも綺麗(きれい)ですが食べて驚きました。蕪(かぶ)は心地(ここち)良い歯ざわりと甘ささえ感じる塩梅(あんばい)が絶品なのです。あっと言う間に私の皿から姿を消してしまいました。
「冷たいとろろそば」は不思議な外観をしています。同行者は冷たいそばにも出汁(だし)が入っていることに驚いて、「温かい方にすれば良かったわ」と愚痴(ぐち)を言っています。味見をさせてもらうと味のバランスが良い夏向きのメニューでした。
私に配膳(はいぜん)された鴨板(かもいた)は右側に白っぽく細打ちの今田舎(更科そば)、左側に少し黒っぽい太打ちの昔田舎(田舎そば)が盛られています。山形の板蕎麦はボリュームが多かったことを思い出しました時には手遅れでした。私が好きな田舎そばである昔田舎は太い上に腰があって顎(あご)が疲れるほどでした。
鴨肉の入ったやや濃(こ)いめの付け汁に助けられて何とか昔田舎も完食した時に同行者から「私がにしん煮(400円)を頼んで、板蕎麦を2人で分ければ良かったのよ。そうすればあなたの好きな鴨と『にしん』の両方を食べられたわ!」と後知恵(あちぢえ)を私にぶつけて来ました。なるほど、お説ごもっとも!
国道47号に戻って西方へ3kmほど走った所で脇道に入って、芭蕉が乗船したと伝えられる本合海(もとあいかい)の集落に入りましたが、船着場跡の案内表示らしきものは見つかりません。そして、国道に出てしまい後続車に押されるように本合海大橋を渡ってしまいました。右手に公園のようなものが見えましたので立ち寄ることに。
本合海水辺プラザでした。案内看板には芭蕉乗船の地が分かり易く表示してあります。右に折れたT字路を左手に300mほど進んだ先にあったのです。
最上川の対岸(右岸)に見える小さな祠(ほこら)は矢向神社(矢向大明神)で、山頂には中世の城(楯)である八向楯(やむきだて)があったそうです。これは聞きかじりですが、兄頼朝と対立した源義経は舟で最上川を遡(さかのぼ)り、本合海で上陸した時に「矢向大明神」を拝んだあとに奥州平泉に向かったそうです。
先ほどの案内地図に従って戻ると、川縁(かわべり)に芭蕉と曽良の陶像(東山焼き)が建っていました。近くにある案内板に『1689年(元禄2年)に大石田を後にした芭蕉と曽良の一行は新庄の澁谷風流宅に2泊したあとに本合海の船着場に来た』ことが説明されていました。
これは『五月雨を あつめて早し 最上川』の句碑です。逆光のためフラッシュを使って撮影しました。
その先は行き止まりになっていて両側に親柱のような石柱がありますから古い橋があったのかもしれません。右手に見える青い橋は先ほど往復した本合海大橋です。帰宅後に調べると、1934年(昭和9年)に完成した橋の跡で、1978年に本合海大橋に架け替えられたことが分かりました。
左手(上流方向)の最上川を望みました。五月雨(さみだれ)にはまだ早いのですが最上川は豊かに水を湛(たた)えています。
最上川に沿って国道を走って最上郡戸沢村にある戸澤藩船番所跡に立ち寄りました。現在は最上川下りの乗船場になっています。
裏手に回って最上川縁(べり)に出ると「川の一里塚」には「日本海まで約十里」と表示されていました。
こちらが現代の乗船場。手前に船が2隻(せき)、対岸には3隻待機しています。
国道47号を少し先に進んで最上峡(もがみきょう)に入ると対岸に滝がいくつも見えました。
最上峡沿いの道が続きます。余談ですが、最上の地名は律令(りつりょう)時代にこの地方が最上郡と呼ばれたことによりますが、由来は定かではないようです。陸奥国(むつこく)の最も上(つまり北)にあるからと漢字表記から解釈するのは俗説で、その以前は藻上郡(もかみこうり)と表記されていたそうです。
白糸の滝ドライブインに到着。『白糸の滝』は富士山麓や軽井沢、多摩川上流の小菅村にもあります。ここにも乗船場があり、『車の回送は要りません』と看板に表示してありますから、川下りのあとは乗船した場所まで戻ってくれるようです。
これがレストランから見た白糸の滝で、落差が約123mもあるそうです。朱色の鳥居が鮮やかです。ちなみに、最上峡には最上四十八滝という滝群(たきぐん)もあるようです。
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