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2014年6月16日 (月)

池井戸潤著「果つる底なし」を読む

池井戸潤(いけいどじゅん)氏についてあらためて紹介する必要はないと思いますが、念のため簡単にプロフィールと主な作品を紹介します。池井戸さん(1963年6月16日生まれの51歳)は、32歳の時に大手銀行を退職し、コンサルタント業のかたわらビジネス書の執筆に携(たず)わって成功しますが、子供の頃からの夢であった江戸川乱歩賞を目指して小説を書き始めたそうです。

 

そして、最終選考での落選をわずか一度経験しただけで、1998年に「果つる底なし」で江戸川乱歩賞を見事に受賞しました。これを契機として作家活動に専念して次々作品を発表すると、大きな賞を総なめにしました。「鉄の骨」で吉川英治文学新人賞、「下町ロケット」で直木賞も受賞したのです。

 

その他の作品もテレビドラマ化されて大ヒットしました。「オレたちバブル入行組」と「オレたち花のバブル組」の2作品を原作として昨夏に高視聴率を獲得したTBS系列の「半沢直樹」、現在放送中で2桁台の視聴率を獲得している「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系列で4月27日-6月22日の予定)と「花咲舞が黙ってない」(日本テレビ系で4月16日から)、2000年2月にフジテレビ系列で放送された「果つる底なし」(原作とは少し違う舞台設定)など、枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がありません。

 

アマゾンによる本書「果つる底なし」(1998年9月講談社刊)の内容紹介には、『債権回収担当の同僚が、謎の言葉と不正の疑惑を残して死んだ。彼の妻は、かつて伊木(いぎ)の恋人だった。先端企業への融資をめぐる大銀行の暗部に伊木は立ち向かう!』、と興味をそそります。

 

以下は、私なりにまとめた本書の「あらすじ」と読後感です。ちなみに、「果つる」は文語動詞、果 (はつ)の連体形で、現代語の「果てる」に対応します。

 

                             ☆

 

二都銀行渋谷支店の融資課次長である伊木遥(いぎはるか)が昼過ぎに外回りから支店へ戻ると、ただちに支店長室に呼ばれた。そこには支店長の高畠(たかはた)浩一郎と古河(ふるかわ)融資課長がいた。同支店の坂本建司が代々木公園脇にとめた車の中でぐったりしているところを発見されて救急車で病院に運ばれたが、どうも危ない様態だと知らされる。朝外回りに出かけるときに駐車場で会って短い言葉を交わしたばかりであった。

 

坂本も同じ融資課の課長代理で、伊木は一般融資を担当、坂本は回収(行きづまった企業から貸出金を返済させる業務)を担当している。午後7時過ぎに2人組の私服刑事が支店にやってきて、坂本と一番親しかった伊木が真っ先に事情を聞かれた。坂本との関係、仕事や支店の情況、坂本にアレルギーが無かったか、行きつけの店はあるか、などである。何か気づいたことはないかと問われた伊木は最後に会ったとき、坂本が「これは貸しだからな」と言ったことを刑事たちに話す。

 

二都銀行事務部による調査で坂本が1か月ほど前に顧客名義の口座から他行の自分の口座へ3000万円を不正に送金していたことが判明。 しかも6回に分けてその全額が引き出されていたのである。そして被害者が警察に訴え出たためことでこの事実が表沙汰(おもてざた)になる。

 

伊木は坂本の業務を受け継ぐことになるが、坂本が残した書類を見ているうちに不審(ふしん)な点を発見する。克明に記録を残す坂本でありながら、死亡したその日のスケジュールが空白である上、坂本の通夜の夜に、坂本のパソコンのデータが更新されていることなどである。

 

さらに伊木は坂本が伊木のミスをかばってくれていたことも発見する。死亡した日の朝、「 これは貸しだからな 」 と言った坂本の不思議な言葉の意味が、その時は分からなかったが、伊木のミスに関することだったのである。

 

坂本が死亡する半年前、「 東京シリコン 」 という半導体関係の会社が経営に行き詰まって社長の柳葉朔太郎(やなぎばさくたろう)が自殺したが、その時に伊木から坂本へ担当が移ったことで坂本が伊木のミスを発見していたのだ。

 

そして、坂本は東京シリコンをなんとかしたいとの思いで奔走(ほんそう)していたことが分かってくる。伊木はなにか不自然なことを感じて、柳葉の娘奈緒(なお)とともに調査を進めるうち、伊木のまわりで不穏(ふおん)な動きが出てくる。

 

まず、伊木が住む家の郵便受けに蜂(はち)が入っていて伊木が刺(さ)されそうになる。

 

その次に、二都銀行渋谷支店副支店長の北川が、車ごと埠頭から転落して死ぬ。伊木が調査して入手した書類が机の上からなくなるトラブルが発生したが、防犯カメラの記録テープを調べると北川が持ち出す様子が映っていた。そのことを知った北川が伊木の家に押しかけてきて、伊木にそのビデオを渡すように脅(おど)しをかけるが、伊木は北川を追い返す。そして、その夜に北川も死んでしまう。

 

行員の不審な死が続いたことで警察も本格的な捜査に乗り出した。伊木が死んだ坂本の妻曜子(ようこ)と独身時代に二都銀行本店企画部の同僚であり、しかも恋人同士だったこともあって、伊木にも疑いがかかる。

 

信越マテリアルの山崎課長が伊木に接近してきた。同じ二都グループの二都商事金属グループ金属課長から立て直しのために信越マテリアルへ出向している人物、大口債権者の二都銀行に協力してほしいという。伊木は信越マテリアルの手形を東京シリコンが割引くことで信越マテリアルが裏金を作っていたことを山崎課長に確認させる。

 

坂本の遺品をさらに調べた伊木は仁科佐和子(にしなさわこ)の存在を知る。現在はテンナインという半導体技術の新興会社で社長として敏腕を振るっている女性である。そして、伊木は適当な理由を付けて面会を求めるが、仁科は伊木に対して「けんもほろろ」(取りつく島もないこと)の態度である。

 

これらの急激な展開を受けて伊木は大胆な行動に出た。そして、最終章ではミステリー小説の約束事として思わぬ結末が待っている。

 

                             ☆

 

池井戸さんの作品は、銀行業務の流れや人間関係が分かりやすく説明され、門外漢も興味深く読めるように配慮されています。デビュー作である本書は江戸川乱歩賞を受賞した作品(犯罪小説)だけあって、魅力的な人物描写と速いストーリー展開で読者を強く引き付けたまま、終末まで一気に進みます。銀行ミステリー作品の原点とも言える本作品は、文章が読みやすくて良いのですが、主人公伊木の心情を描写する文章はやや観念的・抽象的な言葉の羅列(られつ)になっていることが私は気になりました。池井戸作品の入門書としてお奨(すす)めしたい良書だと思います。

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