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2014年8月16日 (土)

池井戸潤著「オレたち花のバブル組」(後編)

第3章 金融庁検査対策(続き)

 

西新宿の居酒屋で戸越は古里を待っていた。遅れて入店した古里は馴(な)れ馴れしい口調で話し始めると、戸越は金融庁の検査で伊勢島ホテルがやり玉に挙(あが)っていることを話題にし、運用失敗のことを古里に話したのに何で放っておいたという。そして、上司に報告したんだろうなと問い詰めると、古里は貝瀬支店長に報告したことを認めた。その時、無人だと思っていた隣席から咳払(せきばら)いがしたことで古里ははっと口を噤(つぐ)んだ。

 

「最近の銀行員の中には間抜けがいるよな。内部情報をでかい声で話して平気なんだから」と言って、半沢と近藤が戸越と古里のテーブルを覗(のぞ)き込んだ。半沢の鋭い詰問(きつもん)に古里は伊勢島ホテルの粉飾(ふんしょく)を見逃(みのが)したのは貝瀬支店長の指示であったことを渋々認めた。半沢は上司に報告したという証拠を見せろと迫リ、さもないと古里を懲戒解雇(ちょうかいかいこ)させると言い放つと、古里は恐怖の眼差しで承諾(しょうだく)した。さらに、田宮電機の運転資金の稟議書(りんぎしょ)を融資部へ明朝提出しろと言うと、古里は分かったと答えるしかなかった。

 

半沢は戸越をともなって伊勢島ホテルの湯浅社長のもとを訪れた。再建策を話し合うために戸越の意見が不可欠と考えたのだ。関連会社のリストをチェックした戸越は湯浅家の資産管理を行う湯浅実業株式会社に絵画と土地があることを思い出した。絵画が好きな会長は美術館をつくることが夢なのだ。戸越は印象派の名画を売れば100億円ほどの損失を穴埋めできるという。

 

半沢に証拠を見せろと言われた古里は、貝瀬の自宅にある疎開(そかい)資料に必要書類が混入したとの理由をでっちあげて、貝瀬の自宅を訪れる許可を得た。貝瀬の書斎にある10箱の中をくまなく探して、古里はついに目的の書類を見つけた。こうして、貝瀬の回答が手書きされて閲覧印が捺()されたその報告書が行内便で半沢のもとに送られてきた。半沢は貝瀬ひとりの判断ではないと考え、翌朝一番に京橋支店の貝瀬支店長に電話を入れ、報告書をファックスで京橋支店に送りつけた。

 

第4章 金融庁の嫌な奴

 

7月の第1週、金融庁検査官の黒崎は集まった銀行員に向かって金融検査を行うことを告げた。黒崎が朝一番、下した命令は「与信(よしん)所管部の責任者を全員集めよ」という極めて異例なものであった。そして、9時半の集合時間に遅れてきた2人の次長に向かって黒崎は馬事雑言(ばじぞうごん)を浴(あ)びせた。自らの権威をかざす黒崎のパフォーマンスだが、半沢はそれ以外にも、隠された理由があるのではないかと考えた。

 

業務統括部の次長たちを足止めすることで業務検査部の検査対策チームと支店との分業体制を機能不全に陥(おちい)らせたうえで、当日検査対象に指定した支店を思うまま調べ上げることであったことが明白になった。

 

半沢が伊勢島ホテルの担当者として金融庁から呼び出しを受けたのは翌日の午後のことであった。黒崎は伊勢島ホテルの資産調査が今回の検査の最重要課題であると宣言。半沢は伊勢島ホテルの与信状況を淀(よど)みなく説明するが、黒崎は厳しい指摘を次々と繰り出したうえで、業績にIT投資(100億円超)が寄与する計画に関して、ナルセンというITシステム開発会社が近く破綻(はたん)するので、運用損失の120億円にIT投資の失敗による100億円以上が加わるから、業績回復のシナリオは「甘い」のひと言につきると勝ち誇ったように言い放った。

 

半沢は小野寺を伴って伊勢島ホテルの湯浅社長を訪ねた。ナルセンが破綻すると聞かされた湯浅社長は羽根専務に尋ねるが「業績は良くないという話聞いたいたが、破綻とは・・」と要領を得ない。どうすればいいかと自問する湯浅に向かって半沢はナルセンの状況を調べるのが先だという。

 

翌朝、半沢は大和田常務から呼び出しを受けて、伊勢島ホテルの査定で検査官に不備を指摘されたことを詰問(きつもん)された。さらに、金融庁から検査態度を改めるようにとの指摘があったという。半沢をなおも糾弾(きゅうだん)する大和田常務に向かって、半沢は「私の責任なら後でまとめて取らせていただきますから、ご心配なく。伊勢島ホテルに対する与信態度に問題があったとすれば、京橋支店にあります」と言葉を返した。

 

大和田は4年前までの3年間、その京橋支店長として業績を伸ばしたことを評価されて出世の階段を駆け上がった経緯があるので、ムキになってその理由を説明せよという。半沢は、「京橋支店が昨年12月に伊勢島ホテルの運用損失の事実を掴(つか)んでいましたが、対応策をとることなく、損失発生の事実を隠したまま法人部へ移管しました。貝瀬支店長の指示によるものでしたが、貝瀬支店長ひとり判断とは思えませんので、貝瀬が誰の指示でそうしたのかを金融検査が終わったら徹底的に調査するつもりです」と大和田と岸川に告げた。

 

ナルセン本社まで足を運んで得た情報を戸越は半沢に伝えた。ナルセンが開発したシステムを納入したウエスト建設が売掛金70億円を回収できず、実質債務不履行(さいむふりこう)の状態になっているらしいことと、経営側と銀行サイドで破産の方向で調整しているとの噂(うわさ)があるというのだ。そして、ナルセンは反社会勢力と付き合いがあるため、白水銀行も支援を継続できないジレンマにあることも。

 

午後7時過ぎ、大和田が湯浅を訪問してきた。金融庁に伊勢島ホテルを分類させたくないので、事業計画を練り直す必要があり、ナルセンを倒産させないために買収することを持ちかけた。資金使途を変更して伊勢島ホテルが立ち直るのなら、行内はなんとかするとまでいう。ただし、その条件は湯浅社長がきちんとけじめをつけることであり、半沢の処分も考えていると明かした。この時、湯浅は大和田と羽根で仕組んだことに違いないと感じた。

 

そこへ半沢から電話が入る。湯浅は訪れた半沢を見るなり、大和田常務が来訪して社長退任を勧告したことを告げた。半沢の問いに答えて湯浅の後任に羽根をトップに据える人事の考えを示した。半沢は、ナルセンが反社会的勢力と取引があるので、買収できないことを大和田と羽根は知らないという。そして、半沢は湯浅社長に伊勢島ホテルを救い、これから伊勢島ホテルが一層飛躍していくために不可欠だと断って、突拍子(とっぴょうし)もない提案をする。

 

「伊勢島ホテルに興味を示しているフォスターの資本を受ければ、湯浅の社長継続とフォスターのグローバルな受注システムと必要な人材、およびノウハウの提供を受けることができる。一方、フォスターは伊勢島ホテルを連結対象とすることで、手っ取り早く日本での収益機会を得ることができる」と説明した。湯浅はじっくり考えるための時間がほしいという。

 

後半の内容は省略しますが、「第5章 カレンダーと柱の釘」(野田経理課長の思い)、「第6章 モアイの見た花」(島田検査官による疎開資料探し)、「第7章 検査官と秘密の部屋」(黒崎検査官の反撃)、「第8章 ディープスロートの憂鬱」(娘の婚約者)、の各章が畳み掛けるように物語の結末へ向かって進展しました。

 

                              ☆

 

テレビドラマでのハイライトとなったのは第10話における取締役会での半沢と大和田常務との対決ですが、原作である本書(第8章)ではすべてが明らかにされるプロセスが淡々と描かれているだけで、テレビ視聴者へ強烈なインパクトを与えた香川照之さん(大和田常務役)の迫真の演技(土下座シーン)はありません。

 

後日談として、大和田は常務から平取締役(つまり出向待ち)になり、近藤が広報部調査役として出向先の田宮電機から本店へ戻りますが、半沢は人事部長の伊藤(ドラマでは直接頭取)から中野頭取の意向として銀行外への異動についての内示を受けたことが簡単に説明されます。

 

そして、エピローグ(終章)の位置づけで、半沢と妻の次のようなやり取りが続きました。目的は達したものの充足感が感じらえない半沢が自宅に戻ると、妻の花から思わぬ計画を打ち明けられてしまいます。半沢の了解が得られなかったことで花は不満顏になりますが、半沢にはそれに構う気力が残っていません。散々旅行がしたいと強請(ねだ)って花が旅行への興味をすっかりなくしてしまったため、半沢は一人で田舎に帰り、もう一度自分の人生を考えてみようと思い始めます。

 

このように、第8章の後半で半沢直樹シリーズの第3作「ロスジェネの逆襲」への展開を予感させたのは池井戸潤氏らしいみごとな演出だと思います。それに惹(ひ)かれた私は半沢直樹が銀行以外の舞台でさらに活躍するであろう続編を読んで見たくなりました。

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