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2014年8月15日 (金)

池井戸潤著「オレたち花のバブル組」(前編)

本書は「オレたちバブル入行組」とともに人気テレビドラマ「半沢直樹」(はんざわなおき)の原作となった長編小説です。表紙にはタイトルと作者名とともに、地下鉄のプラットホームで電車を待つ背広姿で黒いカバンを下げたサラリーマン風の男性が描かれていました。今回紹介する本書はテレビドラマ(全10話)の後半である第6話から第10話にほぼ対応しています。ちなみに、テレビドラマの前半(第1話から第5話)は「オレたちバブル入行組」に基づいており、東京中央銀行大阪西支店における融資課長半沢直樹の活躍が描かれています。

 

                           ☆

 

第1章 銀行入れ子構造

 

一時、13行あった大手都市銀行が合併を繰り返した結果、3大銀行に集約されたことで、多くの銀行における人事はバランスを保つために入れ子構造(マトリョーシカが代表例)になったことを背景に物語は始まった。産業中央銀行と東京第一銀行が合併してできた東京中央銀行が舞台である。同行法人部の時枝孝弘(ときえだたかひろ)のもとに融資先である伊勢島ホテルの財務部長である原田貴之(たかゆき)から、「少々マズイことになったので会えないか」との電話が入る。

 

伊勢島ホテルの本社は東京中央銀行のすぐ近くの京橋にあり、30分もしないうちに原田部長をともなった羽根専務が時枝のもとを訪ねてきた。羽根は開口一番、「運用の失敗で120億円の損失が出ることが確定的になった」と時枝に告げた。じつは、渋る法人部長を説き伏せて役員会の決済に漕ぎつけ、先日200億円の融資をしたばかりである。

 

営業第二部次長の半沢直樹は上司である副部長の三枝裕人(さえぐさひろと)から伊勢島ホテルを担当するよう告げられた。頭取の命令だともいう。本来なら業績が悪化した取引先を専門に担当する審査部が担当すべきだとういう半沢に向かい三枝は、「それでは、伊勢島ホテルが問題先だと認めることになり、金融庁に対して説明がつかない」と否定した。半沢はそれを受け止めることにした。

 

時枝との引き継ぎをした夜、半沢は同期の渡真利忍(とまりしのぶ)から誘いの電話があり、神宮前にあるなじみの焼鳥屋で落ち合った。渡真利は、半沢に同情しながら、金融庁検査のスケジュールが決まり、しかも黒崎が主任検査官として任命されるらしいとの情報を教えてくれた。金融庁の目当ては伊勢島ホテルらしいともいう。合併から2年余りが経過した数カ月前、旧東京第一銀行の京橋支店を存続店舗とする代わり、大口取引先の伊勢島ホテルは召し上げて、旧産業中央銀行が主体になっている法人部へ引き渡した経緯があるのだ。

 

半沢は伊勢島ホテルの羽根専務を訪ねて担当引継ぎの挨拶(あいさつ)した際、事業計画を見直してほしいと申し入れるが、羽根はそれに反発して東京中央銀行の大和田常務と同ホテル社長の湯浅の間で話合わせてもらうという。次いで、半沢は東京中央銀行の京橋支店の支店長、貝瀬郁夫(かいせいくお)を訪ねて伊勢島ホテルについての管理がどうだったのかを尋(たず)ねるが、担当の古里則夫(こざとのりお)に任せると言って席を立った。その古里の態度は取り付く島がない。

 

翌朝、半沢は営業第二部部長の内藤寛(ひろし)から呼び出しを受けた。伊勢島ホテルへの融資を返済してもらう件は少し待てという。羽根専務と親しい元京橋支店長の大和田常務による根回しであった。「難しい仕事だということは百も承知だが、君ならできる。いや、君にしかできないといったほうがいいか。とにかく、まかせたぞ、半沢」と話題を打ち切った。

 

第2章 精神のコールタールな部分

 

バブル時代に入行した同期行員の中で、取引先の中小企業である田宮電機へ出向している近藤直弼(なおすけ)の近況が描かれる。入行して数年は仕事ぶりを評価されたが、バブル崩壊後に任された新店舗で思うような成績を上げることができず、それが原因で心の病に冒され、その後1年間の休職を余儀なくされた。それが彼のキャリアに響(ひび)き、合併によるポスト限で、真っ先に出向させられたのだ。

 

田宮電機社長の田宮基紀(もとき)は10年前に創業社長が亡くなってから社長業を継いだ二代目。苦労知らずに育った田宮は、今まで3人ほどを東京中央銀行から受け入れたが、いずれの出向者も長く続かなかった。一番大きな理由は、出向して社員になろうとする者に対しても、「銀行さん」と呼んで距離を置く田宮の処遇かも知れない。そして、右へ倣(なら)えとばかりに距離を置く部下の存在である。このような状況で田宮電機の経営状態は悪化していた。

 

近藤は東京中央銀行京橋支店の古里(こざと)に3000万円の融資を申し入れているが、3週間経(た)っても古里は融資の稟議書(りんぎしょ)を書くのを渋っていた。伊勢島ホテルを京橋支店で担当していた男である。成果を挙げられず会社へ戻った近藤社長の田宮と自分の部下である総務課長野田の両方から叱責(しっせき)され、近藤はコールタールがまた1ミリ、自分の脳を侵食するのを感じた。大阪でマイホームの手付金を払った直後に東京転勤が決まったことで家族に精神的な負担を感じていたところへ、趣向先の仕事の負担が重なった。

 

経理資料を見せようとしない野田の態度を不審に思った近藤は野田に気づかれないように過去5年間の決算資料を分析した。そして、棚卸管理表の在庫量に矛盾があることに気づき、二重帳簿の存在も発見した。近藤の質問に野田はしらばくれ、田宮も横槍を入れてきたが、長い間忘れていた闘争心の欠片(かけら)を取り戻した近藤は譲(ゆず)らない。動かぬ証拠を突きつけられた田宮と野田はついにその事実を認めた。近藤は再建計画を至急練り上げることを提案。できない時は裏帳簿(うらちょうぼ)を持って銀行に帰ると宣言する。田宮の唖然(あぜん)とした顔を眺(なが)める近藤の中で、コールタールはその姿を消した。

 

第3章 金融庁検査対策

 

半沢は伊勢島ホテルの湯浅威(ゆあさたけし)社長を訪ねた。打開策を話し合うためだ。名刺を差し出した半沢に湯浅は古い名刺を示した。10年近く前の半沢の名刺である。湯浅は、「中野頭取に、半沢次長を担当に据えてくれるよう内々頼んだのは、私だ」という。湯浅が老舗(しにせ)である大東京ホテルの企画部にいたとき、「業績悪化から主力銀行からの資金供給が厳しくなっていたなか、ほとんど取引のなかった産業中央銀行だけが、積極的に支援して窮地(きゅうち)を救ってくれた。そのときの担当者が、支援を取り付けるために銀行内部に根回し、我々の企画会議にまで出席してくれた時、私にくれたものだ」と続けた。

 

湯浅は本題に入って再建策を半沢に説明した。3か月前から国内と欧米の富裕層を主要顧客とする高級老舗ホテルからアジアへと顧客層を広げたことで、空室率が低下していることを示した。さらに、上海に本部がある大手旅行代理店と契約し、IT網を整備してインターネットで直接予約できるシステムの運用を年内に開始するなど様々な計画を明かした。運用損失の報告が遅れたことを半沢に詫(わ)びて、羽根専務の独断によるものであったことを認めた。

 

渡真利の手配で半沢は白水銀行審査部の板東洋史(ばんどうひろし)と会った。板東は伊勢島ホテルの件であることをうすうす気づいていた。半沢の問いに答えて板東は、3か月前に内部告発があったことにより伊勢島ホテルは運用の失敗によって巨額の赤字が出ていることを知ったと、融資を取り止めた理由を明かした。

 

板東にアドバイスされた半沢は運用の失敗を理由に経理部から子会社の伊勢島販売に飛ばされた戸越(とごし)に会うことにした。そのため、半沢は伊勢島ホテルを訪ねて、主要子会社の経営内容を確認することを口実にして1時間ほど質問を続けたあと、組織図と社員名簿を見たいと要求して、名簿の中に戸越茂則(しげのり)の名前を発見。銀行に戻った半沢はオンライン端末から出力された戸越の取引資料で自行の新宿支店に普通預金口座があることを知った。

 

普通預金口座の解約に現れた戸越に半沢は声を掛け、伊勢島ホテルのことを聞きたいと頼んだ。渋る戸越も半沢の強引な質問に損失が出た経緯を話し始めた。羽根専務の発案で去年の1月から総額500億円を運用するようになったこと、数十億円の損失を埋めるために羽根専務の指示で信用取引に手を出したこと、それが裏目に出て120億円の損失につながったこと、そして自分が責任を取らされたことも。さらに、昨年12月に100億円の損失が発生していたことを京橋支店の古里に話したことも明かした。

 

半沢は京橋支店の古里を訪れてその事実を確認するが古里は白(しら)を切る。一方、田宮社長と近藤は支店長の貝瀬に会って田宮電機の決算資料を説明していた。同席した古里が相変わらず暴言を吐(は)くことに耐(た)えながら近藤は、粉飾の事実を詫(わ)び、次回の決算で修正をする旨を告げるが、貝瀬は本部の融資部に報告して判断を仰(あお)ぐとして取りつく島がない。

 

帰宅する近藤の姿を確認した野田は経理ソフトを立ち上げて目的の書類を印刷し、密かに作成したスペア鍵を使って近藤の机の抽斗(ひきだし)を開け、近藤に召(め)し上げられた裏帳簿のあるページを外し、新たにプリントアウトしたものと差し替えた。そして、外したページをシュレッダーに放り込むと、社長に電話で報告した。(続く)

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