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2014年10月19日 (日)

池井戸潤著「オレたちバブル入行組」を読む

オレたち花のバブル組」とは順序が逆になりましたが、テレビドラマ「半沢直樹」の前半(第1話から第5話)に相当する本書(2004年文芸春秋社刊)を読みました。

 

                            ☆

 

バブル経済がピークを迎える直前の1987年に人気が高い都市銀行の就職戦線を突破して産業中央銀行に就職が内定するまでを描いた「序章 就職戦線」に続く「第1章 無責任論」では16年後に話が飛ぶ。東京第一銀行との合併により名前が変わった東京中央銀行大阪西支店の融資課長に昇進した半沢直樹が支店長の浅野匡(ただす)と副支店長の江島浩、および担当の中西の4人で焦げ付きそうな融資5億円についての回収策を協議するシーンで始まった。粉飾決算をしていた融資先の西大阪スチールから融資金を回収するのは困難であることは明らかである上に、ほぼ全額が信用貸し(担保のない融資)なのである。

 

この融資は浅野が巧名(こうみょう)欲しさに強引に決めた案件であり、半沢には融資を断りたい相手であり、浅野の暴走を止められなかった責任があるだけである。しかし、江島は粉飾を見破れなかったとして半沢ひとりに責任があるかのように言うのである。運転資金を融資した4か月後に出された決算書では突然赤字が計上されたのだ。融資する段階では約1億円の黒字になるはずであった。決算書を精査すると売り上げが急減していた。大手顧客の増産計画により注文が増えると期待して5年前に10億円を投資して第2工場を建設したにもかかわらず、その増産計画は流れたことで過剰債務を負ったことで資金繰りが悪化し、さらに景気低迷で業績が悪化していたのである。

 

西大阪スチールは関西シティ銀行との一行取引を堅持してきた会社である。資金の調達先を確保するため、社長の東田満の指示で在庫を調整するだけではなく、架空売上げを計上し、人件費などの固定費を大きく誤魔化した二重帳簿が作成されたのである。半沢の鋭い追及で同社の経理課長波野は粉飾を認め、赤字額は2億円を超えて債務超過に転落していることを半沢に明かした。東田から連絡をくれるように波野に再三再四要求するが東田からは音沙汰がない。しびれを切らした半沢は社長室いる東田のもとへ駆けつけるが、東田は木で鼻をくくったような対応である。そして1か月後に西大阪スチールは関西シティ銀行立売堀(いたちぼり)支店で第1回不渡りを出す。

 

「第2章 バブル入行組」では、半沢をはじめとする債権者たちは債権を回収しようと東田を探すが、姿をくらました東田の行方は分からない。同期入社で融資部企画グループ調査役である渡真利(とまり)から浅野支店長が根回しをしていることを教えられる。半沢の能力不足により与信判断がおざなりにしたことが原因にされそうだともいう。そして、西大阪スチールの破産申し立てが裁判所に受理されて法的整理が始まった日に本店の融資部から西大阪スチールの貸し倒れについてヒアリングしたいとの通知が半沢と部下の中西のもとに届けられた。中西に続いてヒアリング会場に入った半沢は非を認めさせようとする融資部(次長など)と同席した人事部次長を相手に一歩も譲らず、面談は中途半端なまま打ち切られた。

 

西大阪支店の自席に戻ると、課長代理の垣内が一枚の伝票を差しだした。営業課の山村課長代理が偶然に見つけた振込依頼票のコピーで、東田満が亜細亜リゾート開発という会社に今年4月に振り込んだ5000万円に関するものである。その会社は海外の不動産投資を手掛けているデベロッパーであることも垣内は調べていた。

 

「第3章 コークス畑と庶務行員」で、一晩考えた半沢は西大阪スチールの経理課長であった波野吉弘を訪ねることにした。波野は実家が経営する波野商店の事務所に向かった。東田の秘密を探るのが目的である。しかし、波野は「知らぬ存ぜぬ」の一点張りで、東田の振り込みについての情報は何も得られない。次いで訪れた亜細亜リゾート開発の御堂筋にある直営店舗で東田が額入したのはハワイのマウイ島にある一戸建ての別荘であることを半沢は突き止めた。

 

本店融資部のヒアリングで半沢にやり込められた人事部の小木曽次長の横槍で西大阪支店が裁量臨店を受けることになった。裁量臨店とは融資部が支店に赴いて行う貸し出し内容の検査である。その狙いは融資課長である半沢の粗探(あらさが)しであることは明らかである。そして、裁量臨店にはなぜか小木曽次長が同行してきた。初日の検査が終了したあとの検討会では、重要な書類が何点も保存されていないと重箱の隅をつつくような指摘を受け、評価は不合格のD(5段階の下から2番目)であった。2日目も同じような指摘を受けると、半沢はついに反論に出た。そして庶務行員の一人を呼んで、昼休みに小木曽次長が書類を抜き取るところを目撃したことを証言させた。その証言通り、小木曽のカバンから紛失して書類の束が出てきたのである。小木曽の不正行為に対して人事部長名で謝罪文が届き、2日までで裁量臨店は中止され、初日の評価は取り消された。

 

後半の「第4章 非護送船団」「第5章 黒花」「第6章 銀行回路」「第7章 水族館日和」では、西大阪スチールの破産で連鎖倒産した竹下金属社長の竹下清彦と意気投合した半沢が隠された事実を次々と暴いて行きますが、ネタバレになりますからここでは割愛します。そして、「終章 嘘と新型ネジ」では、就職が決まった時の父親との会話をはさんで、融資額の5億円を回収した半沢は本店営業二部次長として栄転した時の同期行員渡真利との会話で物語はエンディングを迎えます。

 

                            ☆

 

バブル経済が最盛期になる時に一流銀行に就職した主人公が官僚的な組織の中で破天荒な言動をする物語です。これは著者自身あるいは同僚行員などの実体験をベースに、小説として面白くする脚色が施されたと思われます。団塊世代の走りである私には、本書の序章に描かれたバブル期の就職戦線を興味深く読みました。そして、実際の銀行員が本書の主人公のように組織と上司の指示を無視して行動できるかは大いに疑問ですが、主人公が協力者と力を合わせて意外な事実を次から次へと突き止めて行くプロセスは「オレたち花のバブル組」と同様に読者を惹(ひ)きつけて離しません。半沢直樹シリーズの第3作「ロスジェネの逆襲」への期待がさらに高まりました。

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