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2016年2月13日 (土)

日銀による「異次元規模の量的緩和」と「マイナス金利」の功罪を考える

日銀が2013年に始めた「量的緩和」とは、デフレ経済から脱却して緩やかなインフレ状況である消費者物価の前年比上昇率2%をできるだけ早期に実現するため量的緩和である「マネタリーベース(日本銀行が世の中に直接的に供給するお金)」の拡大および質的緩和と呼ばれる「長期国債・ETFJ-REIT」の購入・保有額を拡大するというものでした。いずれも実質的な金利を引き下げる効果を狙ったもので、それが民間需要を刺激することを期待したのです。事実、これにより2015年の半ばまで為替相場で円安と株価では株高という日本経済にとって望ましい状況が生まれました。しかし、この株高はアベノミクスに期待した海外投資機関が主導したもので、実体経済の改善以上にかさ上げされており、外的要因に左右されやすいものでした。

 

その環境下、中国経済の失速が顕在化した上、原油価格の長期低落傾向が顕著になりました。これにより産油国を含む海外投資機関が昨年後半に入ると日本の株式市場から資金を引き揚げ始めたのです。加えて、米国の連邦準備制度理事会(FRB)による金利引き上げが年末に発表されたことと、欧州の金融機関がマイナス金利の影響を受けて収益が悪化しました。特に、優等生と言われていたドイツでは大手銀行(ドイツ銀行)の債務超過懸念が年明けから噂され始めたのです。ドイツ政府によるマイナス金利政策と経営難に遭遇(そうぐう)したフォルクスワーゲン社へ1兆円を超える融資をしたことがその主な原因であると見られています。これにより経営を不安視された欧州の金融機関は大幅な株安に見舞われ、それが米国に波及し、日本の株式市場も先行きへの弱気が支配的になり、2月12日の終値はついに1万5000円の大台を割り込み、1万4952.61円まで急落しました。私の素人予測を時期と株価の両面で超える(弱気観測を上回る)ハイペースでした。

 

日銀は銀行が日銀に預ける当座預金(超過準備預金)に「0.1%のマイナス金利」を2月16日から適用することを1月29日に発表しました。この適用日以前に預けられた当座預金(準備預金と超過準備預金)には適用されませんが、日本では「マイナス金利」は実施されることはないとの見方が支配的であり、大きなサプライズ(劇薬)と受け止められて株価の上昇と円安への動きが出ましたが、わずか2営業日で発表前の状態に戻っただけではなく、株価の急落と円高の傾向に歯止めが掛からなくなりました。日銀総裁は必要と認めれば「さらなるマイナス金利」もありうると説明しました。欧州で「マイナス金利」が市場の安定化と改善にほとんど効果がない状況にあることは分かっていたはずですが、なぜ「マイナス金利」を採用したのでしょうか。

 

その理由の一つが「量的緩和」の手詰まり感(限界が見えてきた)ことがあるようです。これを市場に見透(みす)かされたくない心理が働いたのかもしれません。あるいは欧州と日本の環境が異なるから、「マイナス金利」の良い効果が日本では期待できると考えたのでしょうか。それとも膨(ふく)れ上がった国債の利払いをゼロあるいはマイナスにする深慮遠謀(しんりょえんぼう)でしょうか。利払いから解放されれば、国債をいくら発行しても怖(こわ)くないのです。つまり、無利息で借金ができるという都合の良い状況が生まれるのです。

 

ところが、意外なことに銀行をはじめとする金融機関は一斉に国債を買い始めたのです。満期まで持っていると損失が出ると分かっている国債を金融機関はなぜ買うのでしょうか。考えられるのは他に適当な(安全な)投資先・融資先がないため、安全性が保障されている国債を買っておけば、当面は安心できるのです。それに加えて、日銀はその方針としていつでも国債を銀行から買ってくれますから、国債が利益を確保できる価格になればその時に日銀へ売却すれば良いのです。この展開を日銀が事前に読みきっていたかどうかは不明ですが、為替と株価は今のところ日銀が期待する方向とは逆方向へ進んでいます。数ヶ月単位あるいは年単位で見れば日銀の狙いが実現するかもしれませんが、恐らく日銀の政策だけでは世界の金融市場を動かすことは困難でしょう。さらに、米国のFRB議長は再利上げに慎重な考えを今月の議会証言で明らかにしました。欧州や中国だけではなく約7年間も好調が続いた米国経済も伸び悩みを見せ始める可能性を示唆(しさ)したのです。この証言はドル安・円高基調が続く可能性を高めることになりました。

 

先の記事で紹介しましたように、政府機関が金融機関を通して株式、実際は指数連動型上場投資信託受益権(ETF)と不動産投資法人投資口(J-REIT)を購入して株価を上げることは限界に近く、今年に入って含み損が積み上がっていますから、有効な株価維持策にはなりえないでしょう。円高の解消には政府が為替介入する方法もありますが、各国が通貨安競争をしている状況にあっては、露骨(ろこつ)な介入をすると他国から批判される恐れがあります。原油安で日本の国際収支が黒字化していることも円高要因です。日銀はさらなるマイナス金利へと突き進むのでしょうか。日銀の金融政策に疑心暗鬼になっている市場関係者と対話しながらの舵(かじ)取りは極めて難しい状況にあると思います。強気の発言だけではなく、米国のFRB議長のように丁寧(ていねい)な説明が求められるでしょう。金融政策は一旦始めると、(何かと同じで)それを止めること(出口戦略とタイミング)は極めて難しいようです。

 

これからは一本足打法に陥っているアベノミクス(第一次)は日銀による「大胆な金融政策」とそれに対する市場の反応(つまりマネーゲム)だけではなく、これまで有言不実行(空約束)であった政府による他の二本足である「機動的な財政政策」(消費の足かせとなっている消費税再増税の実施を凍結することを含む)と「民間投資を喚起する成長戦略」についても初心を忘れずに(看板を掛けかえるのではなく)施策(しさく)を迅速(じんそく)かつ積極的に打ち出す必要があると考えます。いずれにせよ、これからの経済政策と経済動向からは目が離せません。

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