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2016年3月17日 (木)

携帯電話産業は斜陽産業化するのか?

日常生活に欠かせないもの、つまりコモディティー化した携帯電話は曲がり角に差し掛かっているようです。契約件数は1億5000万を超えて1人当たりの携帯電話が1台から2台へと増加する状況が進展しています。まさに順風満帆(じゅんぷうまんぱん)に見える状況ですが、携帯電話業界(キャリアである携帯電話会社と携帯電話端末のメーカー)は厳しい環境に包まれつつあるようです。どういうことでしょうか? 携帯電話は日常生活に必要不可欠な存在ですが、過去のように黙っていても客が殺到する特別な存在(産業)ではなくなっているのです。

 

携帯電話会社(キャリア)の動向を見ると経営の多角化が目立ちます。電力の自由化に対応したセット販売、物品の通販、保険・住宅ローンの取り扱いなどによる顧客の囲い込み戦略が目立ち始めたのです。厳しい市場環境にある家電量販店の動きに追従するようにも見えます。なぜでしょう。それは明らかです。携帯電話サービスに付加価値が増えなくなったことで、消費者は携帯電話の料金に厳しくなりつつあり、慎重な姿勢に転じつつあるのです。

 

さらに、政府は携帯電話会社が実施している新規端末の実質無料化が「不公正な料金体制の元凶(げんきょう)である」として携帯電話各社に見直しを指導しました。電波免許を通じて絶大な影響力を持つ政府(総務省)の意向に逆らうのは得策ではないと考えた携帯電話各社は横並びで新しい料金体系、つまり利用量(特にデータ)が少ない利用者向けに安い料金メニューを順次実施すると発表しました。一見望ましい動き(朗報)と思われますが、データ通信(つまりインターネット)を利用することが少ない加入者は比較的少数であり(この恩恵を受ける加入者は限られ)、新しい料金メニューに移行する加入者は限定的と思われます。

 

一方、機種変更に積極的であった加入者が新しい端末に切り替えることに慎重になったことで、携帯電話産業(特に携帯電話端末を製造するメーカー)に大きな打撃を与え始めたのです。そして、携帯電話会社は政府の指導を逆手に取る戦略、つまり新規端末の実質無料化のために携帯電話販売店に支払っていた販売奨励金(しょうれいきん)を減らすことで収益(つまり増益)を確保することを考えたのです。これにより、携帯電話会社には利益を増大させるチャンスとなるのに対して、大多数の加入者にはさしたる恩恵がないどころか、新規端末に切り替える(機種変更する)上でのハードルが高くなったのです。

 

所有する端末が寿命を迎えるまで利用し続けることはエコの観点からは確かに望ましいのですが、携帯電話業界・関連業界と利用者にとって望ましいことかどうかは疑問です。経済成長が必要な日本にとっても同様です。この影響は携帯電話端末を製造・販売する企業にとっては死活問題です。ちなみに、日本における新規端末の販売台数は買い替えサイクルの長期化により、この数年減り続けており(2015年は約3500万台、スマホの比率は約77%)、シェアはアップル社が40%強と突出し、複数の国内メーカーの合計が50%強、その他海外メーカーは1%以下(皆無に近い)なのです。特に携帯電話会社によって優遇(端末価格が高額であるため高額な販売奨励金を提供)されているアップル社製品に圧倒された国内メーカーには恵みの雨(実際は焼け石に水)かもしれません。

 

参考までに、キャリア別のシェア(2015年6月現在)を紹介します。トップのNTTドコモが約43%(前年比1ポイント増)、2位のau(KDDI)は28.8%(前年比0.5ポイント増)、3位のソフトバンクは約28%(前年比1.3ポイント減)、MVNO(仮想移動体通信事業者)は約7%(1.2ポイント増)とシェア争いは一段落しています。

 

2016年のポイントは低料金メニューからいわゆる「2年縛(しば)り」へと移ると思われます。解約がしやすくなることから、昨年始まったSIMロックフリー(携帯電話会社を問わない端末)の義務化とともに、携帯電話会社間を移動することが容易になります。携帯電話端末を携帯電話会社が販売する日本独自の携帯事情から、携帯電話端末と携帯電話サービスの分業へと抜本的な転換が生まれるかどうかが注目されます。ただし、国内の携帯電話会社に依存して成長した(ガラパゴス携帯電話端末を作り上げた)日本の携帯電話端末メーカーには国内市場しか残されておらず、不調が伝えられる韓国のサムスンに先行する形で、その斜陽化はもはや避けられない状況にあるのです。

 

このままの状況が続くと、携帯電話会社の寡占化(かせんか)は維持され(つまり電力会社と同様に高コスト体質になり)、一方携帯電話端末についてはわが家の固定電話と同様に、日本メーカーのブランドでありながら中国製(Made in China )になることも考えられます。政府が電波と通信サービスを監督するからといっても、ビジネス感覚のない政府が主導する産業政策や政府が民間による通信サービスの料金に干渉することは、良い結果が得られることにつながるはと思われません。政府はあくまでも企業間の質的な競争を促進することが求められていると考えます。

 

事実、2012年から2015年にかけて買い替えサイクルの長期化によって18%強も減少してきた携帯電話端末の出荷台数(フィーチャーフォンはほぼ半減、スマホは10%弱の減少)の傾向に今回の「新規端末の実質無料化見直し」による買い替え需要の減少が加わり、今年に入って携帯電話端末の販売量が顕著に減少し始めています。携帯電話サービスはサービスが多様化することでこれからも加入者数が増加し続けると考えられますが、携帯電話の普及と人口減少によって加入者数が減少している固定電話(その内訳は従来タイプがピーク時の半分近くに減少し、残りの半分弱がIP電話)と同様に、将来は人口減少の速度が速まれば携帯電話会社(キャリア)も衰退産業になる可能性は否定できません。

 

                          ☆

 

以下は本題からそれますが、他の業界についても概観してみます。保護政策が主導された農業と救済型の企業再編が行われた半導体製造業は国際競争力を低下させ、タクシー業界のように需要を無視した誤った量的規制緩和(タクシーの台数が急増)が業界を疲弊(ひへい)させることになったことはすでに実証済みのことです。一方、土木、建設、運送、資材、内装・電気工事など政府が衰退産業に指定していた内需型産業の多くが、公共事業による需要が急増したことで、逆に需要を消化しきれないほどの好調さを呈(てい)しています。

 

また、原子力発電がなければ日本経済は成り立たないと喧伝(けんでん)する人たち(主に電力業界と御用学者)が多く、政府も休止している原子力発電所の再稼働に積極的ですが、この数年間にわたって電力需要のピークに問題なく対応できており、原油価格も当面安値水準が続くと見られます。事実、日本の総発電量(総電力需要)はエネルギー利用の効率化と節電意識の高まりで2007年をピークに年々減少しているのです。日本の電力会社が原子力発電に拘(こだわ)っているのは、既存の原子力発電所(米仏に次いで世界3位の数を誇る)による直接的な発電コストが他の発電方法に比べて安い(経済産業省の試算)からであり、事故や災害が発生した場合には政府が対応してくれる(自己負担は少ない)との期待もあるからなのです。

 

日本のこの考えに対して、米国のシンクタンクは2014年に「原子力発電コストは世界平均において1キロワット時当たり平均14セント(約15円)」で、太陽光発電とほぼ同レベルであり、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8.3セント(約9円)よりもかなり高コスト」であるとの試算を出しています。また、米国のエネルギー省もほぼ同様の試算を発表しています。事実、海外(特に欧州)では原子力による発電量を風力発電が凌駕(りょうが)し、原子力発電に拘(こだわ)っている国は原子力発電所の輸出に積極的なフランス・ロシア・、韓国、および電力需要が急増する中国、そして、すでに保有する大量の老朽(ろうきゅう)化した原子力発電所の運転期間延長(60年またはそれ以上へ)を進めるアメリカに限られるようです。 

 

原子力発電の比率が80%弱と突出して世界一高いフランス(日本は25%弱、ただし現在は大半が休止中で0%に近い)は、日本と同様にエネルギー資源が乏しいことで原子力発電に依存してきましたが、EUの方針にしたがって太陽光・風力などの再生可能エネルギーによる発電を増やし、原子力発電の比率を50%まで下げる方針を2010年に打ち出しました。他国に先行して原子力発電を全廃する方針を打ち出したドイツに対して、『フランスの原子力発電所で発電された電力を購入している』、と非難する意見がありましたが、これは電力の安定供給を維持するため欧州諸国が相互に電力を供給し合っているからなのです。実は、ドイツがフランスへ供給している電力量はフランスがドイツに供給している電力量よりも圧倒的に多いのです。ですから、上記の指摘は原子力発電を擁護(ようご)したい人の恣意的(しいてき)なものと思われます。

 

つまり、業界の立場に副(そ)った政府の産業政策が長中期的な国内需要の変化に対応できていないこと、いまだには蔓延(はびこ)る官製談合の存在、さらには労働力のミスマッチによる人手不足が、日本経済の供給能力を落ち込ませたことなどの事実に留意する必要があります。

 

                           ☆ 

2016_03180002今回紹介する草花はサクラソウ科サクラソウ属の園芸植物(一年草)「プリムラ・ジュリアンアリー」です。「プリムラ・ジュリアン」とは、ヨーロッパ原産で大輪の「プリムラ・ポリアンサ」とコーカサス原産の矮性種「プリムラ・ジュリエ」を交配させた小形プリムラです。花色も豊富で、黄・赤・赤紫・ピンク・橙・青・白・黄・複色などがあるそうですから、丸形のプランターなどに色彩を工夫(カラーコーディネーション)して寄せ植えすると楽しいと思います。
 
「プリムラ・ジュリアンアリー」は晩秋(11月)から春先(3月)までビビッドカラー(鮮やかな原色)の花が元気に咲きます。ちなみに、花言葉は永続する愛情・青春の喜びと悲しみ・若き日の躍動と輝き・運命を開く・快活。

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