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2016年4月18日 (月)

「下流老人」を考える

高齢者の9割が貧困化しつつあることが問題になっているようです。 いわゆる「下流老人」が増加するリスクが増大しているのです。昨年発刊された「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」(藤田孝典著、朝日新書」で登場した造語で、『普通に暮らすことができず下流の生活を強いられる老人』という意味であり、社会福祉士の著者は『年収が400万円の人でも、将来、生活保護レベルの生活になる恐れがある」と指摘します。同書は「下流老人」に 陥る5つのパターンとして、

1)本人の病気や事故により高額な医療費がかかる

2)高齢者介護施設に入居できない

3)子どもがワーキングプアや引きこもりで親に寄りかかる

4)熟年離婚

5)認知症でも周りに頼れる家族がいない

があるといいます。その背景を分かりやすくまとめると、「収入が著しく少ない」「十分な貯蓄がない」「頼れる人間がいない」の3つになります。

 

本人の問題だけでなく家族の介護問題や息子の大学時代の奨学金を年金から返し続けなければならない問題を併せて抱える老人も少なくないといいます。これらの問題が切っかけとなり、労働・家族・住居を失い、金銭を失い、ついには野宿という究極の貧困状態に陥るリスクを抱える人が増加しているのです。落ちるときは一段、また一段と落ちるのですが、いったん最下段まで落ちると、その状況から簡単には上に上がれないのです。たとえば、住所がないとハローワークで職を得にくく、生活保護を受けるのに時間がかかることもあるようです。また、経済的に困った状況にあっても、過去の生活から生まれた自尊心(プライド)や他人に迷惑を掛けたくないとの思いから生活保護の申請をしないか、申請しても追い返されて野宿になる高齢者もいるそうです。

 

つまり、失われた20年と2008年のリーマン・ショックを経た日本は、一度転落するとやり直しのきかない「滑り台社会」になったと言われ、ごくふつうの暮らしをしていた会社員が、突然「下流」に滑り落ちることが十分あると同書は警鐘を鳴らしています。高齢者の8割は「年金」しか収入がなく、老後の暮らしを年金に頼るしかないのです。しかし、年金の支給額も徐々に下がっていますし、介護保険の負担が増加していますから、中高年の人は年金問題を注意深く考える必要があるというのです。

 

そして、余裕がある間に預貯金や持ち家などの資産リスクを分散することを勧めています。給与以外の収入を確保したり、定年後も仕事を続けたりして、リスク低減策を取っておくことが、貧困を回避するのに役立つと著者はいいます。いざ危機が迫ったときには頼れる社会保障制度を知っておくようにと著者はアドバイスします。また、社会にとっても、貧困予備軍を放置すると、いずれ貧困層が厚くなり、税金と社会コストが上がり、貧困状態が長く続けば健康にも影響するので、医療費も増えると指摘します。この状況に陥ることを少しでも避けるためには、将来生活保護を支給するのか、65歳になったら最低保障年金を支給するのか、少なくとも基礎年金部分には100%税を入れるべきだと著者は提言します。

 

                          ☆

 

本書を補足するためシニア世代の収入について考察してみました。厚生労働省が発表した平成27年度の年金額をまず紹介します。国民年金から支給される老齢基礎年金は、20歳から60歳まで40年間にわたって保険料を支払った人で、1人1か月6万5008円。また、厚生年金から夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額として22万1507円とのこと。

 

この標準的なモデル家族(夫婦)は、夫が平均的収入(賞与含む平均標準報酬の月額換算)は42.8万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が平成27年度に年金を受け取り始める場合の給付水準です。つまり、年収が約500万円だった世帯をモデルとして試算されているのです。

 

その結果、国民年金のみの人は年収が78万円、厚生年金の人は266万円です。前者は生活保護者に支給される月額13.5万円(東京都在住の50歳代単身者、無税・医療費免除)の半分にしかなりませんから、文化的な生活を送るには不十分な金額であることは明らかです。

 

また、後者は前者に比べて3倍強で恵まれているようですが、現役時代の収入から半減するのです。そして、生活保護者に支給される金額の約1.7倍の水準と言えますが、著者が指摘するような諸問題が一つでも発生すれば生活水準は一気に低下します。したがって、大半の年金受給者は「下流老人」になるリスクがあることは否定できません。

 

ところが『「下流老人」の「1億総下流」は嘘』 という記事が月間誌"Wedge"JR東海グループの出版社が発行、政財界のリーダー層・企業の経営者層・富裕層が主な読者)の最近号に掲載されました。電子版で読むと、その主旨は次のようです。『日本にはリッチな人が多いことを、年収ではなく、資産額に着目して論じます。金融資産(2013年の調査)で1億円を超える富裕層が約100万世帯、5000万円以上(1億円以下)が約315万世帯であるのに対し、生活保護世帯数(2015年の調査)は約163万と半分にしか過ぎないと言うのです。そして、「あたかも日本人全員が下流になる」と言うのは暴言である』 と「下流老人」における指摘を切り捨てています。

 

どちらの意見に共感できるかの判断は皆さんにお任せしますが、私は「下流老人」がすなわち「生活保護者」と決めつける"Wedge"の記事の方が暴論である(論点をすり替えている)と考えます。上記したような異論はありますが、本書は現在の日本社会における最大の問題ともいえる、「少子高齢化による社会保障制度の危機」を考えさせる良書だと思いました。

 

最後に、アメリカで5年間にわたって生活を通して得た経験と知識に基づく私見です。競争社会(弱肉強食が原則)といわれるアメリカにおける年金制度と経済的困窮者への援助は、日本の現状よりもはるかに整備されている(手厚い)と感じます。加えてキリスト教会と言うセイフティネットもあるのです。さまざまな見直しが継続的に行われてきたことがその背景にあるようです。一方、世界一ともいえる少子高齢化社会になった日本は、改革と改善が遅きに失した感がありますが、手を拱(こまね)いていては事態が悪化するばかりでしょう。近いうちに関連する内容で記事を書きたい思います。

 

                          ☆

 

2016_04170006冬の寒さに耐えたサフィニア・マックスがわが家で多数の紫(パープル)色の花を咲かせています。

サフィニアは南アメリカ原産のペチュニア(ナス科ツクバネアサガオ属)を改良してサントリーが1989年に生みだしたペチュニアの新種(多年草)です。花びらが薄く雨と寒さに弱いというペチュニアの弱点を克服し、枝分かれを多くして多くの花が咲くよう改良されました。このため手軽に育てることができます。

 

また、サフィニアは垂れ下がる性質があるため、ハンギングバスケットやベランダの手すりなどを飾るのにはもってこいです。ちなみに、サフィニア(Surfinia)は、枝が波打つように広がる様子から、英語のサーフィン(Surfing)とペチュニア(Petunia)の合成語とのこと。

 

花の色は赤・紫・黄・白・ピンクの5種類があり、花言葉は「咲きたての笑顔」ですが、わが家のサフィニア・マックスはサフィニアの中でも最も草丈が高く、ボリュームのある株に特徴があります。順調に育てれば4月から10月まで半年間にわたって花を楽しむことができます。

 

そのために注意する点(神経質になる必要はありません)は、日当たりの良い場所を選ぶこと、緩効性化成肥料を混ぜた用土に植えて毎週液体肥料を追肥すること、朝夕の水やりを欠かさないこと、花に水をかけないこと、摘心(てきしん)と花がら摘(つ)みを行うこと、伸びた茎を切り戻すこと、ナス科の植物の後に植えない(連作しない)ことです。

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