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2016年4月27日 (水)

新たな「下流青年」が生まれているのか?

下流老人」の記事を書きながら、下流に陥(おちい)るのはなにも老人だけではなく、若い世代も下流になるリスクがさらに高まったことに思いが至りました。失われた20年間を振り返ると、前途洋々であるはずの若い世代(青年)も様々なリスクが待ち受けていました。つい最近までは、例え大学を出ていても就職難(氷河期)で非正規社員やアルバイトの道しか選べなかった人が多数いました。ちなみに、厚生労働省が昨年11月に発表した「就業形態の多様化に関する総合実態調査」で4割以上の就業者が非正規社員であることが明らかになっています。つまり、1990年にはその比率が20%でしたが、35年後には比率が倍増したのです。

 

その主要因は2013年に施行された「改正高年齢者雇用安定法」です。厚生年金の受給開始年齢が同年に引き上げられたことに対応し、定年後に給料がなくなっても年金を受け取れない人が増えることを防ぐ目的で作られた法律です。これにより定年退職者の再雇用者の割合は確実に増加し、労働者にとって自発的な「非正規」雇用が増加している可能性があります。それに加えて、新卒時の就職活動で氷河期にぶつかってしまった世代が非正規として固定化されたままになっており、2015年の労働者派遣法の改正で企業が賃金(労務費)を節約する目的で非正規社員の雇用を増やす傾向がさらに強まりました。

 

しかし、今年に入って来年の新卒者は売り手市場であるとの報道が目立つようになりました。企業が正社員を確保しようとする意欲が高まっているそうです。なかでも、相対的に優秀な女子学生を採用しようとする企業が増えているといわれます。この背景には団塊(だんかい)世代の大半が退職したことで人手不足が顕在化し、つまり世代交代が進む気運がやっと出はじめて、20年以上続いた就職氷河期が春を迎え始めたと思われます。具体的には、全日空、スターバックス・コーヒー、ユニクロ、一部の企業は非正規社員を正規社員として登用すると発表しました。人手不足の解消あるいは企業の競争力強化がその目的とされます。

 

とは言っても、手放しで喜べない問題が出現しています。それはアメリカで、過去のサブプライムローン(返済困難者への押し込み貸付)と同様、深刻な社会問題になっていた「奨学金貧乏」が日本でも顕在化したのです。つまり、学生時代に借りた奨学金を就職後に返済できなくなる人が急増しているのです。その原因の一つは大学における入学金と授業料の高騰です。平成25年に文部科学省が行った調査によると、私立大文系の初年度納付金は約115万円、同じく理系は約150万円、私大医歯系は467万円と高額です。

 

在学中に必要な納付金はといえば、国立大が215万円、公立大が216万円、私立大文系が361万円、私立大理系が493万円、私立大医歯系(6年間)が2177万円と天文学的ともいえるほどの高額です。昭和50年(1975年)には私立大/国立大は5.1倍であったものが、昭和51年(1976年)に2.3倍と差が半減して現在に至っています。その背景は、国による運営費交付金が大幅に減らされたことがあり、しかもこの傾向(国公立大学の納付金上昇)は今後も続くとみられます。ちなみに、アメリカの大学を出た娘の事例からみて、この水準は10年前のアメリカの大学における納付金の水準(州立大学では州内出身者は約半額)です。全寮制が一般的なアメリカではこの他に寮費と食費が年間100万円ほど必要でした。

 

親世代の収入が増えない(あるいは減少する)ことでアルバイトに精をだす学生が増えるとともに、奨学金の受給を希望する学生が増えているそうです。日本学生支援機構(JASSO)は希望者に貸与型奨学金を提供しています。ちなみに、その前身である日本育英会は成績が優秀で、かつ両親の収入が少ない学生にだけに奨学金を支給していました。特に成績が優秀な学生には一部が給付(返済不要)となる特別奨学金制度も設けていましたが、いつの間にかその制度は廃止されました。現在は、成績優秀で経済的に困窮している学生向けの第1種(無利息、月額3-.4万円)と経済的に困窮している学生向けの第2種(最大3%の有利息、3-12万円、医歯系は+4万円が可)があり、一見充実しているように見えます。しかし、比較的容易(経済的理由が主な条件)に受給できる第2種に問題があると思われます。

 

例えば、月10万円の奨学金を受給したとすると、4年間で480万円を借りることになり、卒業すると直ちに利息が付くようになります。もし、利息が上限の3%であれば、毎年14.4万円の利息が積み上がります。10年計画で返済する場合には元本の返済が月額4万円(年額48万円)、それに利息も返済しなければなりません。正確な計算は省略しますが、最初のうちは元本と利息を合計した62.4万円を返却する必要があります。もし、元本分(年に48万円)だけを返済していると、元本は33.7万円しか減少しないため、返済期間は10年よりかなり長くなります。

 

日本学生支援機構のhpに掲載されている試算では、月10万円(4年間で480万円)の貸与を受けると、20年間で返済する場合は毎月26,914円(総額約総額646万円)を返済することになるようです。万一、正当な理由なしに返済が滞ると、金融事故情報に登録されて新たなローンが組めなくなる可能性があるようですから、返済計画に十分留意する必要があります。

 

私の時代(半世紀前)には、高校生の特別貸与奨学金が月額3000円(授業料は月額750円)、大学生の場合は月額5000円(授業料は月額1000円、入学金は1万円)でした。(注、一般貸与奨学金は高校生が月額1500円、大学生が月額3000円) 受給金額は高校時代に10.8万円、大学で24万円の計34.8万円でしたが、給付(特別貸与奨学金と一般貸与奨学金の差)の割合が40-50%程度あるため返済する元本は約20万円で、利息もなかったと思います。そして、企業に就職して返済(月額約1700円)を開始した時の初任給は3万円程度と低額でしたが、その後は徐々に昇給したことで、10年間でなんとか無事に完済することができました。

 

ちなみに、当時は大学への進学率が20%強でしたが、現在は50%を上回っているようです。進学率が上昇したことで学生時代に十分な学力をつけないまま社会へ出る人が増えているようです。学力の低い大学生は、就職時だけでなく、就職後も様々な困難に遭遇(そうぐう)するのではないかと懸念されます。ですから、この問題を改善するには返済が楽になる仕組み(給付率の増大、利息の減免)と大学教育を受ける水準にある学生だけに第2種の対象者を絞ることと、専門学校などを充実させて総合的な教育システムに組み込む必要があると考えます。余談ですが、アメリカの研究者によると、大学教育を受けた人と受けなかった人の生涯収入は一部の企業(あるいは一部の職種)を除くとほとんど差がないそうです。主な理由は高卒者は就労期間が長いためであり、その結果として大学教育を受けた人は大学教育の費用を回収することができるだけだというのです。もちろん、生涯収入は学歴だけではなく、個人差(おもに仕事をする能力)によって大きく左右されるのですが・・。

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