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2016年4月17日 (日)

勝ち組企業の凋落とお家騒動

時代はしばしば勝ち組と呼ばれる企業を生み出します。現在はといえば、トヨタ自動車(品質改善とコスト削減を徹底)、NTT グループ(圧倒的なシェア)、キャノン(国内製造を重視)など毎年大きな利益を生み出している大手企業が勝ち組として思い浮かびます。これらの企業には長い歴史があり、規模の大きさで際立っていますから安定感も抜群であり、その地位が揺らぐことは当面考えられません。一方、新興企業の場合は、そのユニークな経営によって急速に業績を伸ばしてその時代の勝ち組として注目されたものの、いつしか業績が悪化してしまう企業が目につきます。

 

最近の事例では、ユニクロ、スターバックス、日本マクドナルド、ワタミ、すき家、餃子(ぎょうざ)の王将(王将フード)など枚挙に暇いとま)がありません。業績を悪化させる最大の要因は顧客離れです。その原因はさまざまですが、共通するポイントはその企業の魅力が薄れる(あるいは消滅)することでしょう。内向きの経営方針あるいはガバナンスの不在による度重なる不祥事、商品あるいはサービスの価格と品質のバランスを軽視する利益重視の経営戦略(値上げと経費削減)、現場の状況を無視した本社の独善的な経営判断と一方的かつ理不尽な指示、過去の成功体験に浸った経営者が経営環境の変化へ適応できない、などにより顧客離れが発生して経営不振への道に迷いこむケースが見受けられます。(関連記事」:「デフレの象徴とされた商品が次々と・・」「ジレンマを考察する」「歴史に学ぶ大手企業の盛衰」)

 

スターバックスコーヒーは今も業績は良好ですが、業界トップであった顧客満足度が低下したことが注目されています。高級なイメージがあって休憩時間の短いサラリーマンや店内でパソコンを操作する営業マン(あるいは事務所外で仕事をするノマドワーカー)などには便利ですが、年配者などが落ち着いて店内に滞在できる雰囲気がないのです。最近の顧客満足度調査(サービス産業生産性協議会が行った2015年度日本版顧客満足度指数)では低価格を売りにするライバルのドトールコーヒーショップに追い抜かれ、コメダ珈琲店に追い上げられていると評価されています。

 

同じく、顧客満足度が高かった東京ディズニーリゾートも、利益を優先するために行ったキャスト(サービス要員)削減がサービスの質を低下させ、新しいアトラクションが不在であるにもかかわらず度重なる値上げを行い、集客に熱心であるあまりゲスト(入場者)が増えすぎたりゲストの質が下がったりしたことなどから、最近は全業種における顧客満足度順位が大幅に低下(2014年の2位から2015年には10位前後へ)しているようです。一方、同業のユニバーサルスタジオジャパンUSJ)ハウステンボスが、東京ディズニーリゾートと同様入場料を値上げしているにもかかわらず、来場者数を大幅に伸ばしながら顧客満足度も上げています。

 

東京ディズニーリゾートは別の調査においても、『失望する人の率が高まったことで入場者数が頭打ち(微減)』 になっています。この状況は日本マクドナルドが値上げと失望感の相乗効果で業績悪化を招(まね)いたことの経緯を連想させます。つまり、サービスの場の雰囲気(価値の一つ)は、魅力的なビジネスモデルと優秀なスタッフ店員)だけではなく、顧客も参加して創(つく)り上げるのです。ちなみに、日本マクドナルドもノマドワーカーが席を占領することで家族連れに敬遠された要因であると指摘されたことがあります。

 

一方、ファストフードではモスバーガーと吉野家HDの健闘が目立ちます。上記した日本マクドナルドと他の牛丼チェーン店が値上げすることで収益の改善を目指したのに対して、『客単価を向上するために既存商品の質をさらに高める』 という戦略を通じて成功を勝ち得た(吉野家HDは道半ばで今年度が勝負)ようです。ファストフードではこれが最大のポイントであり、ワタミと日本マクドナルドはこの対応ができなかった(不十分だった)のです。

 

最後に異業種ですが、資源開発(海外のガス田や金属鉱山の権益取得)への過大投資で赤字を計上した三菱商事と三井物産は、原子力発電分野にのめり込んだ東芝と液晶に拘(こだわ)りすぎたシャープと同様、経営判断のミスが原因であることは明白です。

 

                           ☆

 

ここからは4月に入って勃発(ぼっぱつ)した一流企業におけるお家騒動について私見を交(まじ)えて説明します。顧客満足度が業界1位で勝ち組と位置付けられるセブンイレブン・ジャパンの親会社であるセブンアイHDで驚くべきことが起きました。絶対的権力者である鈴木会長兼CEOが子会社であるセブンイレブン・ジャパンの社長兼COO を更迭する提案を、セブンアイHDの創業者と米投資会社(ともに大株主)による賛同を得られなかっただけではなく、指名・報酬委員会の承認を得られないにもかかわらず取締役会に提案しました。

 

ところが思わぬことに取締役会でも過半数の賛成票が得られず否決されてしまいました。なぜそこまで子会社の社長を更迭したかったのか(米投資会社は世襲人事が背景にあると憶測)明らかにされていません。その結果、鈴木会長兼CEOは混乱の責任を取るとして、会長兼CEOを退く意向であることを同日夜に開かれた記者会見で発表したのです。

 

自らが指名した子会社の社長兼COOが就任以来最高益を継続しているにもかかわらず、自分の期待に応えていないと糾弾(きゅうだん)。しかも、当人との会話内容まで引用して非難したのです。まさに唯我独尊! 比類なき名経営者として高く評価されてきた人物(経営手法がブラックだとの非難が一部にある)が、晩節を汚すような行動をとり、それが受け入れられないと分かると部下を口汚く罵ののし)ったことは、サラリーマンとして半生を過ごした私には大きな衝撃でした。

 

しかも、もう一つの中核企業であるイトーヨーカ堂の社長兼COO(鈴木会長兼CEOが指名)がヶ月ほど前に業績悪化の責任をとって辞任し、前社長が復帰していたのです。以前放送されたテレビ番組のインタビューでは自らの経営哲学と経営手法を自信たっぷりに話していた名経営者がただの頑固な老人になってしまったように思われたのです。歴史上の人物である豊臣秀吉の晩年にも重なります。養子姉の子)の英次(ひでつぐ)を後継者に指名朝廷から関白に任命)しておきながら、いわれなき謀反を理由(英次に乱行があったとする説もある)に流罪・切腹を命じたことです。

 

さらに、私は超一流デパート「三越」で天皇とまで呼ばれて絶大な権力者であった岡田元社長が1982年に取締役会で突然社長を解任され、「なぜだ?」と言ったとされる有名なできごとを思い出しました。ライバルを次々に排除して自らの権力を強化し、会社の経営面でも不明朗な行為(利益供与など)を行って私物化したことが理由でした。この時も社外取締役が責任を取って社長を辞任するよう事前に助言したそうですが、本人がが拒否したため、クーデターという事態に至ったとされます。

 

上記したセブンアイHDの取締役会の一週間後(15日)に指名・報酬委員会がセブンイレブンの社長をセブンアイHDの社長に昇格させる人事案を承認しました。このメンバーでもあるセブンアイHDの社長兼COO(先の委員会では更迭に賛成、その後自ら辞意を表明)もこの人事案に賛成したと伝えられます。つまり、この社長候補以外には社長を務められる人材がいないことをセブン&アイHDが認めた形です。これにともない数日後には取締役会で、ヶ月後には株主総会でこの人事案が承認される見通しになりました。

 

鈴木会長兼CEOによって多くの人材を失ったセブンアイHD(セブンイレブン、イトーヨーカ堂、そごう・西武百貨店)の経営に悪影響が出ないことと、これまでの巨大な鈴木商店から脱皮して今後とも流通業界をリードする企業として発展することを期待したと思います。まったく異なる業種ですが、お手本になる企業があるように思います。それはスティーブ・ジョブズ氏が亡くなって年半が経過した米アップル社です。スティーブ・ジョブズ氏に指名されてその後任を務めるティム・クックCEOの堅実な経営力が光ります。当初は同社製品の魅力と企業活力を失わせるのではないかとの懸念もありましたが、それは杞憂(きゆう)だったようです。いかなる優良企業もいつかはトップ経営者が交代する(せざるを得ない)状況がくることは必然なのです。

 

                          ☆

 
2016_04170003今年もわが家でクンシラン(君子蘭)が咲きました。この鉢植えも同居者が知人から譲(ゆず)り受けたものです。名前から中国原産の東洋蘭と思われがちですが、南アフリカ原産のヒガンバナ科ユリ科に分類されることもある)の常緑多年草"Clivia(クリヴィア)"に付けられた和名なのです。3月から5月にかけて豪華な花を咲かせ、その後に結実します。花の色は赤が一般的ですが、黄色や赤と黄色のツートーンカラー、斑点(はんてん)が入ったものなどがあるようです。また、艶(つ)のある濃緑色の葉が美しいことで観葉植物としても楽しめます。わが家をの君子蘭は葉の幅が広く立つように長くのび、かつ花茎も長いことから見て高性広葉系でしょう。他にはダルマ型と呼ばれる丈の低い品種、葉に斑(まだら)が入った品種もあるそうです。

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