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2016年5月 9日 (月)

「世界経済の動向予測と資産防衛術」(続編) 「複利の効用」を考える

昨年8月3日に投稿した「世界経済の動向予測と資産防衛術」の続編です。その記事に続いて、「株価の先行き」(8月23日付)、「日経平均株価の動向(フォローアップ)」(9月29日付)、「2016年の日本経済と株価の動向を考える」(1月14日付)、「日銀による異次元規模の量的緩和とマイナス金利の功罪を考える」(2月13日付)、と書いてきましたから世界・日本の経済のその後についてはこれらの記事を読んでいただくとして、今回は「資産防衛術」について少し補足したいと思います。

 

まず、資産(特に金融資産)を増やすための(時には減らす結果になる)運用方法について整理します。金融資産を運用する金融商品は元本が保証されている「貯蓄商品」と保証されていない「投資」に二分することができます。その特徴は、前者が提供する側と利用する側の両方が利益を分け合う「ウイン・ウイン商品」であり、後者は儲(もう)ける人と損する人がいる「ゼロサムゲーム」であることです。そして、これら2つの金融商品以外にもこれまであえて触れなかったギャンブル性の高い「投機」も存在します。

 

「投資」は投資先(金融商品)が長期的に成長あるいは収益を上げることを期待するものですが、「投機」は金融商品の短期・中期の価格変動に着目して運用します。株や為替の「デイトレーダー」、株・為替・作物などの「先物取引」、あるいは市場価格に影響を与えて利鞘(りざや)を稼(かせ)ぐ「機関投資家」(投機筋)の資金運用であり、素人(しろうと)には無縁の世界(手を出すべきではない分野)でしょう。最近、話題となった「ワイン投資ファンド事件」などのようにうまい話(金儲け)はこの世に存在しないのです。

 

これまでの関連記事で書いてきたことのポイントは、『①デフレ経済に陥って20数年間が経過した日本は強力な経済政策によってデフレ経済から脱却することが期待されたが、金融緩和頼み(一本足打法)は海外の影響を受けて元の木阿弥(もくあみ)になってしまったとみられる。②2月に日銀によって実施されたマイナス金利は、3か月近く経過しても目に見える効果が現れず、懸念されたように金融資産価値をも毀損(きそん)し始めているようである。』 とまとめることができます。この状況が影響したのか、久しぶりに金市場が活況を帯びています。

 

金価格は日本がバブル期にあって海外ではソ連のアフガニスタン侵攻とイラン・イラク戦争が勃発した1980年に6000円台/グラムを記録してから30年間は1000-2000円/グラムの水準で推移してきましたが、2011年には金価格が1グラム当たり4000円を回復しました。

 

その背景にはリーマンショック、ギリシャの財政不安、米国債格下げなどがあったのです。その後は、ドルベースで見ると金価格は落ち着きを取り戻しましたが、日本では円安の影響を受けて金価格が上昇して2015年には4500円台に達し、今年の2月中旬以降は4800円台の高値水準で推移しています。アラブ世界の政情不安とアメリカ経済の先行き不安が背景にあり、これからもしばらくは金価格の高値水準が続くと考えられます。

 

なお、昨年8月をピークに下落基調が続く株式市場については、繰り返しになりますので詳しくは述べませんが、当面は株式投資から距離を置いた方が安全でしょう。海外経済の悪化と円高の進展(米国のドル安政策)に加え、昨年の中頃まで主役であった海外投資家の「日本株離れ」と政府系のGPIFによる「株価下支え」が年金収支の悪化により難しくなったことなど悪材料が目白押しです。したがって、円高がさらに進行すれば、早ければ5月にも日経平均株価が15000円を割り込む可能性が考えられます。

 

                          ☆

 

さて本題です。預金金利が限りなくゼロに近づくなか、金融資産をどのように管理すれば良いのでしょうか。経済が不安定な時代は安心感のある「金の地金」(金の延べ棒であるバー)を購入すれば良いのでしょうか。一概にそうとも言えません。金というものはインフレには強いのですが、デフレには弱いのです。また、米ドルとは逆相関がありますから、米ドルが強い時は弱含みになる傾向があります。そして、購入時に消費税(現在は8%)がかかることと、業者に手数料を払う必要があるなどのマイナス要因も存在するからなのです。

 

「金の地金」の製造業者(ブランド)も東京商品取引所指定でないものは売却が困難なことがあるようです。また、金の装飾品(ジュエリー)や金硬貨(コイン)は加工費が上乗せされていますから、売却時にはその分だけ不利になります。さらには、「金の地金」を安全に保管する方法(銀行や業者の貸金庫など)を考える必要があります。それが面倒な人は金の現物を購入するのではなく、金ETF(上場投資信託)があります。この売買は株式投資に近いのですが、利回りがないうえ売買手数料と信託報酬を支払う必要があることを考慮する必要があるでしょう。

 

金融商品である「普通・定期預金」「株式投資」「債権投資」「金投資」のほとんどは単利法(期間ごとに配当あるいは金利が得られる仕組み)になっています。したがって、長期間にわたって投資してもほぼ一定のリターンしか得られないのです。現在のように超低金利の時代にはタンス預金とあまり変わりがないと言えます。しかし、長期間投資すると有利になる選択肢があります。それは複利法で利息(利回り)が得られる金融商品です。種類はそれほど多くはありませんが、代表的なものは「ゆうちょ銀行」の定額預金および3-5年満期の定期預金です。

 

半年毎の利息と元本が新たな元本になって自動的に再投資される複利法の定期預金です。預け入れ期間は10年、最初の6ヶ月間は払い戻しができませんが、それ以降は自由に払い戻し(解約)ができます。一口の金額は1000円から300万円までの決められた8種類から選ぶことができます。ただし、最初の3年間は6か月毎に金融情勢に応じて金利が変わります。現状の金利で試算すると10年間の累計で4.07%の利息が得られる見込みです。年利(単利法)に換算すると0.407%で、銀行の全国平均は年利0.025%(一部ネット銀行は0.2%と高いものもある)と比較してかなり有利と言えるでしょう。

 

複利で運用できる金融商品は他に、MMF(1か月複利の投資信託、元本割れのリスクは低い、ただしマイナス金利の導入で新規受付を中止)、半年複利である信託銀行のビッグ/ワイドと都市銀行・信用金庫などの変動金利定期、およびソニー銀行の定期預金、変額年金保険(元本と期間の保証がないものが多い自己責任型)などがあります。それぞれ特徴がありますから、自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。ただし、注意すべき点は元本が保証されていないものを選ぶと、複利効果が裏目に出て、損失が拡大するリスクがあることです。また、日銀に当座預金(超過準備預金)を預けていない農協(JA)や多くの信用金庫はマイナス金利の影響が少ないので、預金金利の引き下げも相対的に少ないようです。

 

金融機関が勧めることが多い定期的に積み立てる金融商品(株式、投資信託、純金、確定拠出年金など)への投資は、小額で始められ、一度手続きをするだけで長期間にわたって投資できる便利な投資方法ですが、そのリスクを事前に知っておく必要があります。まず、金融機関が利点だと強調することが多い「ドルコスト平均法」です。毎回一定金額を投資するため金融商品の価格(株価、基準価格、金価格など)が安い時には多めの口数を購入し、高い時には少な目に購入することになるため、平均すると購入価格が安くなるという理屈です。しかし、これは金融商品の価格があまり大きく変動しないか、あるいは上昇基調にある時は有利に働きますが、逆に下降基調にある時は損失が拡大(投資元本が目減り)してしまい、積立期間が長期にわたる場合はリスクがさらに拡大する恐れもあるのです。

 

最後に、ここでは詳しく説明しませんが、低金利時代には金利が比較的高い外貨預金は魅力的に見えますが、為替変動の影響が金利を上回ることが十分考えられますから、そのリスクに対応できる自信がない人は避けるのが無難でしょう。また、多くの投資家が株式を売却したことで株価が下落傾向にある現在は、安値で株式を購入することで、銀行預金よりもはるかに高利回りを享受(きょうじゅ)するチャンスでもあります。

 

しかし、安値(底値)のタイミングを判断するのが大変難しいため、良好な配当率を長期間維持する優良銘柄の株価が上昇基調に転じたタイミングで購入し、しかも長期間保有するのでなければ、やはりリスクが大きな金融商品といえます。そして、面倒なことは考えたくないが、少しでもお金を増やしたいと考える人には、マイナス金利下でも元本と最低金利0.05%(多くの銀行の普通預金金利は0.001%)が保証される「個人向け国債」(3年あるいは5年の固定金利、発行後1年から途中解約可能)がいいかもしれません。

 

先に投稿した「世界経済の動向予測と資産防衛術」と「株価の先行き」の記事に書きましたように、金融資産を増やそうと欲を出すのではなく、金融資産を減らさない安全な投資に心がけることを私はお勧めしたいと思います。安全な金融資産を運用する基本はやはり、「長期」「分散」「複利」の3つなのです。なお、今回はほとんど触れなかった「分散」についてもリスクを軽減するために不可欠と考えます。そして、今年になって突入した超低金利(マイナス金利)時代には絶対安心・安全な金融機関は存在しなくなると考えられます。

 

例えば、「ゆうちょ銀行」は今年4月から預入限度額がこれまでの1000万円から1300万円へと拡大しました。しかし、国債の購入(100兆円超)と日銀の当座預金に依存してきた「ゆうちょ銀行」は、企業などへの融資経験がないことで、177兆円の預金残高の運用をどうするのかが大きな課題です。政府機関のように指数連動型上場投資信託受益権(ETF)や不動産投資法人投資口(J-REIT)を購入する方針に転換するとも伝えられますが、政府機関が昨年来5兆円ともいわれる含み損を抱え始めたことを考えると、「ゆうちょ銀行」に貯金することはこれまでのように安全・安心とはいえなくなるかもしれません。

 

                           ☆

 

蛇足です。資産防衛術として、信頼できる金融機関の金融商品(複利法)に金融資産を分散投資する効用を長々と書きましたが、超低金利の時代には金融資産の総額を減らさないのが「関の山」です。8年前の記事「お金は大事」のなかで書きましたが、上杉鷹山の『入(い)りを図(はか)り、出(いずる)を制す』(正しくは『入りを量(はか)りて出を制す』)が正しい考えだと今も信じています。つまり、金融資産を増やすことに腐心(ふしん)するよりも、仕事の対価を少しでも多く得ることと、不要不急の支出(固定費と定期的な消費)を抑えることです。

 

通信費・定期購読品・クレジットカードと電子マネー(オートチャージ機能付のSUICA/nanacoカードなど)による無駄遣(むだづか)いを総点検してみると意外に削れるものがあることに気づくと思います。ただし、食費や生活用品を過度に節約することは、「生活の質」(Quality of Life)を大きく低下させますから、本末転倒であり極力控えるべきでしょう。

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