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2016年7月 2日 (土)

「過剰反応社会」を考える

ラジオ好きの私はテレビ放送をあまり見ない方だと思います。それでも、テレビ東京系の「WBS」「モヤモヤさまぁ~ず2」および「カンブリア宮殿」、NHKテレビの「ブラタモリ」と「歴史秘話ヒストリア」は欠かさず観ることにしています。一方、同居者はテレビを見る時間が比較的長いほうでしょう。WOWOWで毎週放送されるアメリカのテレビドラマ(犯罪捜査もの)が好きなようでタイムシフトで欠かさず見ています。それ以外は、同じく衛星放送で多数放送される「海外旅行番組」や「ショップチャンネル」、そして趣味関連のビデオを購入したDVDで熱心に確認し、地デジでは「旅番組」や「ニュースショー」を見ているようです。

 

私が気になるのは最後に挙げた「ニュースショー」です。小学館のデジタル大辞泉によれば、『キャスターを中心に、さまざまなニュースを関係者とのインタビュー、現場中継、記者のリポート、あるいは解説などを多様に織り交(ま)ぜながら、一種のショー形式風に構成したテレビニュースの報道番組』と規定されています。映像とフリップを多用する方法で誰にでも分かりやすいように詳しく解説されます。技術関連など専門知識が必要な事件や事故の場合は、専門家をゲストに招(まね)いて、大学における講義のような難しい説明が行われます。すなわち、事件や事故について事細かな情報が「ニュースショー」を通じて連日提供されているのです。

 

最近に始まったことではありませんが「ニュースショー」(扱う話題が広範囲に及ぶためワイドニュースショーまたはワイドショーとも呼ばれた)の特徴は、過剰とも思われる詳細情報の提供に加えて、コメンテーターと呼ばれる複数の出演者が自分の意見や感想を述べるのです。コメンテーターは知名度の高い芸能人やタレントが中心ですが、時にはジャーナリストや評論家が加わることもあります。説明の合間にキャスターがコメンテーターを適宜(てきぎ)指名するため、どうしても思いつきの発言と感情的なコメントが多くなってしまいます。したがい、事件や事故に対する憤(いきどお)り、あるいは『誰かが何とかするべきだったのではないか』という意味のないコメントが繰り返されることになります。

 

「ニュースショー」が事件や事故を扱うことに意味がないとは言いませんが、上記した無意味なコメントや番組が覗(のぞ)き見趣味に流れてしまうことは「テレビ番組の劣化」、つまり60年近く前に社会評論家の大宅壮一氏が警鐘を鳴らした「一億総白痴化」(テレビばかり見ていると人間の想像力や思考力が低下してしまう現象)が今のテレビ番組でも続いています。ちなみに、「一億総白痴化」という流行語はのちに「一億総中流」、そして最近は「一億総活躍」というイメージ(幻想)政策を生み出しています。

 

また、今年は正月早々から「政治家のスキャンダル」と「芸能人の不倫」のニュースが目白押しであるため、「ニュースショー」が同じ話題を繰り返し取り扱うことになってしまいました。これは一種のプロパガンダ(政治的意図を持つ宣伝)手法となって、スキャンダルの当事者を連日批判・非難する内容の番組が放送されているのです。そして、自ら考える時間を与えられない視聴者は垂(た)れ流されるこの「情報スコール(突風)あるいはシャワー(大雨)」(一方的な情報の垂れ流し)を無防備に連日浴びているのです。これは一種のマインドコントロール手法とも言えます。

 

コメンテーターの意見や感情的なコメントを知らずしらずに受け入れて、しかもそれを自分のものとして自らの頭脳に定着させてしまうのです。その結果として、テレビ番組の視聴者はコメンテーター気取りでネット(SNSやブログ)に受け売りの意見と非難を書き込んで、それがSNS利用者たちに拡散してゆくのです。この現象は「正帰還」(せいきかん)、つまり非安定平衡(へいこう)ですからチェック機能が働きません。もし、人が自分で情報を集めて自ら判断すれば、「負帰還」(ふきかん)が働いて安定平衡となり、疑問や別の考えが生まれるはずです

 

しかし、すべてをテレビ番組に委(ゆだ)ねる状況では、とても自分で判断することはできないでしょう。多くの研究によって、『子供が長時間テレビを見る生活を続けると、脳の発達や言語能力に悪影響を与えるとの研究結果が報告されています。もちろん、子供だけのことではなく、大人についても脳の機能に悪い影響があることは論を待たないでしょう。

 

最近、短兵急(たんぺいきゅう)に結論を求めたり、一見分かりやすいと思われる意見に賛同したりする人が増加しているように感じられます。これは脳を十分機能させていない(活用していない)ことの証左(しょうさ)ではないでしょうか。難しい課題を考えることが面倒に感じられ、誰かに結論を示してもらいたいという願望です。言いかえると、相違点も含めて相手を受け入れるということができない(認知的複雑性の低さ)でもあります。一面的な見方を生み出す「ニュースショー」や「ネット炎上」などのメカニズムは「過剰反応社会」を着実に強化させています。

 

本題からは逸(そ)れますが、「クレーマー」(これは和製英語であり、アメリカ英語では「コンプレインナー」)や「モンスターペアレント」(同上、米語では「ヘリコプター・ペアレンツ」*なども「過剰反応社会」の申し子と言えるでしょう。(*注、頭上を旋回するヘリコプターのように子供に寄り添い、トラブルが起きると直ちに介入する親を指す) そして、「クレーマー」と「モンスターペアレント」は別の精神構造(損得勘定が強い、自己中心的、精神病質/反社会性人格障害であるサイコパス)が背景にあることが多いため、ここではテレビ番組の悪影響に限定して考察することにします。

 

「ニュースショー」は事実に基づいた内容をアナウンサーが読み上げる「ニュース」と異なり、あくまでも「ニュースを題材としたショー」であると認識する必要があります。「ニュースショー」は「ニュース」に基づいて、憶測とインタビューを織り交ぜた内容で視聴者の興味を引くことが主目的であって、問題の本質を討議の中から導き出したり、ましてや問題を解決するために役立ったりすることはまずないでしょう。

 

このため、「ニュースショー」に影響を受けて(コメンテーター意見に感化されて)思い悩んだり、受け売りの意見をSNSへ投稿することは極力控(ひか)えるべきだと考えます。それは時間と感情の浪費であり、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれません。「ニュースショー」が好きな方は、あくまでも「ショー」(娯楽)であると認識し、コメンテーターの意見はさまざまな意見の一つである(そう言う考えをする人もいるのか)と聞き流すことをお勧めします。

 

今回のテーマについての結論は、『「過剰反応社会」(いいかえると相互監視社会)において自らの真情(実はほとんどが受け売り)を発露(はつろ)する目的でSNSなどを利用しないほうが賢明である』 ということです。

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