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2016年12月26日 (月)

国による給付型奨学金制度が始まる

経済的な理由から大学・短大・高専・専門学校への進学を諦めざるを得ない成績が優秀な学生に返済義務のない給付型奨学金制度(予算規模約210億円)を平成30年度から本格導入することと来年度から一部の対象者について先行導入することが閣僚折衝後の12月18日に政府(文部科学省)から発表されました。対象者は家族の収入が少なく住民税が非課税である世帯の子女約2万人(学年当たり)、支給される金額は国公立か私立か、そして自宅か自宅外かの条件の組み合わせで、2万円(国公立&自宅)、3万円(国公立&自宅外または私立&自宅)、4万円(私立&自宅外)の3種類です。(注、来年度は私立&自宅外の対象者に限定、養護施設出身者には入学金として一時金24万円を支給) なお、この制度の他には無利子の奨学金制度の増枠や所得連動返還型制度も今後検討されるとのこと。

 

文部科学省はこの新しい制度はしばらく運用しながら詳細を見直して行くとしています。受給者選考の公平性や金額の少なさによる効用の限界についての懸念があることに配慮したようです。具体的には各高校で選考が行われることによって不公平感が生じる可能性があることと、2-4万円の支給額が国公立の授業料(約53万円、先進国34か国中7番目に高い)と比較して少額(不十分)であると考えられることなどです。ちなみに、ほとんどの先進国では給付型奨学制度がすでに充実(5万円の水準)しているのです。

 

今、この給付型奨学金制度がネットを賑(にぎ)わしているようです。その発端は裕福な家庭に生まれた某女性代議士がこの制度に反対だとSNSで呟(つぶや)いたのです、その理由として、『大学へ行けば何とかなるという考えは甘い。貧しい家庭の子女は中学から働くべきであり、進学したいのであれば自ら稼(かせ)いだお金で賄うべき(まかなう)である』 とも言うのです。まるで、隣国で今話題になっている(渦中にある)人物の姪(めい)による発言、『能力が無いなら両親を恨(うら)め。金も実力だ』 を真似(まね)たかのようです。彼女のこの意見に賛同する方はめったにいないとは思いますが・・。

 

横道にそれました。実は給付型奨学金を提供するのは文部科学省だけではなく、大学・企業(新聞社他)・公益法人や自治体などによる制度が多数あります。しかし、現在、大学生・短大生・高専生など(学年当たり約130万人)の約51%が奨学金を受給して(借りて)おり、その約40%を貸与型奨学金制度だけを持つ日本学生機構(旧日本育英会)が占めています。この10年で奨学生が急増した理由は国公立大学の授業料が高騰したことと、経済格差が拡大したこと、もともと高等教育における自己負担率が他の先進国に比べて高い(韓国に次いで第2位の約65%、先進国の平均は約30%)こと、の3つです。もう一つは、あまり知られていませんが、日本学生支援機構の第一種奨学金(国の予算と返済金が財源)であるのに対して、第二種奨学金(有利子)枠が拡大されたことも要因になったいます。ちなみに、その財源は財政投融資(つまり郵便貯金)や借り入れ金であり、政府は資金(3000億円弱)の運用先として奨学金制度を活用する(リターンを得る)ことに熱心であることによります。

 

加えて、第二種は申請者の家庭の収入を審査するだけ(学力は重視されないの)で、将来の返済能力については審査項目に含まれないからといって、借りられだけ借りると、総額が600万円(医歯系では1000万円以上)にもおよびますから、返済出来ない人が続出する怖れがあります。もし、返済が遅れると延滞金が積み上がって、元本が増えて行きます。たしかに、年収が300万円以下の場合は返還猶予(ゆうよ)制度を利用すれば返済期間を最大10年間まで遅らすことは出来ますが・・。万一、返済しないと金融事故者としてブラックリストに登録されますから、自動車などのローンを組めないことや、キャッシングの審査を受けられなくなる可能性が高くなります。また、半数の受給者が選ぶ個人保証では、保証人が本人に代わって返済する必要が生じます。注、機関保証の場合は奨学金の約3%を保証機関に支払い必要があるため敬遠するケースが多い

 

成績が良い学生向けの給付型奨学金制度(約2万人/年)がスタートすることは朗報(ろうほう)であることは確かですが、先の記事「下流青年」の記事に書いたような生活困窮(こんきゅう)者を大量に生み出さないため、最優先させるべき授業料の減免制度拡充と同時に、奨学金返還ルールの柔軟な運用と救済策(セーフティネット)の整備も喫緊(きっきん)の課題だと考えます。また、旧日本育英会の特別貸与奨学金のように、給付と貸与(無利子)を組み合わせて学資を賄(まかな)うことができる月額8-10万円の水準の柔軟な奨学金制度を復活させることも一案と考えられます。奨学金制度は、コストとしての慈善事業ではなく、国家による重要な投資としての人材育成事業なのです。

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