« 40年ぶりのミャンマー訪問(その9) 壁画で有名なパヤートンズー寺院群と窮屈な仏像があるマヌーハ寺院 | トップページ | 40年ぶりのミャンマー訪問(その11) オールドバガンの「エーヤー・リバー・ビュー・ホテル」 »

2017年4月 4日 (火)

40年ぶりのミャンマー訪問(その10) 漆器工房「トゥン・ハンディクラフツ」と「サンセット・ガーデン・リバーサイド・レストラン」

午前11時30分ころ、ミィンカバー村の南隣となるニューバガンに到着しました。オールドバガンに住んでいた人たちが、オールドバガンが考古学保護区に指定されたことで、強制的に移住させられてできた村で、現在の人口は約1万人とのこと。この村の西端(エーヤワディ川寄り)にある有名なトゥン・ハンディクラフツ(漆器工房とショップ)を見学することになりました。

 

漆器(しっき)とは木や紙などに漆(うるし)を塗り重ねて作る東南アジアの工芸品の総称で、食器・漆箱や印籠を帯に留める根付(ねつ)け、ひいては仏壇や仏像などと、長持ちをする特性から様々な用途に使われる技術でもあります。

 

パガン王朝がモンゴルに攻められて滅びたあと、16世紀に同じバガンでタウングー王朝を起こしたバインナウン王が、タイのマニプルやチェンマイ、中国の雲南省などを征服した際、連れ帰った大勢の職人がミャンマーにおいて漆器を製作したのが始まりとされるようです。(注、異説もあり) 現在でもパガン(現在のバガン)がこの伝統工芸品の主要生産地とのこと。

 

広い空間がある工房には10名ほどの職人が壁際に並ぶ作業台で黙々と漆器(しっき)を製作していました。中央付近では箪笥(たんす)と思われる大きなものの細工をしている職人もいます。
 
2017_03160244

 
ミャンマーの漆器は、木をくり抜いて成型する日本とは異なり、薄く削いだ竹籤(たけひご)を強く捲きつけながら椀の形をした素地(ベース)を作る「捲胎技法」が一般的だそうです。
これは男性の仕事とのこと。
 
2017_03160238
 
 

また、湯呑(ゆのみ)や丸い小物入れのように口が狭いものは笊(ざる)や籠(かご)のように編む「らん胎技法」や馬の尻尾を使って織りあげる「馬毛技法」によって素地となる部分を作るようです。後者はミャンマーの漆は成分の違いにより粘り気がある(日本の漆のように固くならない)ことで弾力がある製品になるそうです。
 
2017_03160239
 
 

ミャンマーではミャンマー北東部に位置するシャン州に生えるビルマウルシから採れる樹液が原料だそうです。淡い黄色をしている樹液は空気に触れるとやがて黒に変化し、何度も漆塗されてサンドペーパーで磨かれると耐水や耐熱に優れる漆面となるとのこと。ひとつ驚いたことは、職人さんが素手で漆に触っていることでした。ガイドさんに気触(かぶ)れないのかと尋(たず)ねると全く問題がないとのこと。日本の漆とは成分が異なるからから大丈夫なのでしょうか。

 

漆を何度も上塗りする工程が右上から左下の順に並べて展示されていました。右側の黒っぽい椀(わん)は漆(うるし)のみを塗って表面をスムーズにする段階で、その後に左側のように絵付けが行われて完成します。右上の小瓶に入っているのは赤・緑・黄の色漆、一番奥の結(ゆ)わえてあるものは馬の尻毛(前述)。
 
2017_03160240
 
 

この女性は絵付けの前工程として、漆で下塗りした上に特殊な樹液を水で溶いたものを塗った表面に、下書きしないで、先のとがった工具を使って傷をつける線描(せんびょう)を行っています。
 
2017_03160242
 
 

その傷の部分にカラフルな色の粉末を固定して樹液を水洗いするプロセスで線画模様を仕上げていくようです。
 
2017_03160241
 
 

この工程のあと、色漆(いろうるし)でカラフルな色付けが赤・緑・黄色の順番で行われます。後で知ったことですが、日本とミャンマーの漆工芸の関わりは16世紀ころに遡(さかのぼ)り、日本の漆工芸の加飾技法の「蒟醤(きんま)」はタイやミャンマーからもたらされた技法でした。漆器の表面に文様を彫り込み、色漆を充填(じゅうてん)し研ぎ出し、地の色と充填(じゅうてん)した色との対比で文様を表すその技法は、まさにこの工房で使われている技法そのものです。

 

工房のやや左手にある大きな壺(つぼ)の素地は、胴回りを何等分化して、漆を塗る工程が表現されていました。ちなみに、左端が完成状態、その右側から反時計回りに何層も漆が重ね塗りされる段階がよく分かります。
 
2017_03160243
 
 

地下室は乾燥室として使われていますが、バガンの気候は乾燥に向いていて、換気などの特別な処置は行っていないそうです。
 
2017_03160245
 
 

隣のショップへ移動しました。さまざまな漆器製品が展示されているため、同行者は小物入れにもなるジュエリーケースや料理・菓子を盛り分けるために放射状の仕切りがある蓋付き容器などを観ながら、かなり迷ったあと、この変わった形の製品を購入することにしました。
 
2017_03160246
 
 

外形から推測しにくいのですが、ミャンマーの伝統的な弁当容器、私の推測では僧侶が托鉢(たくはつ)するときのお鉢です。ヤンゴンのロータリーで同じ形をしたモニュメントを見かけた時、ガイドさんから弁当容器だと聞いていました。中段の丸く膨らんだ部分が弁当容器(中にあるトレイで上下に区切られている)で、その蓋(ふた)の上にはパヤー(パゴダ)を模した装飾があり、下側にはこれまた装飾が施された台が付いています。高さは約35cmもあり、日用品ではなく置物(装飾品)にするのでしょう。後方の棚にもさまざまな形をした漆器製品が展示されています。

 

ちなみに、現在のミャンマ―では金属製で機能的な弁当箱(円筒形で3-5段、汁物も入れられる)に人気があるそうです。インドの弁当箱と似ているのかもしれません。

 

そして貝殻の小片を埋め込んで動物を表現する螺鈿(らでん)のブレスレット(厳密に言えばバングル)も買い求めました。注、螺は貝を、鈿はちりばめることを意味する
 
2017_03160247
 
 

ガイドさんによれば、現在も日本の漆工との交流があり、日本人がデザインした模様がミャンマーの漆器に採用されているそうです。ちなみに、弁当容器の漆器を購入した日本人客は初めてとのこと。

 

ニューバガン村の北西エリアへ向かい、木立の中の駐車場に到着すると、ちょうど正午になりました。昼食はエーヤワディー川に面した「サンセット・ガーデン・リバーサイド・レストラン」でのミャンマー料理です。車止めとして置かれた壺(つぼ)の間を抜けてレストランへ向かいます。折からの小雨がすっかり止みました。
 
2017_03160248
 

エーヤワディー川が見える場所にレストランの客席と思われる開放的な場所(オープン・レストラン)がありますが、
 
2017_03160249
 
 

我われに用意されていた席はその右手にある一段高くなったもう一つの建物内の見晴らしの良いテラスにありました。ここにも多くの壺が並べられています。テラスの外側は散策できるため、景観を損なわない柵の役割を果たしていると思われます。ちなみに、ミャンマーでは壺(つぼ)は穀物を保存する用途に使われるそうです。注、瓶(かめ、旧字では甕)は壺(旧字は壷)に似た形をしていますが、両者を分ける明確な基準はなく、口が狭いものが壺で、広い方が瓶と呼ばれるようです。
 
2017_03160250
 
 

写真を撮るため手すりから乗り出すと、エーヤワディー川の川岸(約1km下流)にある仏塔を見つけました。地図で確認すると、1059年にアノーヤター王によって建立されたローカナンダー・パヤーのようです。川岸にあるため、かつては航行の目印として使われたそうです。この仏塔も金箔を貼り直す作業中のようです。ガイドさんによると、内部に入ることができない上、周囲には何もないとのこと。
 
2017_03160251
 
 

こちらは上流方向
 
2017_03160252
 
 

このレストランのメニューには、マンダレービールがなく、ハイネッケンとタイガービールだけでしたので、シンガポール製あるいはそのライセンス製造品である後者を選びました。
 
2017_03160253
 
 

同行者はアボカドのジュースを注文。その前に置かれたのはミャンマー料理用の調味料でしょう。
 
2017_03160254
 
 

最初に配膳されたのは野菜の揚げ物
 
2017_03160255
 
 

スープビーフン(汁米粉)は野菜などの具が少なくあっさりした味付け
 
2017_03160257
 
 

鶏肉、茄子(なす)の煮込み、ミャンマー風カレー、野菜炒め、野菜サラダなど
 
2017_03160258 
2017_03160259
 
 

デザートはスライスしたスイカで、その甘味はやや低めです。
 
2017_03160260
 
 

爽(さわ)やかな川風に吹かれながら、エーヤワディー川の雄大で静かな流れに心洗われる思いになりました。対岸に山並みが薄っすらと浮かび上がる様子にも見入ってしまいました。(続く)

« 40年ぶりのミャンマー訪問(その9) 壁画で有名なパヤートンズー寺院群と窮屈な仏像があるマヌーハ寺院 | トップページ | 40年ぶりのミャンマー訪問(その11) オールドバガンの「エーヤー・リバー・ビュー・ホテル」 »

グルメ・クッキング」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

旅行・地域」カテゴリの記事

趣味」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/146335/65085072

この記事へのトラックバック一覧です: 40年ぶりのミャンマー訪問(その10) 漆器工房「トゥン・ハンディクラフツ」と「サンセット・ガーデン・リバーサイド・レストラン」:

« 40年ぶりのミャンマー訪問(その9) 壁画で有名なパヤートンズー寺院群と窮屈な仏像があるマヌーハ寺院 | トップページ | 40年ぶりのミャンマー訪問(その11) オールドバガンの「エーヤー・リバー・ビュー・ホテル」 »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ