« 「琶湖畔の近江八幡市を訪ねる(最終回) 「八幡掘のボートクルーズ」(後編) | トップページ | 「同級生との会食」(前編): 渋谷中央街のイタリアン・バル「エス グロッソ」でランチ »

2018年12月17日 (月)

第5世代移動通信システムを考察する

2019年に始まるプレサービスに続いて2020年には商用サービスが予定される第5世代移動通信システム、略称「5G」、は大手移動通信会社によってシステム・トライヤルが現在行われています。これに先立って「5G」についてのグローバル標準化作業が3GPP(注、第三世代携帯電話および次世代の無線通信技術に関する国際的な標準化プロジェクト)や5GPP(注、2015年に欧州で設立された団体)などによって行われ、2017年末にPhase 1のシステムアーキテクチャーが発表されています。ちなみに、現在提供されている第三世代「3G」および第4世代「4G」との最大の違いはネットワークのさらなる大容量化が可能になることです。

 

最近の研究によると、2020年代の情報社会における移動通信のトラフィック量は2010年と比較して千倍以上に増大すると予測されています。そのため、「5G」はこのような増大するトラフィックに応えるネットワークシステムの大容量化(10Gbpsを超える高速化)を低コストかつ低消費電力で実現することが期待されるのです。さらなる低遅延化とIoT(Internet of Things、人に加えて物も繋ぐインターネット)、そして将来のIoE(Internet of Everything、データやシステムなどを含むあらゆるものを繋ぐインターネット)の普及にともなう多数端末との接続への対応も目標になっています。

「5G」を実現するための技術要件は、広帯域の電波を確保できる3.6GHz/4.5GHz/28GHzなどの周波数を利用すること、多元接続方式/多重接続方式、時分割複信(Time Division Duplex)方式、キャリアアグリゲーション(複数の搬送波を同時に用いて一体として行う無線通信)など多くの高度な無線とネットワーク関連技術です。(説明は省略)

 

もう少し分かりやすい説明として、移動通信システムが発展してきた歴史を世代順に振り返ってみましょう。第1世代の移動通信システムは、初めて実用化されたアナログ方式の携帯電話システムで、使い勝手が良い800MHz帯の電波が使用されました。アメリカでは1983年に周波数分割多元接続(FDD-FDMA-FM)を採用したAMPS方式が、日本では1988年に同じFDD-FDMA-FM(注、細部は異なる)を採用した通称NTT方式で、ヨーロッパでは1981年に同じくFDD-FDMA-FMを採用したNMT方式のサービスが開始されました。ちなみに、私がアメリカの子会社へ赴任した1989年には市民バンドのトランシーバーあるいは大きめのテレビリモコンほどのハンディ携帯電話が社給され、翌年には現在のスマホに近い手のひらサイズ(ただし厚みは数倍)の携帯電話に変わりました。

 

第2世代移動通信システム「2G」は1993年に登場したディジタル方式の移動通信システムです。ディジタル化したことで、電子メールやウェブ対応など、通話以外の機能が追加されました。「1G」と同様、周波数分割複信時分割多元接続(FDD-TDMA)と周波数分割複信符号分割多元接続(FDD-CDMA)に大別される多くの方式が採用されました。前者には日本のPDC方式・北米のD-AMPS方式、そして日本と北米を除く各国で広く採用されたGSM方式が、後者にはアメリカのクアルコム社が1995年に発表したcdmaOneがある。PDC方式とD-AMPS方式より音質が良く高速なデータ通信ができたことから「2.5G」とも呼ばれました。

 

第3世代移動通信システム「3G」は国際電気通信連合(ITU)が1999年に標準化したIMT-2000(International Mobile Telecommunication 2000) です。5種類の地上系通信方式があり、NTTドコモとソフトバンクなどが採用したW-CDMA方式、auなどが採用したCDMA2000(注、後に細部が変更された)方式がある。アメリカはW-CDMA方式とCDMA2000方式を、ヨーロッパではW-CDMAに分類されるUMTS方式が採用されました。

 

第4世代移動通信システム「4G」はITUが定めるIMT-Advanced規格に準拠する無線通信システムで、Long Term Evolution(LTE、「3G」を高速化した規格)とWorldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX)の後継規格であるLTE-AdvancedWirelessMAN-Advanced(WiMAX2)が該当します。ちなみに、LTEは2009年に3GPPが策定した「3.5G」で、iMAXは2005年に電気通信に関する国際的な標準化団体であるIEEEによって定められた規格ですが、限りなく「4G」に近いことから「3.9G」として位置づけられています。LTEは2010年にNTTドコモが商用サービスを開始し、2014年にはVoice over LTE(Vo LTE、高速データ通信を利用した音声伝送)による音声通話サービスを追加、2016年には時分割多重LTE(TD-LTE)方式のサービスが開始しました。auとソフトバンクの両社はNTTドコモに追従する形で2012年に商用サービスを開始。機能が高度化されたこの時点で、各社はLTE方式を「4G」と位置づけました。

 

魅力的な「5G」の商用サービスが間近に迫るなか、その可能性の大きさとともに課題についても触れたいと思います。現行のLTE方式「4G」と比較した場合、「5G」の容量は1000倍、通信速度は100倍、同時接続端末数も100倍に設定されているようです。「5G」を使って提供されるサービスはすべてのモノ、つまりスマホやタブレット、ウェアラブル端末、センサー、さらには自動車・鉄道や家電製品などもワイヤレスで繋(つな)がることで、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、農業ICT(情報通信技術)、自動運転支援、スマートシティーやスマートホームなど、より生活に密着したサービスが登場すると考えられます。

 

一方、課題も存在します。その多くは技術領域の課題というよりも、経済領域や政治領域の課題です。「4G」が全国的に普及した日本において「5G」を必要とするサービスが存在(出現)するかどうかという需要の問題、つまり投資規模に見合う市場が存在するか否かです。移動体通信トラフィックは1年で約1.4倍に増加しているようですが、今後もこのペースで増加し続けるといえるのでしょうか。”YouTube”に代表されるビデオ(動画)を上回る情報量を持つ(必要とする)コンテンツやデータ(例、8K映像や立体映像など)の需要が顕在化することが鍵と言えます。また、低遅延は自動運転には不可欠な要件ですが、自動運転が普及するのは10年以上先のことと思われます。

 

喫緊(きっきん)の課題は意外なことでした。その課題の背景にはエスカレートする米中の貿易摩擦があります。巨額な対中貿易赤字とハイテク分野での覇権(はけん)争いから、アメリカは中国からの輸入品に高い関税をかけたことに加えて、中国の大手通信機器メーカーであるハーウェイ(華為技術)とZTE(中興通訊)の両社から製品を購入して使用する企業とアメリカ政府機関およびアメリカ軍は取引をしない旨を発表しました。
 
さらに、中国側に情報が漏洩する懸念があるとして、「5G」のネットワーク整備において両社の製品を採用しないように各国に働きかけているようです。事実、アメリカに次いで、オーストラリアとニュージーランドは両社の製品を採用しないことを最近になって言明しています。12月10日には日本政府も名指しを避けながらも「5G」関連の調達では問題ある製品を排除すると言及し、大手通信事業社3社は政府方針に従うことを明らかにしました。また、参入予定の楽天は中国メーカーを採用する予定はなく、自社に影響はないとコメントしています。

 

つまり、「5G」は政治問題化しつつあると言えるのです。この状況において、NTTドコモとソフトバンクは「5G」技術で先行するハーウェイを含む海外企業と共同して「5G」システムのフィールド試験(実証試験)を行っています。もう一つの懸念は今秋にリリースされたiPhoneの新製品は売れ行きが芳(かんば)しくないアップルは「5G」への対応、具体的には「5G」用通信モデムの調達で出遅れており、対応する製品の投入時期は早くても2020年の後半になるとの観測記事がブルムバーグから出されたことです。

 
ちなみに、現行システムではソフトバンクが規模は小さいとしながら中国メーカー2社製の基地局を採用し、KDDI(au)もファーウェイから末端の装置(スマホ?)を導入していることを認めています。一方、最大手のNTTドコモは中国メーカーの製品は使用していないとしています。

注、現行の「4G」用スマホではファーウェイ製品が安価・ハイスペックであることを武器に世界販売シェアでサムスンに次いで第2位であり、日本市場でもSIMフリー市場で急成長してシェア50%(1位)に達したことに加えて大手3社が公式スマホとして採用したことで、最新の販売台数ではシャープを抜き、アップルに次ぐシェア第2位へと躍進

 

今後は、米中関係およびiPhoneの売れ行きとともに、第5世代移動通信システム「5G」の導入プロセスを見守って行きたいと思います。

« 「琶湖畔の近江八幡市を訪ねる(最終回) 「八幡掘のボートクルーズ」(後編) | トップページ | 「同級生との会食」(前編): 渋谷中央街のイタリアン・バル「エス グロッソ」でランチ »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

携帯・デジカメ」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

趣味」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第5世代移動通信システムを考察する:

« 「琶湖畔の近江八幡市を訪ねる(最終回) 「八幡掘のボートクルーズ」(後編) | トップページ | 「同級生との会食」(前編): 渋谷中央街のイタリアン・バル「エス グロッソ」でランチ »

2019年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ