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2019年5月 2日 (木)

ユヴァル・ノア・ハラリ著「ホモ・デウス 〜テクノロジーとサピエンスの未来」(上巻)を読む

株式会社河出書房新社から2018年9月に出版された「ホモ・デウス ~テクノロジーとサピエンスの未来」(上下巻)の「書評」に続いて、上巻の要旨をまとめてみました。ちなみに、上巻の目次は次の通りです。

   第1章 人類が新たに取り組むべきこと

  生物学的貧困線/見えない大軍団/ジャングルの法則を打破する/死の末日/幸福に対する権利/
  地球という惑星の神々/誰かブレーキを踏んでもらえませんか?/知識のパラドックス/芝生小史/
  第一幕の銃

第1部 ホモ・サピエンスが世を征服する

   第2章 人新世

  ヘビの子供たち/祖先の欲求/生き物はアルゴリズム/農耕の取り決め/五00年の孤独

   第3章 人間の輝き
  チャールズ・ダーウィンを怖がるのは誰か?/証券取引所には意識がない理由/生命の方程式/
  実験室のラットたちの憂鬱な生活/自己意識のあるチンパンジー/賢い馬/革命万歳!/セックス
  とバイオレンスを越えて/意味のウェブ/夢と虚構が支配する世界

第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える

   第4章 物語の語り手
  紙の上に生きる/聖典/システムはうまくいくが・・・・・

   第5章 科学と宗教というおかしな夫婦
  病原菌と廃物/もしブッダに出会ったら/神を偽造する教義/魔女狩り
 

[要旨]

第1章 人類が新たに取り組むべきこと

人類にとって新たに取り組むべきことは何千年も不変であった3つの問題であったことを世界各地域の事例を引用しながら解説した。その1つ目は何千年も前から人類が「生物学的貧困線」ぎりぎりのところで暮らしてきており、何かの災難に見舞われると、栄養不良になり、飢え死にする。つまり「飢餓の問題」である。筆者は古代のエジプト、中世のインド・フランス・フィンランド・スコットランドで発生した飢餓、そして何千年にも渡って飢餓に付きまとわれた中国を事例として説明した。そして、現在は逆に太り過ぎの人は21億人を超え、栄養不良の人は8億5千万人に過ぎない。これにより、飢餓と栄養不良で亡くなった人は約100万人だったのに対して、肥満で亡くなった人は300万人以上いたと筆者は言う。

第2の大敵は疫病と感染症である。最も有名なのが1330年代に東アジアあるいは中央アジアからアジア、ヨーロッパ、北アフリカ全土に広まった「黒死病」で、死者は7500万人〜2億人を数えた。1520年にスペインの艦隊がキューバから天然痘のウィルスをメキシコへ持ち込んだことで、アステカ族の首都で、25万人の人口を擁する都市テノチティトランの人口の3分の一が命を落とした。1778年にはジェームズ・クック船長はハワイにインフルエンザと結核と梅毒の病原体を持ち込んだ。感染症は20世紀に入ってからも、1918年には数か月のうちに当時の地球人口の3分の1に当たる5億人が「スペイン風邪」に感染して発病した。しかし、過去数十年間に感染症の発生数は劇的に減った。特に、世界の小児死亡率は史上最低を記録し、成人するまでに亡くなる子供の割合は5%に満たない。先進国では1%を切っている。エイズ、SARS、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱などは「黒死病」に比べれば少数の犠牲者しか出ていないと筆者は指摘する。

第3の朗報は戦争も無くなりつつあることである。20世紀後半に、国際関係はいわゆる「ジャングルの法則」弱肉強食の法則)は打破され、ほとんどの地域では戦争がかってないほど稀になった。21世紀初頭の今、全世界の死亡率のうち、暴力に起因する割合はおよそ1%にすぎない。それ以上に重要なことは、しだいに多くの人が戦争は断じて考えられないものと見るようになったことである。

飢餓と疫病と戦争はおそらく、この先何十年も犠牲者を出し続けることだろうが、それらはもはや無力な人類の理解と制御の及ばない不可避の悲劇ではなか。すでに、対処可能な課題になった。そして、人類が取り組むべきこととして、今度は人間を神にアップグレードし、ホモ・サピエンスをホモ・デウス注、デウスは神の意)に変えることを目指すだろう。具体的にはまず不死を目指す努力であろう。次いで幸福への鍵永続的な快楽)を見つけることであると著者は予測する。至福と不死が神の特性だからである。人間を神へとアップグレードするときに取りうる道は、生物工学、サイボーグ工学、非有機的な生き物を生み出す工学の3つのいずれかとなるだろうと著者は考え、自らの機能を一つずつ変えていき、ついにはもう人間ではなくなってしまうと著者は考える。

プロローグに続いて「第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する」で著者は人間と他のあらゆる動物との違いをアルゴリズム(一連の秩序だったステップ)および近代科学と産業の台頭の観点から考察さ、人間がどのようにして世界を征服したかを心(意識)と宗教、そして大規模な協力を可能にする能力との関係から考察し、想像の中にだけ存在する力・物・場所についての共同主観的なウエブ(言語を使う新しい現実)とそれに見合う想像力を持つことでホモ・サピエンスが世界を支配する存在になったことを明示した。

「第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える」では、人間がどのようた世界を生み出したか、人間はどのようにして世界を支配するだけではなくなく世界に意味を与えていると確信するようになったか、人間至上主義人類の崇拝)はどのようにして最も重要な宗教となったかについて次々と考察した。

個々の人間の基本的な能力は石器時代からほとんど変わっていないが、およそ7万年前に始まった認知革命物語によってウェブは強力になり、それによって歴史を石器時代からシリコン時代へと推し進めできた。つまり、狩猟採集民が約1万2000年前に農耕を始めたことで物資的基盤が拡大・強化され、それにともない約5000年前にシュメール人メソポタミア南部に居住)が書字と貨幣を発明したことでデータ処理能力が飛躍的に強化された。これにより、シュメールの神殿と同様、ファラオが統治したエジプトでも実務を担う役人が生まれた。つまり、人間は社会をまるごとアルゴリズムの形で組織できるようになった。
 
しかし、書字は強力な想像上の存在の出現を促し、虚構の存在が現実と乖離するようになる。その場合、書字で記述された内容か現実に合わせて修正されると考えるべきであるが、実際は書字の世界が優先され、現実は無視あるいは切り捨てられたことを著者は数多くの事例を挙げて解説した。皮肉なことに虚構のおかげで人間は、大きな代償を払いながら、上手に協力できることでシステムが上手くいっているように見えてしまうと著者な看破する。そして、「科学と宗教というおかしな夫婦」とのタイトルで両者は単純な対立関係にあるのではなく、微妙な補完関係にあることを詳説する。(下巻へ続く)

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