バイデン大統領就任式のテレビ中継を観る
月20日正午(米東部標準時)にバラク・オバマ政権で8年間にわたって副大統領を務めたジョー・バイデン氏(78歳)がアメリカの第46代大統領に就任します。しかし、今回は異様な雰囲気に包まれています。それは1月6日にトランプ大統領に扇動された数百人の暴徒が連邦議会議事堂へ乱入して占拠した騒乱事件が勃発しただけでなく、その後もトランプ前大統領支持者が全国で不穏な動きを見せていることです。
このため、ワシントンD.C.では全米から集められた2万5千人の州兵が最高レベルの厳戒体制で警備を行い、数日前から国会議事堂前広場やホワイトハウス周辺などのエリアは立ち入りが禁止されているそうです。また、新型コロナウイルス禍のため、ホワイトハウスまで約2.5kmの目抜き通りを進む恒例の大規模な就任パレードは行われないようです。注釈:規模を縮小したパレードが行われた
厳重に警備された議事堂の写真(出典:ロイター)
この就任式(正しくは宣誓式)の模様はアメリカの主要テレビ網であるABC・NBC・CNNなどが特別番組として中継しますが、日本ではNHK BS1が ABCの特別番組を同時中継します。ちなみに、日本とは14時間の時差がありますから、日本時間では21日の深夜(午前2時から)に就任式が中継されることになります。なお、トランプ前大統領に近いとされるFOXだけは参加していません。また、トランプ大統領は150年間続いた前例を破って参加しないと伝えられています。
就任式後の夜に放送される就任を祝うテレビ番組では映画俳優のトム・ハンクスが司会役を務めることが事前に発表されました。主な出演者は女優ジェニファー・ロペス、ロックバンドのジョン・ボン・ジョヴィ、女優で歌手のデミ・ロヴァート、俳優でシンガーソングライターのジャスティン・ティンバーレイクなど。なお、国歌斉唱は歌手のレディ・ガガが行います。
4年前(2017年1月)にトランプ大統領が就任した時には多くのハリウッドスターや人気歌手たちが参加しなかった式典とは様変わりです。トランプ大統領によって分断されたアメリカが融和と結束に向けて歩き始める初日になってほしいと筆者は願っています。
2013年のオバマ元大統領の就任式(出典:IT Media News)
番組はワシントンD.C.および国会議事堂の様子を紹介することから始まりました。ウィキペディアによると式次第は次の通りです。『式典は正午より少し前から行われ、先立って聖職者による祈祷や音楽演奏などがあり、次期副大統領の宣誓が行われる。次期副大統領の宣誓後にはファンファーレ4回と、副大統領に捧げられる曲である Hail, Columbia が演奏される。
そして正午、新大統領が合衆国最高裁判所長官の面前で宣誓すると、ファンファーレ4回に引き続いて大統領の到着を示す曲である Hail to the Chief が演奏され、元首に対する礼遇として21発の礼砲が撃たれる。新大統領は引き続き就任演説を行う。』
次期大統領が最高裁判所長官の前で宣誓するシーンと就任演説がハイライトです。60年前の1961年1月20日にケネディ元大統領の宣誓式と就任演説【参考:YouTube動画(1/2)、同(2/2)】をテレビ・ニュースで観た当時中学生であった筆者は初めて接する現実のアメリカ社会を感じました。

それは連日のように観ていたアメリカのホームドラマ(注釈:海外向けのプロパガンダを兼ねていた)とは違うアメリカであり、筆者のアメリカに対する幼い憧れが敬意へと変わったシーンでした。興味がある方は関連のブログ記事を参照してください。また、就任演説の「触(さわ)り」にメロディを付けた「自由の賛歌」(原題:"Let Us Begin Beguine)は今も記憶に深く残っています。
日本時間の午前0時50分(現地時間午前10時50分)にテレビ中継は就任式の会場となる連邦議会議事堂の様子を報じるシーンで始まりました。鼓笛隊が演奏するなか、会場に集まったオバマ氏(民)・クリントン氏(民)・ブッシュ氏(共)の3人(歴代大統領)を始め、著名な政治家などが映し出されました。しかし、出席者たちに高揚感は感じられません。いずれもマスクを着用しており、笑みを浮かべた目だけが就任式を祝福しています。
ジョー・バイデン夫妻が会場に到着した様子が画面に映しだされました。トランプ前大統領が好んだ劇場型の式典とはまったく異なる雰囲気です。しかも、連邦議会議事堂の前に長く伸びるナショナル・モール国立公園には市民の姿はなく、その代わりに20万本の星条旗が静かに旗めいています。
連邦議会議事堂の正面に飾られた巨大な5つの星条旗は、中央が現在の国旗で、その両側に独立時の13植民地(州)を表す13個の星をあしらった旗、両端に飾られるのは1790年代初めに作られた「ベッツィー・ロス・フラッグ」として知られる星条旗です。(注釈:次の写真は2005年のブッシュ元大統領の就任式風景)
バイデン次期大統領が着席したところで民主党の大統領候補の一人であったエイミー・クロブシャー上院議員のスピーチで幕が切って降ろされました。司会役を兼ねているようです。会場内はソーシャルディスタンスが維持されて、それまでのトランプ大統領の集会とはまったく異なる静粛な状況です。
次いで共和党のロイ・ブラント上院議員がスピーチしました。バイデン氏の当選を認めた共和党幹部の一人の登場はアメリカ社会の分断を修復する演出でしょう。レオ・オドナン神父が続きました。それまで着席していた参加者が起立したのはアメリカがキリスト教国であることを示しています。神父のスピーチに続いて、新型コロナウイルス禍で亡くなった40万人以上のアメリカ人に黙祷(もくとう)が捧げられました。
行進曲とともに国旗(星条旗)などを持つ儀仗兵(ぎじょうへい)が現れ、歌手のレディ・ガガさんが登場しました。そして国歌「星条旗(The Star-Spangled Banner)」を朗々と歌い上げました。見事な国家独唱でした。エイミー・クロブシャー上院議員が再び登壇し、カマラ・ハリス副大統領を紹介しました。同氏は短く宣誓します。歌手のジェニファー・ロペスが登場して"This land is your land"を歌いました。いよいよバイデン氏の宣誓式です。バイデン夫妻が登壇しました。最高裁判所長官の前で聖書に手を添えて宣誓しました。これで第46代のバイデン大統領が誕生したのです。
バイデン新大統領の就任演説が始まりました。もちろん、どこかの国の首相のように原稿を読むようなことはありません。視線を上げて国民へ語り掛けます。ケネディ元大統領、レーガン元大統領、オバマ元大統領の様な饒舌(じょうぜつ)さはありませんが、淡々と自身の現状認識(民主主義やコロナ禍など)とそれに対する考え(注釈:具体的な政策にはあえて触れません)を述べました。『私はすべての国民の大統領になる。国の団結により偉大なことを成し遂げることができる。新たに始めよう。』 とケネディ元大統領の演説にあった言葉を使いました。
トランプ前大統領とは対象的な演説です。これは現在アメリカ社会が必要とするメッセージですが、熱狂的なトランプ支持者たちには届くのでしょうか? これからのバイデン政権の政策次第ですが時間が掛かりそうです。
バイデン大統領の就任演説が終わると歌手ガース・ブルックスの"Amazing Grace"の歌唱です。これめキリスト教国アメリカを象徴しています。歌い終えた後はバイデン新大統領、オバマ元大統領、クリントン元大統領に会釈あるいはハグをするのはいかにもアメリカらしい振る舞いです。さらに就任式を祝うゲストたちが続きました。そして、儀仗兵が捧げ持つ星条旗などが退場してバイデン大統領の就任式は終了しました。
最後に、NHKのスタジオから今後のアメリカとバイデン政権についての解説があり、2時間余に延長された番組が滞(とどこお)りなく終了しました。◇
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