旧聞です。1980年代後半に円高を是正する目的で日本銀行が実施した低金利政策により土地や株式などの資産価値が実態から乖離(かいり)して発生したバブル経済が1992年ころに崩壊すると、日本経済は長いデフレ(説明:物価が持続的に下落)時代に突入しました。長期化した主な原因は政府と日本銀行によるバブル対策の不徹底に加えて、バブル崩壊後の経済対策と財政対応の失敗(例:1997年の消費税導入)と同年のアジア通貨危機が主な原因であるとされます。
日本におけるバブル経済の崩壊現象は、規模がさらに巨大な現在の中国経済で再現されつつあるようです。日本の失敗について十分学んでいるはずですが、さすがの中国も我が事となると冷静な状況把握に基づく沈着かつ合理的な対策を実行することは困難と見受けられます。すなわち、建前(たてまえ)論や無謬(むびゅう、説明:誤りが含まれていないこと)主義が先行して対応が遅れ勝ちなようです。
2020年に中国政府が不動産向け銀行融資などの規制強化を行ったことで、2021年ピークに達した不動産(マンション)市場が相続く価格暴落により一気に崩壊(例:負債額が約48兆円の大手恒大集団の経営危機、碧桂園控股の株式売買停止など)しました。新型コロナウイルス禍も過熱した不動産市場に水を差し、地方政府が出した「値下げ禁止令」が止めを刺しました。地方政府が不動産価格の暴落可能性を認めたと受け取られたのです。
続いて、今年に入ると電気自動車(EV)バブルが崩壊(?)し始めました。中国政府の振興政策(補助金など)により500社以上にまで増えたとされるEVメーカーが次々に破綻し始めたのです。(例:奇点汽車、雷丁汽車、HONZON AUTOなどが破産あるいは撤退)その中でBYD(中国語名:比亜迪、英語原名:Build Your Dreams)など大手EVメーカーは現在も売り上げを伸ばしていますが、EV市場が飽和(足踏み)し始めている(説明:昨年の主要31か国におけるEV販売が199万台と前年比で1%減少)ことから、先行きの楽観は許されないようです。
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最近、日本経済はデフレ脱却に向けた動きがやっと現れ始めました。①2024年3月に日本銀行はマイナス金利政策を解除し、約17年ぶりの利上げを行った。②2025年の春闘では前年を上回る賃上げが実現して、③賃金と物価の好循環が回り始めた。加えて、④政府は2024年から新NISA制度を開始して株式と債券への投資を促しています。ちなみに、新NISAとは投資で得た利益に税金がかからない制度です。
銀行の預金金利はデフレ時代にはほぼ0%でしたが、最近は僅(わず)かながらも上昇する気運にあります。政府によるデフレ脱却宣告はまだありませんが、投資に興味を持つ人が増えてきたようです。それを反映して、株式市場は日経平均株価が最近4万円に達しました。ちなみに、2000年から2015年は1万円弱から2万円の範囲で推移しましたが、2015年から一気に上昇し、2020年に2万4千円、2022年に3万円弱と上昇基調に乗ったのです。
その背景には「日本経済の復調」だけではなく、2022年頃に始まった「円安進行」と、巨大な「国際投資マネー」が中国市場に見切りをつけて日本市場に投資先を移したことがあるようです。
あれこれと取り留めのないことを並べましたが、筆者が今回述べたいポイントは『30年来のデフレ状態で傷んだ日本経済が円安に助けられて正常な状態に戻り始めた』 と言うことです。確かに、タワーマンションのミニバブルが発生して投機ブームの機運はありますが・・。火傷をしないためにはバブルには近づかないことが肝要です。
昔から言われているように『美味しい話は存在しない(嘘である)』 のです。つまり、バブルとは「泡」であり、シャボ玉のように美しく膨(ふく)らんだ後、瞬時に消え去るものなのです。
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ここからは私事になります。株式投資に興味があった筆者は定年退職を迎える数年前に役職定年制度を避ける形(説明:給料はほぼ据え置き)で肩書だけのポスト(子会社の役員、注釈:城山三郎氏が描いた企業の役員と幹部社員の世界)に移籍しました。それまでの勤務とは打って変わり自由な時間がたっぷり出来たことから、少額で株式の長期投資を始めました。
筆者は「優良株式の長期投資(説明:優良企業の株式は長期的に上昇するとの素朴な考え)」を旨(むね)として優良株とされる国内株式を徐々に購入することで、概ね順調に投資残高が増えて行きました。しかし、日本経済の変動や社会的な出来事による影響を避けることはできませんでした。
つまり、株価暴落の局面で「狼狽(ろうばい)売り」をして大きな損失を出してしまったのです。例えば、2008年の「リーマンショック」や2011年の「東日本大震災」、2021年の「新型コロナウイル禍の緊急事態宣言」などです。極端な事例は、利回りの良い定期預金だと思って保有していた某電力会社株は、僅か数日のうちにその株価が10分の1まで暴落してしまいました。
筆者の反省ポイントを述べます。①長期投資は株式市場への関心(注意力)が低下しがちであり、②しかも、緊急時における対応を過ち(あるいは遅れ)勝ちです。これらの反省により、『経済変動にともなう短中期的な株価の変動を把握して、大きな急変に対応する準備を怠(おこた)らない』 ことが不可欠であることを、過去の多くの失敗事例を経験した今になって、やっと肝(きも)に銘(めい)じました。
『備え有れば憂(うれ)い無し』 なのです。今は柔軟な対応に心掛けることで、「安定した株式投資状況」へ移行することができたようです。これにより「株式への投資残高」は過去のピーク値を上回る水準まで回復し、さらに堅調に推移しています。
最後に筆者の株式投資における「自分への戒(いまし)め」を述べます。2019年に金融庁の金融審議会が発表した「老後資金2,000万円不足問題」によって「貯蓄から投資へ」という言葉が浸透しているようですが、これはあくまでもモデルケースにおける必要な老後資金額(説明:年金で不足する生活費の試算総額)です。したがい、この数字に拘(こだわ)って、投機的な株式投資などにのめり込み過ぎない方が良いでしょう。◇
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