失われた歯をカバー・再生する手法の一つであるインプラントは費用は高額ですが、自然の歯と同様に扱えることで人気があるようです。つまり、元の歯とほぼ同様に歯磨きなどの手入れができることも大きなメリットです。一方、入れ歯(部分入れ歯・総入れ歯)はインプラントと比べると安価ですが、食後には入れ歯を外して清掃する必要があるなど何かと面倒です。また、その中間的な存在としてブリッジ(固定式)もあります。
筆者は中学生時代に虫歯になった奥歯の治療(注釈:一部被覆冠のクラウン)を受けましたが、その約30年後に痛みが発生したため赴任先であるアメリカの歯科医院で再治療を受けました。複雑な形状の神経を抜くために別の専門医にその処置を依頼するなど大変でしたが、奥歯の上部を削除してクラウン(全部被覆冠)を被せることで治療が終了しました。
アメリカでの医療費は日本の10倍以上と高く、治療内容によっては100倍程度と高額になる場合があります。幸いなことに、筆者が勤める会社が加入していた民間の医療保険を利用すれば、自己負担分は日本の医療費並みに抑えられます。そして、この自己負担分は本社(日本)の保険組合に申請することで、2段階の保障により日本並みに抑えられました。
アメリカで治療を受けてから約10年後(帰国後)、その奥歯の噛み合わせ調整が良くない上に歯軋(はぎし)りの癖があるため、その圧力により歯根が折れてしまいました。つまり、歯根破断です。そのため、その時(今から20年ほど前)にその奥歯を抜歯してインプラントを挿入しました。その後の経過を考えると、その選択は正しかったと思われます。
しかし、理想的と思われたインプラントにも不便なことがあったのです。まず、歯茎(はぐき)の磨き方が他の歯と微妙に異なることです。それは、歯の下部が歯茎(はぐき)に覆(おお)われている他の歯と異なり、インプラントの上部構造(歯冠部分)は歯茎の上に載(の)っているだけであるため、構造的に食べ物が詰まり易いのです。したがい、歯間ブラシやフロストは欠かせません。そのことを除けば負担に感じることはないのですが・・。
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しかし、ある日のこと、朝食を食べている時に口の中に異物があることに気づきました。インプラントの上部構造が突然外(はず)れてしまったのです。4年ほど前にもあったのと同じトラブルです。週末明けにかかりつけの歯科医院へ朝一番に電話して、その日の午前中に歯科医院を訪れました。
診察してくれた歯科医師は上部構造(歯冠部分)とインプラント本体(チタン製)を接続するアバットメントが古い形式であるため、その接続部が取れやすいことを説明してくれました。つまり、セメントで接着されているだけであるため、接続部が緩(ゆる)くなったり、上部構造(歯冠部分)が取れてしまうことがあることです。このことは4年前にも聞いた記憶があります。一方、新しいタイプのアバットメントは上部構造(歯冠部分)ともネジで固定するタイプのため、上部構造が取れることはほとんどありませんと。
そして、新しいアバットメントに取り替えることは可能だが、新旧アバットメントの差額費用(56,100円)が発生するそうです。また、取れては困りますから、今回は交換してもらうことにしました。さっそく、歯科医師は作業に取り掛かってくれましたが、問題があることが判明。インプラント本体にネジで固定されているアバットメントのネジが変形し食い込んでいるためアバットメントを外せないのです。
すでに元の接続方法は断念しています。歯科医師がアドバイスする唯一の解決策として、メーカーから特殊な工具を取り寄せる一週間後に作業を継続することになりました。それまでは歯が一本無い状態ですが・・。この日の治療費は無償でした。
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一週間後に歯科医院を再訪しました。細い治具をアバットメントに打ち込み、その反対側に工具をセットして回転させると、アバットメントが回転し始めて、今回はスムーズに外れました。これで問題は解決して次の工程へ進めるのかと思いましたが・・。歯科医師はもう一つの問題があることを告げました。歯茎(はぐき)の上部が腫(は)れているため、上部構造が正常な高さに固定できないことです。
飲み薬で腫れを改善した上で、もし必要があれば外科的手法で歯茎の高さを調整することになるかもしれないとの診断を告げられました。インプラント体を顎(あご)の骨に埋め込んだ20年前の手術だけでなく、本格的な外科手術(開腹手術)を二度受けた経験などから、麻酔手術に慣れている筆者は歯科医師に任せることにしました。一週間後に予約を入れました。インプラントには仮蓋(かりぶた)を設置。なお、治療費は1,100円です。
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3回目の治療は歯茎の状態を確認した上で、上部構造の型取りがありました。インプラントの仮蓋(かりぶた)を外してから型取り用の棒をインプラントに挿入。あとは光線の出る装置を使って型取りする上部構造の場所および周辺部を測定。タイプの異なる装置も使われました。続いてインプラントのある右下の歯をスキャンし、噛み合わせた状態で右上の歯もスキャンされました。前回(4年前)に受けた治療と同様であることを思い出しました。この日は型取りまででしたから、所用時間は約40分。料金は1,100円でした。
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4回目(3週間余り後)の治療はいよいよ新しい上部構造の調整と固定プロセスです。具体的には、噛み合わせ調整、高さ調整、仕上げの磨き、などに丁度1時間掛かりましたが、まったく痛みは無く終了。健康保険が適用されないので、支払い金額は56,100円でした。これで上部構造が脱落することはもうないでしょう。一安心です。加えて、噛み合わせはこれまで経験したことがないほど自然なのです。◇
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